「リコール」は首長や議員をクビにできる制度

はじめに

本記事は、直接請求制度、特に「リコール」といわれる首長や議員などの解職請求制度(クビにできる制度)について、解説する記事です。

まず押さえよう

直接請求制度は、一定の署名を集めることによって、条例をつくったり、首長や議員を辞めさせたりする請求ができる制度です。

そのうち、首長や議員を辞めさせる請求のことを「解職請求」又は「リコール」といいます。

「リコール」を行うためには、原則として有権者の3分の1の署名を集めなければなりませんが、都道府県や大都市のように有権者が多い区域で行う場合には一定の割り落としがあります。

所定の署名を集め、請求がされた場合には、解職の投票が行われ、過半数が解職とした場合には、首長等は失職します。

間接民主制と直接民主制

自分の住んでいる街の大切な事項、例えば、税金をいくらにするか、道路や公園整備をどう行うか、小中学校はどこに建てるかなどということは、市町村長と議会議員を選んで、その人たちにだいたいのことは任せています。これを「間接民主制」といいます。
そうした事項はたくさんあるので、住民全員が集まってひとつひとつ決定していくこと(直接民主制)は非現実的ですから、国政でも地方の政治でも間接民主制をとっています。

ただし、例えば、こういう決まりがぜひとも必要だと考えて、市役所や個々の議員に話をしても、なかなかうまくいかないような場合、あるいは、選挙で選ばれたのだけれども、どうもこの首長は、ずっと職にとどまらせておくには不適格だと考えたような場合、このようなときには、個人で、条例をつくることや、首長をクビにすることを言い出すことができます。

一定のルールに則り,賛同の署名を集めれば、そうした道が開かれます。これが「間接民主制」を補うための「直接民主制」の要素がある「直接請求」の制度です。

署名を集めて、国の法律をつくらせることや、国会議員をクビにする制度はありません。
この制度は、住民自らが地域のことを決める地方自治に特有な制度です。

直接請求の制度

この直接請求については、地方自治法に定められています。

その種類は、
1.条例の制定・改廃の請求
2.事務の監査請求
3.議会の解散請求
4.議員、長、主要な公務員(副知事、副市町村長、選挙管理委員など)の解職請求
です。

リコール制度

このうち、4.の議員、長、主要な公務員の解職請求のことを「リコール」といいます。

この中でも多いのは首長(都道府県知事と市町村長)のリコールですね。最近話題になったのは、愛知県の大村知事に対するリコールですが、市町村長へのリコールもたまに起こります。以下、首長のリコールを例に手続を説明します。

1 署名の収集
手続としては、請求の代表者が選挙管理委員会から請求代表者の証明をもらって、手分けして署名を集めるために、署名収集の委任をします。

代表者や受任者は、有権者の署名を集めるのですが、集める期間は、都道府県と政令指定都市については2か月間、その他の市町村は1か月以内です。

2 集める署名の数
集めなければならない署名の数は、有権者の数の3分の1以上です。

これだと愛知県のような人口のたくさんいる県では、途方もない数の署名を集めなければならないので、有権者が40万人を超えると割り落としがかかっています。
どのくらい割り落としがされるかというと、有権者が40万人超80万人以下の部分について、集める署名数が3分の1から6分の1と半分に、80万人超の部分について8分の1になります。
これで計算すると、有権者が160万人の場合には、30万人の署名を集めることになります。

なお、条例の制定・改廃の請求や事務の監査の請求のために必要な署名の数は、有権者の50分の1以上です。これと比べると、職を奪う直接請求(議員の解職や議会の解散も首長の解職と同じ署名の数)については、ハードルが高く設定されています。

3 署名の審査、解職請求、投票
集めた署名簿を選挙管理委員会に提出して、審査を受けて、所定の有効な署名が集まったと認められた場合には、正式に選挙管理員会に「長の解職請求」します。
選挙管理委員会は、いくつか手続きを踏んだのち、選挙と同じように「解職の投票」を行います。
投票の結果、過半数が解職に賛成した場合には、首長は失職します。

リコールができない場合

このリコールの制度は、いつでもできるわけではありません。首長などの職に就いてから一年間はできないことになっています。選挙で当選したばかりの者をあまりに短期間で辞めさせるのは不適当との判断でしょう。
ですので、無投票で当選した者については、この制限はありません。
また、一度リコールの投票がされてから一年間もできません。

選挙が近い一定の期間については、署名収集ができないことになっています。選挙のための運動と署名収集活動は特定の者が一般の有権者に接触する点では似ていますから、署名収集をできなくすることによって、混乱を避けているのです。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第12条(条例の制定改廃請求権及び事務の監査請求権)
同法第13条(議会の解散請求権及び主要公務員の解職請求権)
同法第5章 直接請求
地方自治法施行令第2章 直接請求

直接請求制度(総務省ホームページ→政策→地方行財政→地方自治制度 2023年3月2日参照)

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