はじめに
本記事は、あまり馴染みのない自治体の議会の仕組みと用語について解説する記事です。第1回目は、議会の招集、定例会や臨時会といった議会の種類と通年議会、議員選挙後初の議長選出方法、議会における表決の仕方について取り上げます。
召集と招集
たまに、○月△日に市議会が召集された、などという文章を目にします。
「召集」されるのは、国会だけです。都道府県や市町村の議会は「招集」されます。
国会の召集は、内閣が決定し、天皇が行います(憲法第7条第2号)。
それでは、自治体の議会は誰が招集するのでしょうか?
自治体の議会は、自治体の長が招集することとされています(地方自治法第101条第1項)。
なお、議長が議会運営委員会の議決を経た場合や定数の4分の1以上の議員がまとまった場合には、付議案件を示し、長に臨時会の招集を請求することができます(同条第2項及び3項)。
この場合に、長が議会を招集しないときは、一定の条件のもとに、議長が議会を招集することができます(同条第5項及び第6項)。
毎日議会を開くの?ー通年議会
自治体の議会は、毎年、決まった時期に開かれる「定例会」と、議決すべき事件などがあるときに臨時に開かれる「臨時会」の2種類があります(地方自治法第102条)。
定例会の回数は、自治体の条例で決めることとされていますが、年に4回の自治体が多いと思われます。
2月又は3月に開会される議会で、翌年度の予算などを審議します。あとは、6月、9月、12月頃に行われるのが一般的です。
こうした制度をとらず、毎年、条例で定める日から翌年のその日の前日までを会期とすることができます。つまり、1年中議会の会期ですので、「通年議会」といいます(同法第102条の2)。
緊急の案件が発生したときにも補正予算などを円滑に審議ができるなどとして、数は少ないですが、導入している自治体があります。
通年議会とはいっても、好きな時に議会を開くのではなく、定期的に会議を開く日(定例日)を決めることになっていますが、OBの筆者としては、事務量的なものが気になるところです。
亀の甲より年の劫―選挙後初めての議長選出
議会の開会や閉会その他議事の運営はすべて議長が行います。
議長が用事や病気で議会に出てくることができないときや、議長が欠けた(死亡や辞職)ときには、副議長が議長の仕事をすることになっています。
それでは、議会議員の選挙後はじめて招集される議会では、どうするのでしょうか?
議長や副議長の任期は、議員の任期によることとされているので、新しい任期の議員による初議会では、議長も副議長もいません。
選挙前の議会で議長を務めた者が行うのでしょうか? でも、その人が必ず立候補し、当選するとは限りませんね。
その場合には、年長の議員が臨時に議長の職務を行うこととされています(地方自治法第107条)。
臨時議長は、速やかに議長選挙(及び副議長選挙)を行い、新議長が決まった後は、その者が以後の議事進行をします。
「年長」議員ですから、当選回数(期数)は関係なく、いちばん歳をとっている議員です。議会では、期数が多い方が、先輩議員とされ、敬われている印象がありますが、この場合は、「亀の甲より年の劫」ということでしょうか。
年長議員に生年月日が同じ人がいたら、くじ引きですかね。
議長はあなたに譲りますー議会の表決方法
議会の議長は、議会内では議事進行や議会の秩序維持を行い、議会の事務局職員の任免権や指揮命令権があり、また、対外的に議会を代表する存在です(地方自治法第104条、第138条)。
どの県にも市議会議長会や町村議会議長会といった組織があり、また、全国都道府県議会議長会という組織もあります。そうした組織の会合に、その自治体議会の代表者として出席します。
自治体内の式典や行事には、首長とともに招かれ、「ご挨拶を頂戴」されることが多くあります。
そうした議長職ですから、議員の中には議長をやりたいという人は多く、法律上の任期は4年ですが、「一身上の都合」により、1年又は2年で議長職を退き、議長就任の順番を早めるという慣例をとっている議会もあります。
たまに、そうした慣例に従わず、辞職しない議長に対しては、「居座り」という評価が下されます。
議長は議員間の選挙で選ばれますから、議会内で最大勢力を有する党派又は会派の議員がなることが通常です。一党又は一会派で過半数に満たない場合には、関係者間で話し合いが行われることもあります。
そうした話し合いの場で、ごく稀に議長の譲り合いが起こることがあります。
謙譲の美徳にあふれた方々の話し合いの場なのでしょうか?
こうしたことは、議会のなかで対立する党派や会派の所属議員数が拮抗しているときに起こります。
議会の議事は、特別な場合を除いては、出席議員の過半数で決めることとされています(地方自治法第116条第1項)。そして、その表決には、議長は加われません(同条第3項)。
ということは、例えば、定数が20の議会で、A会派とB会派の所属議員数が10人ずつだとしましょう。どちらか一方の会派から議長を出すと、出した方の会派は、表決の際は10対9となって、必ず負けます。だから、議長の座はほしくても、手に入れることができないのです。
これが原因で議長選出に手間取り、流会を繰り返し、実質審議に入れない例を目にすることがあります。
なお、会派間の所属議員の差が1人の場合は、多い方の会派から議長を出すと表決は可否同数となります。その場合には、議長の決するところによるので問題はありません(同条第1項)。
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