はじめに
「地縁団体」とは、自治会や町内会のことです。
市町村長の認可を受けた地縁団体は、その団体が所有している集会所や墓地などの不動産の登記をその団体名で行うことができます。
どうしてこのような制度が設けられたのか、認可の要件はどのようなものかなど、「地縁団体」について解説します。
地縁団体と認可地縁団体
「地縁団体」とは、いわゆる自治会や町内会のことです。地域によっては、これらのほか部落会や区、区会など、様々な呼び方がされていますが、市町村の中の町や字の区域を単位とし、その区域に住んでいる者を構成員として、いろいろな活動をしている団体です。
活動の内容としては、回覧板や会報を回したり、集会所などを管理したり、ごみの集積所の掃除などの美化活動をしたりといった管理的な活動以外に、盆踊りやお祭りなど文化レクリエーション活動を行っている団体もあります。
構成員がお金を出し合って集会所を建設したり、以前からその区域の者だけが埋葬される墓地を管理したりしている地域団体もありますが、それらの登記については、代表者個人の名義や住民複数人の共同名義でしか行うことができませんでした。
そうすると、未登記の場合も多いですが、時が経つと、転居や相続が発生し、権利関係がわかりにくくなります。また、登記されていても、代表者の死亡や交代に伴う登記の変更でいろいろなトラブルが発生していました。
そうした問題を解決するため、平成3年に地方自治法が改正され、一定の要件を満たした地縁団体は、市町村に申請して、認可を受ければ、団体の名前で登記ができるようになりました。
その認可を受けた地縁団体を「認可地縁団体」といいます。
認可の要件
認可の要件は次の4つです。
1 地域的な共同活動を行うことを目的とし、実際にその活動を行っていること
地域的な共同活動とは、前の項で例示したような諸活動のことです。条文では、「良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動」と表現されています。
2 区域が住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること
3 区域に住んでいるすべての人が構成員となることができ、実際に相当数の者が構成員になっていること
4 規約を定めていること
規約については、目的、名称、区域、主たる事務所の所在地、構成員の資格、代表者に関する事項や会議、資産に関する事項を定めることとされています。
認可地縁団体の活動上の留意点
地縁団体は、地域的な共同活動のための組織ですから、そうした目的や趣旨に反した活動や取り扱いは禁止されています。
具体的には、
正当な理由がない限り、区域に住んでいる人の加入を拒んではなりません。
構成員に対し、不当な差別的取り扱いをしてはなりません。
特定の政党のために利用してはなりません。
総会、代表者など団体の運営方法
認可地縁団体においては。最低年に1回構成員による通常総会を開くこととされています。このほか、臨時総会に関する規定も定められています。
団体の事務はあらかじめ代表者等に委任した事項を除き、すべて総会の決議によって行うこととされています。
総会における構成員の表決権は規約に別の定めのない限り平等です。
代表者は、1名置かれ、すべての事務において団体を代表しますが、規約の規定に反することはできず、また、総会の決議に従わなければならないとされています。
規約の変更については、規約に別の定めがない限り、総構成員の4分の3以上の同意が必要です。また、市町村長の認可を受けなければなりません。
団体は、認可時のほか毎年1月から3月までの間に財産目録を作成し、常に主たる事務所に備え置くこととされています。
また、構成員名簿も備え置き、構成員の変更があるごとに必要な変更を加えることとされています。
認可地縁団体の解散
認可地縁団体の解散については、規約に別の定めがない限り、総構成員の4分の3以上の賛成がなければ決議できません。
清算について、細かい規定が法律に定められています。
解散後財産がある場合には、規約で指定した者に帰属しますが、指定のないときは、代表者が市町村長の認可を得て、かつ、総会の決議を経て、その団体の目的に類似する目的のために財産処分ができます。
それも行われないときは、財産は市町村に帰属します。
まとめ
認可地縁団体の制度は、主として財産関係のトラブルを避けるために導入されたものですが、現在は、不動産を所有していなくとも認可の対象となっています。
平成30年度に行われた総務省の調査では、全市町村のうち、85%の団体に認可地縁団体があり、その数も5万1千あまりと全地縁団体の約17%を占めるに至っています。
自治会などの財産管理にお困りの方やこの制度に興味をお持ちの方は、まず、市町村の担当部局へご相談ください。
根拠法令等
本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。
地方自治法第260条の2から第260条の40(地縁団体関連規定)
「地縁による団体の認可事務等に関する調査」(平成31年3月、総務省自治行政局住民制度課)総務省トップ > 政策 > 地方行財政 > 地方自治制度 > 地域コミュニティ(2023年12月7日参照)
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