はじめに
本記事は、ホームページや新聞記事上で、また、お役所の中でよく使われる予算関係の用語から「補助金」に関係する「真水」と「事業規模」を解説する記事です。
まず押さえよう
自治体がいろいろな仕事をする財源として、税収のほか国(市町村の場合には都道府県も)から支出されるお金を充てる場合があります。
補助金はそのひとつで、国が補助の目的と補助対象の事業を定め、その対象事業費について、どのくらいの割合で補助するか(補助率または定額)を決めます。
この場合に、予算で計上した対象事業費の総額を「事業規模」といい、それに補助率を掛けた、実際に国が支出するお金のことを「真水」(まみず)といいます。
また、補助金については、同じ内容の補助金でも、国は年度によって、補助対象となる部分を変えることがあります。
「重点化」というのは、文字通り、ある部分を重点的に補助対象とすることですが、往々にして、予算総額が減ったときに、対象部分を減らすこととセットで、このことばが使われます。
補助金とは
国から自治体へはいろいろなお金が交付されます。
例えば、自治体の税金ですが、課税や徴税するのに都合がいいことから、国が自治体に代わって徴収して交付する「地方譲与税」や、国が法律で義務付けている事務の水準の維持と自治体間の財政調整のため交付する「地方交付税」があります。
それ以外に、「国庫支出金」というものがあります。
国庫支出金は、大きく3つに分かれます。
「国庫負担金」、「国庫委託金」そして「国庫補助金」です。
「国庫負担金」は、国が国と自治体両方に利害関係がある事業について相応の負担をするときに支出するもので、その例としては、義務教育職員の給与費や一定の土木施設などの新設改良事業費などが挙げられます。
「国庫委託金」は、本来国の事務であるものを自治体にやってもらうときに支出するもので、その例としては、国会議員の選挙費や国勢調査経費などが挙げられます。
それでは、「国庫補助金」はどういうものでしょうか。
国は各省庁でいろいろな政策を考えます。考えた政策を自ら行うより、自治体や民間企業が行うことが多いですが、新しいことを行うにはお金がかかりますので、それを助成することがあります。
その際に交付するのが、補助金です。
国庫負担金や国庫委託金は、支出するのが国の義務ですが、国庫補助金は義務ではありません。その意味では、補助の内容を国は比較的自由に決められます。
補助金にまつわる用語―真水
各省庁が補助金を交付しようとする場合を考えましょう。
各省庁は、補助の目的を考え、それに適した補助対象事業の内容と、その事業に対してどの程度の補助をするか(補助率又は定額)を考えます。。
例えば、〇〇施設建設費補助金という補助金をつくったとします。
この補助事業の対象となる事業費の総額が20億円の場合、「事業規模」が20億円といいます。そして、補助率が2分の1ですと補助金額は10億円になりますが、この10億円が「真水」の額になります。
「真水」とは、補助対象事業に対し、実際に国から支出する金額です。
それでは、補助率を10分の1としたらどうでしょうか。予算額の10倍の100億円が「事業規模」になります。しかし、国が出すお金の総額は10億円で、さっきと変わりません。
補助率を下げると、事業規模がふくらむこととなり、予算発表資料の「ばえ」の点では、そちらのほうがよいのでしょうが、補助を受ける側としては、できるだけ「真水」を増やしてほしいところです。
あまり補助率が低いとその補助金は利用されなくなります。
補助金にまつわる用語―重点化
よく、「△△補助金については、□□の点に補助の重点化を図った」などと説明されることがあります。
文字面だけを見れば、いままでよりも手厚く補助をするとか、優先するというように理解できます。
おそらく、重点化の対象となる部分については、そのような扱いがされているはずです。
しかし、この表現が出てきたときには、補助対象の範囲はしぼられていることがあります。予算総額が削られていることも多いと思われます。
端的にいうと、「予算が少なくなったので、補助対象の範囲を狭めるが、一部については補助を拡大する」ということです。
ですので、この事業を前年度から予定している自治体は、新年度の扱いについてよく確認する必要があります。さもないと、「はしごをはずれた」と感じてしまいます。
補助となる事業の開始までに、関係者の調整で時間を要する事業についてこうしたことをされると、事業の組み立て(収支計画)が狂って一からやり直しというようなこともあります。
筆者の経験でもそうしたことがありました。
こうした補助の内容をころころ変える補助金や、全体事業のうち補助の対象となる部分を細かく限定している補助金は、いわゆる「使い勝手の悪い補助金」といわれます。
補助金の功罪
みなさんは、補助金をたくさんもらえる方がいいと思いますか?
県(市)税や県(市)債(県や市が借りる借金のこと)に頼るより、補助金を活用した方が賢いと思いますか?
かつては、ほとんどの自治体はできるだけ多くの補助金を獲得し、自前の財源を使わないことがよいと考えていました。
いわゆる「国とのパイプ」「県とのパイプ」を活用してたくさんの補助金をもってくるのが、いい首長やいい幹部職員だということです。
しかし、最近はそうとばかりはいえません。
補助金には必ず要件があります。こういうものを備えなければならないとか、一部屋の面積が何平方メートル以上でなければならないとか、細かいものもたくさんあります。
また、重点化が図られたりすると、昨年度は補助対象だった部分が対象外になったり、場合によっては、まるごと対象から外れたりします。
そうしたことで、補助金があることにより、自治体が必要としているものより、国がこれがよいと考えたものになりがちだということがいわれます。
補助金は、必ず使途が決まっています。「〇〇の施設をつくるための補助」という形ですので、財源の種類としては、「特定財源」といわれます。
これに対して、地方交付税や市県民税、固定資産税といった通常の税金は「一般財源」といい、何に使ってもいい財源です。
こうしたことから、補助金の一般財源化をめざした動きが「三位一体の改革」で行われたこともあります。
いずれにしても、自治体としては、できるだけ「使い勝手のよい」国からの支出金を望むところです。
補助金と公益性
自治体は国等から補助金をもらうこともあれば、民間団体等へ補助金を交付する場合もあります。
この補助金を交付する場合に気をつけなければならない点があります。
それは、補助金を交付できるのは、公益上必要がある場合だということです。
どういう場合に公益性があって、どういう場合にないのかというのは一概に言えませんが、その有無については、裁判で争われることもあるので、かならず内部で検討すべきことです。
根拠法令等
本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。
地方財政法第10条から第11条(国庫負担金や国庫委託金に関する規定)
地方自治法施行規則第15条及び別記((歳入歳出予算の款項の区分及び目の区分)
地方自治法第232条の2(寄附又は補助)
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