第3章 平成の都道府県-平成の30年間の平均寿命の推移2

『平成の都道府県-平成の30年間の平均寿命の推移1』では、平成30年間の日本全体の平均寿命の推移と都道府県の中で、平均寿命の高い団体や低い団体について見てきました。
本稿では、この間の推移に着目し、平均寿命の伸びの大きかった団体や小さかった団体について見ていきます。

3-3 平均寿命を伸ばした県と伸ばした地域

3-3-1 30年間に最も平均寿命を伸ばしたのは男女とも滋賀県

1990(平成2)年から2020(令和2)年までの30年間における平均寿命の伸びを見ていきます。

男性では、

①滋賀県 6.37歳増
②奈良県 6.25歳増
③福岡県 6.14歳増
④兵庫県 6.13歳増
⑤佐賀県 5.96歳増  の順です。なお、全国平均は5.45歳の伸びです。

女性では、

①滋賀県 6.38歳増
②兵庫県 6.26歳増
③大阪府 6.21歳増
④京都府 6.18歳増
⑤奈良県 6.06歳増  の順です。なお、全国平均は5.53歳の伸びです。

トップを男女とも滋賀県が占めました。滋賀県は、男性の平均寿命が76.36歳から82.73歳へ、女性の平均寿命が81.88歳から88.26歳へと伸びました。

また、男女の5位までの中に関西地域の団体が8団体含まれ、とくに女性は1位から5位まですべて関西です。男性も九州から2団体で、男女伸び率5位まではこの2地域の団体で占められているという地域的に特異な結果となっています。

男女の伸びた年数を比べると、この30年間で若干女性の方が多くなっています。1990年当時で男女間に6.03歳の開きがありましたが、これが2020年には6.11歳となっています。
これは、近年では男性の伸びの方が大きいのですが、1990年から2000年ごろまでは女性の方が大きかった貯金があり、このような結果となっています。

3-3-2 伸びの小さいのは男女とも沖縄県

平均寿命の伸びが小さい県について見ます。

男性では、

①沖縄県 4.06歳増
②群馬県 4.77歳増
③新潟県 4.80歳増
④福島県 4.89歳増
⑤千葉県 4.99歳増  の順です。全国平均は5.45歳増です。

女性では、

①沖縄県 3.41歳増
②青森県 4.84歳増
③福島県 4.86歳増
④山口県 4.97歳増
⑤静岡県 5.01歳増  の順です。全国平均は5.53歳増です。

沖縄県が男女とも最も伸びが小さい県でした。沖縄県は、1990年の平均寿命では、男性が全国で(高い方から)第5位、女性はトップでした。ところが、2020年には、男性が全国平均より1歳以上低い値で、順位も43位(低い方から5番目)となり、女性も全国平均は超えているものの、順位は第16位まで下がっています。沖縄には長寿県のイメージがあります。30年前は実態もその通りでしたが、現在は異なります。

男性の群馬県、新潟県、千葉県は沖縄県同様、90年には平均を上回っていましたが、20年には全国平均を下回っているパターンです。

女性第2位の青森県は、先に触れた通り、90年当時は34位でしたが、全国平均を下回る伸びの結果、20年には最下位となりました。

3-3-3 平成の長寿王国滋賀県の長寿のヒミツをさぐる

男女とも30年間の平均寿命の伸び第1位となった滋賀県の1990(平成2)年から2020(令和2)年までの男女の平均寿命の推移を見ます。第3-1表をご覧ください。

第3-1表 滋賀県の平均寿命の推移

男性は、1990年に76.36歳で全国順位第12位と、この時点で全国平均より平均寿命は高く、すでに長寿県でした。1995年から2005年の10年間の伸びが高く、この間、全国平均が2.09歳の伸びであるところ、2.47歳伸び、順位を長野県に次ぐ第2位まで上げて、2015年に第1位となり、2020年もその地位を保っています。

女性は、1990年当時は81.88歳で、平均を下回っており、順位も第37位と男性とは対照的に平均寿命はむしろ低いレベルでした。
それが調査年ごとに順位を上げ、2000年調査では全国平均を上回り、2015年には順位を8つ上げて第4位に、そして2020年調査ではトップの岡山県と0.03歳差の2位となりました。

3-3-4 滋賀県では何の病気で県民が死ななくなったのか

平均寿命というのは、その算定時点での各種病気等で死亡した人数を男女年齢別に計算して、それを将来の生きる年数に換算したものです。よって、いろいろな病気で死ぬ人が少なくなれば、平均寿命は伸びます。

厚生労働省が公表している統計に「人口動態統計特殊報告」があり、その一項目として、「都道府県別年齢調整死亡率」があります。これは、都道府県ごとに、人口10万人当たりで、どのような病気等でどの程度死亡したかを、都道府県の人口の年齢構成を修正したうえで算出したものです。都道府県の年齢構成には差があるため、そのまま計算すると、高齢者の多い都道府県では高くなり、若年者の多い都道府県では低くなる傾向があります。このような年齢構成の異なる地域間で死亡状況の比較ができるように年齢構成を調整し、そろえた死亡率が年齢調整死亡率です。

