第2章 平成の都道府県-平成の30年間の経済の状況2

『平成の都道府県-平成の30年間の経済の状況1』では、日本全体の国民所得(GDP)の変遷に触れた後、県別の県民所得総額について、比較しました。
県民所得は人口との関係性が高いことから、人口規模の大きい団体と小さい団体では、おのずから所得額の大小が生じます。
ある県が他の県と比較して豊かかどうかを測るには、人口規模による影響を避け、県民一人当たりの所得を比較することが一つの有効な方法と考えます。
本稿では、県民一人当たりの所得について、各県を比較します。

2-3 県民一人当たり所得に見る特徴

2-3-1 ダントツの東京都

一人当たりの県民所得が最も多いのも東京都です。
2020(令和2)年度の各県の一人当たり県民所得の順位は、

①東京都 521万4千円
②愛知県 342万8千円
③福井県 318万2千円
④栃木県 313万2千円
⑤富山県 312万円  となっています。

繰り返しになりますが、一人当たり県民所得は、個人の給与だけでなく、企業の利益も合わせた額を人口で割っているので、企業活動の盛んなところは一人当たり県民所得が多くなります。
1位の東京都は2位の愛知県に178万円余りの差をつけてのトップです。3位は福井県で、3位以下は僅差の順位です。

総体としての県民所得について触れていた前稿では登場しなかった県が出てきています。

なお、1990年度の順位は、①東京都、②大阪府、③愛知県、④神奈川県、⑤埼玉県の順で、2020年度とは異なり、人口大規模県が並んでいます。

2020年度の「全国平均」は312万3千円で、5位の富山県でさえこの値を下回っています。

「全国平均」とは、日本全国の県民所得の額の合計を日本の総人口で割ったものです。東京都が他県より極めて高いことが平均の額を押し上げています。

平均のとり方として、各県の一人当たり県民所得を合計して、団体数47で割る方法もあります。2-2-3でも述べましたが、これを「単純平均」と呼びます。
2020年度の一人当たり県民所得の単純平均は283万3千円です。全国平均と29万円の差があります。中央値(24番目の県の値)は長野県の278万8千円で、全国平均よりも単純平均に近い値となっています。
平均を「他の県と同じくらいの目安」と捉えた場合には、単純平均によった方が実態に近いと考えられます。そうした意味で、各県の比較においては、全国平均と比較することに加え、単純平均と比較する視点も加えた方が有効だと考えます。

2-3-2 増えてはいるが最も少ないのは沖縄県

一人当たり県民所得の少ない順では、

①沖縄県 216万7千円
②宮崎県 228万9千円
③鳥取県 231万3千円
④鹿児島県240万8千円
⑤愛媛県 247万1千円 となっています。

30年間の県民所得総額の増加率では東京都に次いで第2位だった沖縄県が、一人当たりでは最も少ない県となっています。県民所得総額は人口が増加すると増える関係にあることは今までの例で明らかですが、その場合に一人当たりでみると、割られる分子とともに割る分母も増えるので、総体の額としての県民所得の伸びに比べると、一人当たりの所得の伸びは小さくなります。沖縄県については後程また触れます。

1990年度では、①沖縄県、②長崎県、③鹿児島県、④宮崎県、⑤高知県の順で、1位から4位までを九州・沖縄地域の県が占めていました。

2-3-3 30年間の増加額でも東京都、それに続く中小規模団体

1990年度と2020年度を比較して、一人当たり県民所得の増加額が最も大きかったのは東京都です。

①東京都 107万5千円増(413万9千円→521万4千円)
②福井県 58万8千円の増
③島根県 55万1千円の増
④徳島県 55万1千円の増
⑤山形県 52万1千円の増 となっています。

東京都の増加額は第2位の福井県の約倍で、文字通り桁違いの増加となっています。この間の人口の増加数でも219万人余りと全国で最も増えているにもかかわらず、一人当たりの所得でも大きく数字を伸ばして1位ということは、改めて、東京都の県民所得の総額の伸び具合が他県とは全く異なるものであったことを確認してしまいます。

一人当たり県民所得の全国平均は、1990年度が292万3千円、2020年度が312万3千円。
単純平均は、1990年度が262万4千円、2020年度が283万3千円です。
両者とも30年間で約20万円の増額です。

