「副知事」「副市町村長」ってなに?-わかるお役所用語解説17

はじめに

知事や市町村長のかげに隠れてあまり目立たない「副知事」や「副市町村長」。
どのようにして選ばれ、どのような役目があるのでしょうか?また。普通の公務員(職員)とのちがいはどういう点でしょうか。
自治体のナンバー2の「副知事」や「副市町村長」について解説します。

副知事や副市町村長の選ばれ方

副知事は知事が、副市町村長は市町村長が選びます。
知事や市町村長(以下、「長」といいます。)がどういう人物を副知事や副市町村長に選ぶかは、まったく長の裁量です。

大きく分けて、
自分のよく知っている(買っている、腹心の)人物を選ぶ場合、
その組織(県や市町村)のしかるべき地位(部長等)にいる(いた)人物を選ぶ場合、
県なら国に、市町村なら国や県に副知事や副市町村長にふさわしい人物を派遣してもらう場合
があります。
長が、副知事や副市町村長に何をメインに求めるかによって、これらの選び方のちがいが出てきます。

ただし、長は、その選任について議会の同意を得なければなりません。この同意については、専決処分ができないこととされています。
同意を得られない場合には、空席となります。

なお、任期は4年ですが、長はいつでもクビにできます。

置かないことも2人以上置くこともできる

副知事や副市町村長を置きたくないと考えれば置かないこともできます。
その場合には、置かない条例を制定すべきですが(地方自治法でそう定められています)、現任の副知事等の任期が切れた後、選任議案を提案しない形でも事実上これと同じこととなります(法の趣旨にはそぐわない形です)。

副知事等の定数は、条例で定めます。2名以上置くこともできます。
2名以上置いた場合には、各副知事や副市町村長の担当分野を部単位などで分けることが多いと思われます。

副知事や副市町村長の職務

副知事や副市町村長の職務としては、

  1. 長を補佐する
  2. 長の命を受けて政策及び企画をつかさどる
  3. 職員の担任する事務を監督する
  4. 長の職務を代理する
  5. 長の権限に属する事務の一部について、委任を受け、その事務を執行する

という5項目が定められています。

長の補佐

条文の上では、このように分けて書いてありますが、このうち1.から3.については、実務上分けて考えることは難しく、また、あまり分ける意味もありません。長を補佐するというなかの一部として、2.の政策及び企画をつかさどったり、3.の職員の担任する事務を監督したりしていると考えることができるでしょう。

以前は2.の業務は規定されていなかったのですが、平成18年の地方自治法改正でトップマネジメントの強化という目的のため、新たに定められました。

長の職務代理

4.については、長に事故があるとき、又は、欠けたときに、長の職務を代理するものです。

「事故があるとき」とは、海外旅行(出張)に行くとか、病気で入院するとか、任期中に長の選挙があり、立候補して選挙運動をするというような例があります。
最近の傾向として、携帯電話で連絡を受け、指示ができるなどという理由で、こうした場合にも長が職務を代理させない場合が多いように見受けられます。
長が意思決定や職員の指揮監督ができると考えれば、「事故があるとき」に当たらないからです。

「欠けたとき」とは、死亡した場合や退職、失職した場合です。

この「職務代理」の範囲は、基本的に長の職務のすべてに及びます。

委任

法の建前上は、自治体の業務のほとんどすべては長が行うことになっています。
当然、一人ではやりきれないので、「補助機関」という県庁や市町村役場の職員がたくさんいて(副知事や副市町村長も補助機関です)、長の名のもとに仕事をしたり、あるいは、長から委任を受けて、自分の名で仕事をしたりしています。

この委任を受けて自分の名で仕事をするというのは、例えば、県税事務所長の名前の納税通知書を受け取ったことがある方がいると思いますが、県税なのに知事名でなくてもいいのは、「委任」しているからです。
委任が行われた場合、受任者(委任を受けた者)は、自己の権限と責任で仕事をすることになります。
もちろん、どの業務を誰(どの出先機関等)に委任しているかは、事務の委任規則などで定めて、公表しています。
このような形で副知事に特定業務を委任するのが、5.になります。

普通の職員とのちがい

副知事や副市町村長は、特別職の地方公務員です。普通の職員は一般職の地方公務員です。このちがいは、地方公務員法が適用となるか否かです。
地方公務員法は、職員の採用や処遇や休日・休暇などを広く定めているものですが、特別職の副知事や副市町村長には、特別の場合を除いてこれらの適用がありません。

また、住民によるリコール(解職請求)の対象となります。
リコールについては、首長等に関して、別のブログ『「リコール」は首長や議員をクビにできる制度』にまとめておりますので、ご参照ください。

副知事や副市町村長は、長を補佐するという役目から、一般の職員とまったく同じ視点や考えだけを持つわけにもいかず、また、長の立場だけをサポートすると長と職員の意思疎通を欠くことになります。

一般の職員が長の命を受けて仕事をやりやすくなるよう、職員の説明をよく聞き、助言するとともに、ときには職員を鼓舞し、ときには潤滑剤となり、長の考えに違法や不適切のおそれのあるときには注意を喚起し、また、ときには人脈等を活かした折衝を行うなどの役割があると考えられます。
これが、副知事や副市町村長の職務の「長の補佐」の中身ともなるでしょう。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第161条(副知事、副市町村長の設置)
同法第162条(副知事等の選任に関する議会の同意)
同法第179条第1項ただし書き(副知事等の選任についての専決処分適用除外)
同法第163条(副知事、副市町村長の任期)
同法第167条(副知事、副市町村長の職務)
同法第152条(長の職務代理)
同法第154条(長の補助機関たる職員の指揮監督)
同法第153条(事務の委任)
同法第86条(副知事、副市町村長等の解職請求)

地方公務員法第3条(一般職と特別職)
同法第4条第2項(地方公務員法の特別職への原則適用除外)

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