この年齢調整死亡率は5年ごとに公表されています。2020(令和2)年の公表に当たっては、人口の年齢構成を修正する基準を従来の1965(昭和40)年の国勢調査人口から2015(平成27)年国勢調査人口に改め、より、各都道府県の実際の人口構成を反映し、調整を行ったものとなっています。

2020(令和2)年の死亡率だけでなく、この基準に基づいてさかのぼって死亡率を再計算しているので、その資料についての1990(平成2)年のものと、2020(令和2)年のものを比較し、滋賀県民の主要な病気で死亡する度合いがどの程度変化したかを見ることとします。 

第3-2表をご覧ください。

第3-2表 滋賀県の年齢調整死亡率の変化(人口10万対)

滋賀県は、男性では、全死因について、1990年は人口10万人当たり2124.7であったものが2020年には1214.7と、910.0ポイント、率にして42.8%減少しています。順位で見ると、90年にはちょうど各県の真ん中(中央値)の24位だったものが2位に上がっています。

それでは、個別の病気ではどうでしょうか。
がん、心疾患、脳血管疾患の3大成人病で、2020年の年齢調整死亡数の約5割を占めており、これらの疾病の死亡者を減らすことが重要です。

滋賀県男性について、これらを見ますと、悪性新生物(がん)は、93.1ポイント改善し、死亡率が(低い方から)24位だったものが10位まで上がりました。心疾患は全国平均以上の死亡率だったものが、全国平均を下回り、順位も38位から12位へと上がりました。脳血管障害については、90年の死亡率ももともと小さかったですが、2020年には全国1位の少なさとなりました。

次に女性についてです。全死因について、1990年は人口10万人当たり1414.8と全国平均の1335.9より高かった死亡率が、2020年には679.2と735.6ポイント、率にして52.0%減少しています。順位で見ると、44位から8位に上がっています。この間の死亡率の減少幅による順位では第1位です。

個別の死亡原因についてはどうでしょうか。
悪性新生物(がん)は、全国平均を上回る改善度合いを示し、順位も36位から16位に上がるとともに、その上がり幅も全国5番目という改善状況でした。心疾患も同様で、順位は35位から17位へ、脳血管障害は90年当時は全国平均より20ポイント余り高かった死亡率を改善し、順位も36位から5位へと著しく順位を上げました。悪性新生物、心疾患及び脳血管障害の3大成人病について、90年当時にはいずれも全国平均を上回る死亡率であったものが、2020年にはすべて下回る値となっています。

この3つの病気について、いずれも全国平均を下回る死亡率である団体は少なく、男性については5県、女性については4県です。滋賀県は男女ともこれらの団体に入っています。特筆すべきことといっていいでしょう。

3-3-5 死亡率が下がったのはなぜか

平均寿命が伸びた=各種病気での死亡率が下がった。とくに滋賀県は平均を上回る下落幅だったので、順位が上がった。それでは、どうして滋賀県は平均以上に死亡率が下がったのでしょうか。

滋賀県は調査を行っています。『データを活用した滋賀県の長寿要因の解析』というものです。県衛生科学センターが事務局を務めた県のデータ活用事業プロジェクト会議が、国立大学法人滋賀大学データサイエンス学部に研究委託をし、県とこの二者でとりまとめ、2018(平成30)年5月に公表しています。

本調査は、栄養や運動などの行動要因と失業や貧困といった環境要因の平均寿命や健康寿命との関係性に言及しています。
同調査の中で示された、平均寿命や健康寿命と関係のある健康行動や社会行動としては、「喫煙率」(男女)、2合以上の飲酒割合(男性)、毎日酒を飲む割合(男性)、ボランティア行動(女性)、スポーツ(男性)、趣味・娯楽(男女)、学習・自己啓発・訓練(男女)が挙げられています(32ページ)。

これらの項目について、本調査は他県との比較は行っていますが、自らの県について経年的な比較は行っていません。筆者が独自に当たってみましたが、かなり前から継続して調査されているものは調べた範囲では少なかったです。
因果関係が見いだせるものもあまりありませんでした。平均寿命が伸びた。その原因は、ある病気で死ぬ人が少なくなったというところまでは判明しますが、なぜ死ぬ人が少なくなったかというのは、相当複数の要因が重なってのことなのでしょう。この調査においてもこれほど順位を上げたことについての直接の記載はありませんが、やはりその究明は難しいのだろうと思います。
医療技術の進歩や新薬の開発が全般的な死亡者の減少に貢献していることは間違いないですが、特定地域におけるその他の要因についての究明は筆者の手にも余るというのが正直なところでした。

