「検討」はその前後でニュアンスのちがいを出す

はじめに

本記事は、お役所でよくつかう言葉のうち「検討」について解説する記事です。

まず押さえよう

「検討」は議会答弁の場などお役所のなかでよくつかわれることばの一つです。

「検討」をつかう場合には、どのようスタンスで「検討」するかやどういう段階で「検討」しているかを説明するとわかりやすくなります。

また、議会答弁では、それにより、検討対象の実現性についての感触を議員や傍聴者に伝えることができます。

「検討」する

これから「検討」についての用例を説明していきます。

「検討」するとは、対象の事項について調べ、考えること。できるとかできないとか、どうやったらよいかとかいうことを考えることです。
もっともフラットな表現で、議会答弁では、議員の指摘のとおり行政として何らかのことはやらなきゃいけないと思うけれど、具体策が何もない又は組織として議論をしているときにつかいます。

「前向きに」検討する、「積極的に」検討する

検討対象事項を行うことがほぼ決定している、あるいは、一段階進むことが決定しているが、まだはっきりそうと公表できないときにつかいます。

決して、歓心を買うためなどのため、リップサービスで「検討」の前の言葉を軽々しく添えてはいけません。受け取った側はかなり期待する表現。

「慎重に」検討する、「可否を含めて」検討する

現段階では実施が困難だが、はっきりだめだと言いづらいときにつかいます。通常は、困難又はだめである理由を付して、この言葉を続けます。

(例)こうしたことを規制すると、個人の財産権を侵す懸念があり、慎重に検討しなければならないと考えております。

検討の「余地がある」、検討に「値する」

制度の適用範囲の拡大や別の方法の提案などに対して、それほど支障がないので、認めてもいいよというときにつかいます。

ただし、これらの表現は、答える側がつかうと、少し「上から目線」のような印象を伴うので、議会の場では注意する必要があります。
「ご指摘も踏まえて検討」などとすると、よりフラットな表現になります。

検討「課題と認識している」

指摘事項に対して、まだ、検討していないが、議員から指摘があったので、今後検討するというときにつかいます。
指摘事項について、ある程度もっともなときにつかいます。

検討を「始めたところ」

前回の質問で、検討すると答えたのに対して、その後の状況を訊かれたときにつかいます。

もちろん、具体的になにを検討しているかという二の矢が飛んでくる可能性が高いので、実際にはなにもやっていなくとも、参考文献の収集程度はあわてて行う必要がありますね。今は、便利なネット検索もあります。

「研究」する、「勉強」する

よく知らない専門的な指摘や先進的な提案があった場合に、検討の前段階として、指摘や提案の内容を確認したいときに使います。

議員は自らの学習の成果を執行部側にぶつける質問をする場合があります。通告された質問について趣旨の確認を行い、内容を理解する時間的余裕があれば、別の回答の仕方もありますが、あまりに高度だったり、現状から飛躍している提案や質問があったときには、このように答える手もあります。

(例)ご提案の〇〇につきましては、今までにない全く新しいものであり、私どもとしてもご提案の内容について勉強してまいりたいと考えております。

「検討」の賞味期限

検討の期間は検討対象事項の難易度によって異なることは当然です。巨額の事業費がかかることや、関係者の利害が対立するようなことについて、「検討」の期間はおのずから長くなります。

「検討する」→「検討を始めたところ」の次は「検討中」であり、そのあとは、検討中の中味を説明していくことになります。

このように何回も訊かれるということは、執行部側(首長とその職員)の認識はともかくとして、「問題」となってしまった事項であり、何らかの対応が必要なことは多いと思われます。

そこで、担当課は手を変え品を変えいろいろ「検討」することとなりますが、議員は回答を不満として、早期に結論を得るように迫るケースも多々あります。

それでも、なかなか進まない場合には、「給料泥棒」などというご指摘をいただくこともありますが、それを甘受するのも仕事の内です。

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