第2位以下には、人口規模や県民所得総額の規模が小さく、人口減少団体が登場してきているのが、総額のランクに比べ特徴的です。

2-3-4 増加率も同様の傾向

この30年間における増加率の高い順では、

①東京都 26.0%増
②島根県 24.9%増
③長崎県 24.1%増
④福井県 22.7%増
⑤山形県 22.5%増 となっています。

増加率でみても、トップは東京都で、26.0%増です。2位以下は島根県(増加額3位)、3位長崎県、4位福井県(同2位)、5位山形県(同5位)となっています。
増加額の順に見られた特徴がここでも見られます。

全国平均(総所得を全人口で割った数値)の増減率が、6.8%、単純平均(各県の増減率を47で割った数値)が8.0%と単純平均が上回っています。

2-3-5 大阪府は一人当たりでも最も所得を減らした

一人当たり県民所得の30年間で減少幅の大きい順では、

①大阪府 76万7千円の減(359万6千円→283万円)
②神奈川県25万7千円の減
③奈良県 25万2千円の減
④埼玉県 24万5千円の減
⑤鳥取県 16万円の減  となっています。

このうち、神奈川県と埼玉県については、県民所得の総額は1兆67百億円、1兆15百億円と増加額ランクの上位に位置しますが、この間の人口増加も著しかったことから、一人当たり所得を算出するとこのような結果となりました。人口が増加するということは、こどもの数も増加するが、こどもは所得を得ないので、一人当たり所得を算出するに当たっては、不利になります。同様に人口がかなり増えた千葉県についても、一人当たり所得は9万2千円減っています。

大阪府、奈良県及び鳥取県については、県民所得そのものが減っているので、こうした順位となるのもやむを得ないと思います。
1990年より一人当たり県民所得を減らした団体は、8団体です。

2-3-6 率による団体は額による団体と同じ

次に減少率の高い団体ですが、5位までの団体は減少額による団体と同じです。
ただし、順位は、額による順位では3番目だった奈良県が2番目に上がり、2位だった神奈川県が3位へと入れ替わっています。

団体名と率を記載すると、

①大阪府 マイナス21.3%
②奈良県 マイナス9.2%
③神奈川県マイナス8.0%
④埼玉県 マイナス7.8%
⑤鳥取県 マイナス6.5% です。

2-3-7 拡がる東京都と他団体の格差、縮まる各県格差

2020年における一人当たり県民所得の第1位東京都と最下位沖縄県の差は、304万7千円です。1990年も同じ組み合わせで、その差が224万7千円ですので、80万円格差が拡大しました。
沖縄県も伸び率では、第19位でしたが、いかんせん東京都は増額幅のトップであり、こうした結果になりました。

もう少し格差を細かく見ると、1990年当時は、一人当たり県民所得第2位は大阪府で、東京都との差が、54万3千円でした。大阪府の凋落により、2020年には第2位が愛知県となりましが、その差は、178万6千円に拡大しました。

一方で、1990年の第2位大阪府と沖縄県の差は170万4千円、2020年の第2位愛知県と沖縄県の差は、126万1千円です。第2位から沖縄県までの格差は縮まっています。
単純平均と沖縄県の差も、1990年の7万3千円から2020年には6万7千円へと縮まっています。それには、沖縄県が人口増加率トップにもかかわらず一人当たり県民所得を平均以上に伸ばしていることがあります。

こうしてみると、都道府県間の一人当たり県民所得格差は、トップとラストの格差という単純な問題ではなく、東京都とその他の団体の格差の問題と第2位からラストまでの格差の問題に分けて考えるのが適当だとわかります。前者は悪化しており、後者は格差が縮む傾向にあります。

なお、この東京都と他県の所得格差の問題は、税収格差の問題につながっています。東京都の税収を地方に移す政策は、都が反対する中何回か行われましたが、それでも都は依然として豊富な財源を有しています。

2-3-8 県民所得総額と一人当たり県民所得の関係

県民所得総額の順やその30年間の増加額の順では、人口規模の大きい団体が上位を占めていました(2-2-1、2-2-3参照)。しかるに、一人当たり県民所得の順やその30年間の増加額の順では、東京都と一人当たり所得の愛知県を例外として、人口規模が小さく、人口減少団体が上位を占めています(2-3-1、2-3-3参照)。

また、県民所得総額の全国平均の伸率と単純平均の伸率は9.0%と4.2%とかなり差があり、人口大規模県=県民所得規模の大きい県の影響が強く出ていますが、一人当たり県民所得の伸び率は、全国平均6.8%、単純平均8.0%と単純平均の方が若干高いことが示されています。