3-3-6 関西地域は男女とも突出した伸び

30年間の平均寿命の伸びについての、もうひとつの特長である関西地域の躍進について見てみます。

第3-3表 地域ごとの平均寿命の伸び

(男性)

(女性)

第3-3表をご覧ください。これは地域ごとに1990年と2020年の平均寿命及びその伸びについて、比較したものです。

男性では、関西地域だけが6歳台と、群を抜いた伸びとなっています。1990年と2020年のグループごとの順位を比較すると、トップの中部地域と最下位の北海道・東北地域は変わりませんが、関西地域が第4位から第2位に上がっており、全国平均以下だった数値も全国平均を超えています。
一方で、関東地域は第2位から第4位に後退しています。

女性でも、関西地域が唯一6歳台の伸びとなっています。地域別の順位の変動は男性よりも劇的です。関西地域は、30年間の内に最下位からトップへと躍進しました。1990年にトップだった九州沖縄地域は4位へと後退し、第4位だった北海道・東北地域は最下位となるといったかなり大幅な変動がみられます。

平均寿命は1年1年ではわずかな変化しかみられませんが、やはり30年間を比較してみると、県単位でもそうですが、地域単位で見てもそれが積み重なり、相当変わるものだと思います。

3-3-7 関西地域躍進の理由は?

女性の平均寿命のこの30年間の伸びのベスト5を独占し、男性でも1位、2位、4位を占めた関西地域。地域ごとに見ても、男性では第4位から第2位へ、女性ではなんと最下位からトップへ上り詰め、ほかの地域に比べ群を抜いた上昇率を示した関西地域(第3-3表参照)。
その要因について探ってみましょう。

関西地域は1990年時点では全国平均より平均寿命が低い団体が多かったです。90年に全国平均に達していたのは、これらの団体のうち男性の滋賀県、奈良県と女性の京都府(全国平均に同じ)のみでした。
2020年時点では、大幅な伸びによりかなりの団体が平均は超えましたが、大阪府の男女は未だ全国平均以下です。
中位から下位の団体はいわゆる「伸びしろ」があったわけですが、そのような状況であったにせよ、継続的に下位に沈んでいる団体もある中で、平均以上の伸び率を示してきたのは称賛されるべきと思います。

「都道府県別年齢調整死亡率」の統計により、関西地域の団体の死亡原因の移り変わりから平均寿命の上昇の原因を見てみます。

男性伸び幅第1位の滋賀県についてはすでに述べました。第2位の奈良県は、1990年と2020年の比較で、「全死因」の減少率が第1位であり、2189.3から1242.6へと946.7ポイント減少しました。特に悪性新生物(がん)の死亡率低下が著しいです。男性第4位の兵庫県は、全死因の減少率で第9位。死亡原因別だと、悪性新生物(がん)の全国11位の減少が目立ちます。

女性についてみると、平均寿命の伸び率第2位の兵庫県は、全死因の減少率で第4位、死因別では、心疾患の減少率が高いです。伸び率第3位の大阪府は、全死因の減少率で2位、死因別では、心疾患で第2位、悪性新生物(がん)で第3位の減少率と非常に改善がみられます。伸び率第4位の京都府は、全死因で全国第7位の減少率。京都府は1990年時点でも平均寿命が全国平均と同じだったにも関わらず、2020年時点で死亡者数はかなり減っています。伸び率第5位の奈良県は、全死因の減少率で第3位。死因別では、心疾患で第4位の減少率が目立ちます。

こうしてみていると、関西地域の各団体は、総じて悪性新生物(がん)と心疾患による死亡率を全国平均に比べ、かなり多く減少させている傾向がわかります。これが、地域全体の平均寿命の上昇幅の大きさにつながったものだと思います。

3-3-8 天寿を全うする人が多い県は?

少し脱線しますが、「都道府県別年齢調整死亡率」には死因として老衰の項目があります。老衰によって死亡する率が高いというのは、天寿を全うしたということでしょう。
老衰は死亡原因としては、全国平均で、男性では肺炎の90.1に次ぐ82.7で、主要な死因の5番目であり、女性では、心疾患の109.2に次ぐ85.8で3番目です。女性では脳血管障害や肺炎より高くなっています。

2020年の調査で、老衰による死亡率が最も高いのは、男女とも静岡県で、男性は10万人中66.8人、女性は122.1人となっています。男性と女性の2位は三重県、同じく男女3位は愛知県です。男女とも3位までが同じ県で、しかも東海地方の太平洋岸の県が占めるという結果となりました。

自宅で最期を迎えたい方は、こちらの地域への転居を考えてはいかがでしょうか。
なお、反対に、老衰による死亡率が最も低いのは、男女とも福岡県です。

つづく(平均寿命3を読む)

本章の最初に戻る(平均寿命1を読む)

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