「補助執行」ってなに?-わかるお役所用語解説39

はじめに

長(知事や市町村長)は、その事務の一部を行政委員会(委員)と協議して、委員会や委員会の委員長(教育長)、委員やこれらの職員に委任し、又は、補助執行させることができます(地方自治法第182条の2(以下、引用条文はすべて地方自治法からです)。
その逆のパターンも第182条の7に規定されています。

このうち、事務の委任については、『「事務の委任」「専決・代決」-自治体の意思決定の効率化』のブログで説明しています。
本稿では、もう一つの「補助執行」について、説明します。

なお、行政委員会について詳しく知りたい方は、別のブログ『「行政委員会」ってなに?-わかるお役所用語解説7』をご覧ください。

補助執行とは

以下は、原則として、長部局の仕事を行政委員会の職員に補助執行させる場合について説明します。

補助執行させるとは、簡単にいうと、手伝わせるということです。長部局が行うべき仕事を、例えば、教育委員会や監査委員事務局の職員に行わせるということです。
手伝うというと、もっぱら手伝わせる側にだけメリットがあるように思われるかもしれませんが、実際には双方にメリットのある場合や組織全体として見たときにメリットがある場合が多いのです。

補助執行をさせることで長部局は、職員一人を別に配置するより、人件費も浮きますし、手慣れた職員が行うことで、事務の円滑化も図れるということになります。
行政委員会側としても、自治体全体の事務の効率化を図ることは重要ですし、また、自らの業務が効率的に行える場合もあります。こうしたことで、両者「協議」のうえ、「補助執行」させる、それを受けるということが決まるわけです。

補助執行の例

具体的な例を見てみましょう。
予算について、執行する権限は長にあり、行政委員会は執行することができないと定められています(第180条の6第1号)。

予算の執行は、一般に、契約締結などの支出負担行為から契約内容の履行を確認しての支出命令までをいいますが、こうした事務に必要な物品を買うとか補助金を支出するといった行為は行政委員会では行えないということになります。これをいちいち長部局の職員に処理してもらうのは、非常に煩雑で、非合理的です。そこで、この予算執行事務を行政委員会の職員に補助執行させます。
そして、『「事務の委任」「専決・代決」-自治体の意思決定の効率化』で説明した、専決の手法を用いて、執行する予算の種類や額に応じて、行政委員会内部で専決するものや、長までの決裁のものに分けて執行していきます。

このようにすることで、予算執行前の事業の計画や準備行為から予算執行行為を経て、事業の終了まで行政委員会内部で完結できることが多くなります。
この例のように、補助執行させる業務は、行政委員会の本来業務と直接関係のある業務が想定されているところです。

事務の委任とのちがい

補助執行は、長の仕事を手伝うわけですから、最終的な責任や表示する名は長になります。
事務の委任をした場合には、委任を受けた者が、自らの名と責任でその事務を行うことになります。これは両者の大きなちがいです。

もっとも、先に述べた予算の執行事務を長部局が行政委員会へ委任する方法で行っている自治体もあります。あるいは補助執行と二つのやり方を併用している団体もあります。法で権限を有しないと定められている行為について、事務の委任をすることはできないという見解もあると思いますが、実際には、事務処理の効率性を考え、委任を行っている自治体も少なくはないと思われます。

委任する場合にも対象事務を限定したり、金額の制限をかけたりしますので、予算執行事務については、どちらの方法を用いても大きな違いや問題はないように思われます(自治体内部におけるやり方に関わるものですから)。

補助執行も事務の委任も予算執行事務に限られているものではありません。補助執行についていえば、議案の作成や予算の調製といった行政委員会では行うことのできない他の事務を補助執行させたり、教育委員会に対して、私立学校の事務や奨学金に関する事務を行わせるなど、自治体の事情によりそれぞれの自治体で広く補助執行の制度は活用されています。

兼職、事務従事等

こうした補助執行の考え方は、業務の効率化や経費の縮減を図る目的が大きいですが、これと同様の目的をもって、長部局の職員にその繁閑や業務量に応じ、行政委員会の仕事をさせる仕組みがあります(第180条の3)。
それが、「兼職」「(職に)充てる」「事務従事」です。
これにも、長部局と行政委員会の協議が必要です。

「兼職」というのは、仕事をさせる行政委員会側から職員に対して、兼務発令(辞令)をもって、「兼ねて○○に任命する」等と行政委員会側の役職等を示すことです。
「(職に)充てる」というのは、発令行為はないですが、組織に関する定めの中に特定の課等の特定のポストには長部局の職員を充てることを定め、当該職員にその事務を行うよう職務命令をすることです。
「事務従事」とは、単に当該職員に対して、行政委員会の特定の事務を行うよう職務命令をすることです。
手続的にはこの順で簡単なものとなっていますが、どういう場合にこの3つの形態を使うかについては、団体によって異なっていると思われます。

なお、この規定には、委任又は補助執行のように、逆のパターン(委員会職員に長部局の仕事をさせる)がありません。規定がないから逆のパターンはできないという解釈もあると思われますし、支障がないなら行ってもいいのではないかという考えもあると思います。
前者の立場に立った場合でも、業務の内容によって、行政委員会の職員に補助執行をさせるというやり方はあるのではないでしょうか。

留意事項等

補助執行の場合には長部局と行政委員会で協議をしますので、その協議書に事務の内容を定めます。
協議書の代わりに委任と補助執行を一つにした規則を制定している団体もあります。

行政委員会から長部局への事務の委任や補助執行させることについては、公安委員会の権限に属する事務については、行うことができません。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第180条の2(長の事務の委員会等への委任及び補助執行)
同法第180条の7(委員会等の事務の委任、補助執行)
同法第180条の6(委員会及び委員の権限に属しない事項)
同法第180条の3(長の補助職員の他の執行機関の職員の兼職、事務の従事等

地方自治法施行令第133条の2(委員会等の事務の委任、補助執行の公安委員会適用除外)

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