ここで、県民所得総額と一人当たり県民所得額の増減の関係を見てみます。第2-4表をご覧ください。

第2-4表  県民所得総額と一人当たり県民所得額の増減団体

県民所得総額の増加団体には、一人当たり県民所得の増加団体が多いですが、減少した団体が3団体あります。この3団体は、いずれも東京圏に属する神奈川県、埼玉県及び千葉県です。神奈川県は一人当たり県民所得の減少額ランキングの第2位、埼玉県は第4位です。
これについては、2-3-5でも述べたように、一人当たり県民所得は、こどもや高齢者のように生産に携わらない人も含めて計算するので、例えば、夫婦と子ども2人で転居してきた場合、その家族の生産額はまるまるカウントされるにしろ、一人当たりに直すと、共働きでも2ではなく、4で割ることになるので、該当県は一人当たりでは計算上不利になるという説明です。

この点をもう少し詳しく見ます。
この30年間で人口が増加し、県民所得総額が増加した団体は11団体です。そのうち、8団体は一人当たり県民所得も増加し、上記の3団体のみ減少しました。これら3団体については、人口増加の程度に県民所得総額の増加額が追いつかなかったということになります。

人口増加数では、神奈川県第2位、埼玉県第3位、千葉県第5位です。また、県民所得総額増加額では、神奈川県第2位、千葉県第3位、埼玉県第6位です。ともに第2位の神奈川県のこの間の増加所得額を増加人口で割ってみると、132万8千円となり、その結果、1990年には321万9千円だった一人当たり所得が2020年に296万千円となりました。

結局、一人当たり県民所得で見れば、東京圏の中でも、東京都の一人勝ちですが、東京圏を一つの団体として県民一人当たり所得の伸び率を計算すると、8.2%の増となり、単純平均8.0%増とさして変わりません。

全体的な傾向としても、人口増加団体で一人当たり県民所得を大幅に増加させることはむずかしく、東京都を除いて、増加額上位10団体はすべて人口減少団体です。
やはり、この30年間は、人口の集積があった地域においても、それを活かし、その伸び以上の成長を果たせなかった低成長期であったということでしょう。

一方で、県民所得総額が減少している団体でも一人当たり県民所得を増加させている団体が9団体ありました。
これは県民所得総額の減少の程度を人口減少の程度が上回ったということです。例えば、青森県は県民所得総額を192億円(0.6%)減らしましたが、人口が24万5千人(16.5%)減少したので、一人当たり県民所得は42万2千円増加し、増加額ランキングの第9位となっています。
こうした団体の影響を単純平均の方が強く受けるので、一人当たり県民所得の増減率については、単純平均の方が全国平均を上回っています。これもこの30年間の低成長の表れと見ることができると考えます。

2-3-9 島根県の増加率第2位の意味するもの

島根県は、一人当たり県民所得の増加額で第3位、増加率で第2位となっています。それは、30年間で人口が減少して、一人当たりの県民所得計算にとって有利になったからでしょうか。
そうした面は確かにあります。島根県の県民所得総額の伸び率は第12位。それが一人当たりだと第2位になるということは、10段下駄をはいたということになるのかもしれません。

しかし、県民所得の総額は人口が増加した方が有利です。人口が増加すれば、働き手も増えるわけで、雇用者報酬の増加につながります。
島根県はこの30年間で人口が12.9%減りました。そのハンディを抱えて、全国で12番目の伸びとなる県民所得額となったので、この点で讃えられてよいのではないでしょうか。

では、そもそも人口の増減と県民所得総額の増減はどの程度関係があるのでしょう。次の表を見てください。これは、その関係を表した表です。

第2-5表  30年間の人口の増減と県民所得の増減の関係

この30年間で県民所得総額の増加した団体は33団体、減少した団体は14団体です。それを人口増加団体12団体、人口減少率10%未満の団体20団体、10%以上の団体15団体の区分ごとに示したものです。

人口が増加した団体は、ほとんどすべて県民所得が増加しています。
人口が減少した団体については、人口が10%以上減少している団体も10%未満の団体も、県民所得の増加、減少している割合にそれほど変わりがないことがわかります。
当たり前の話ということになるかもしれませんが、各県の置かれている状況や産業振興施策によるちがいが出るのでしょう。

今後は、全団体で人口が減少することとなりますが、この30年間の日本の低成長下にあっての島根県が代表する人口減少団体で県民所得を伸ばした団体は、希望の光ともなるかもしれません。
平成の30年間では約3割の団体が県民所得総額を減らしました。今後は、失われた30年を脱して、全県が人口減少団体となった場合にも全県とも県民所得総額を増加させることが重要です。

つづく(経済の状況3を読む)

本章の最初にもどる(経済の状況1を読む)

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