自治体と「人口」4-平成の30年間の都道府県における少子高齢化の状況等

はじめに

自治体と「人口」3』では、平成の30年間における県別の人口の推移と特徴について述べました。

総人口は増加しましたが、都道府県単位で見ると、平成の最初(1990年国勢調査)より最後(2020年国勢調査)の方が人口が減少している団体が多い(減少35団体,増加12団体)ことをお示ししました。
この人口減少の大きな要因は少子化にあります。また、年代別の人口の多い層が高齢期に入り、平均寿命も延びていることから、増加する高齢者対策が課題です。

本稿では、これら少子高齢化について、平成30年間の状況を見ていきます。
なお、ここでいう「平成」の時代は、西暦では1989年から2019年までですが、『自治体と「人口」3』同様、国勢調査の数値に基づくため、1990(平成2)年調査から2020(令和2)年調査までの期間を平成の期間としていることをお断りしておきます。

日本全体の少子高齢化の状況について

県別の状況を見る前に、日本全体の少子高齢化の状況を見ます。
15歳未満人口(「こども人口」という)、15歳から64歳人口(「生産年齢人口」という)、65歳以上人口(「高齢者人口」という)の3区分による人口数の変化をもとに見ます。

90年国調では、こども人口は2249万人で、全人口の18.2%を占めていました。それが20年国調では、1503万人、全人口の11.9%へと、745万人の減、人口構成比でも6.3ポイント減っています。

一方で、高齢者人口は、90年国調では、1489万人、全体の12.0%だったものが、20年国調では、3603万人、全体の28.6%と、2113万人増え、人口構成比も16.5ポイント増加しています。

この30年間で、こどもの数は3分の2になり、高齢者の数は2.4倍増えました。30年前はこどもの数が高齢者の数より多かったですが、今やこどもの数の2.4倍高齢者がいます。

生産年齢人口は、8590万人から7509万人へと、1082万人減少しています。この間、女性の就業率は向上したのかもしれませんが、昨今人手不足といわれているのは、働き手の数が絶対的に減っているという要因が大きいとわかります。
『自治体と「人口」2』で書いたとおり、この先も少子化の傾向は続きますので、ますます人手不足は激しくなるでしょう。

全国一の少子高齢化団体は秋田県

こども人口と高齢者人口の全県人口に対する比率をもとに、2020年における各都道府県の少子高齢化の状況について見てみます。

こども人口比率の低い団体としては、
①秋田県(9.7%)、②青森県(10.5%)、③北海道(10.7%)、④高知県(10.9%)、⑤徳島県(10.9%) となっています。

高齢者人口比率が高い団体としては、
①秋田県(37.5%)、②高知県(35.5%)、③島根県(34.6%)、④山口県(34.2%)、⑤徳島県(34.2%) となっています。

秋田県は、最も子ども人口比率が低く、かつ、最も高齢者人口比率が高い県なので、最も少子高齢化が進んでいるといえます。

こども人口比率と高齢者人口比率の両方に顔を出しているのは、トップの秋田県と高知県と徳島県です。
もっとも、こども人口比率の全国平均は11.9%であり、秋田県は2ポイントの差がありますが、第2位の青森県以下はさほど全国平均との差がありません。

一方で、高齢者人口比率についての全国平均は28.6%であり、トップの秋田県が8.9ポイントの差があるのをはじめ、5位の徳島県でも5.6ポイントの差があります。
少子化の状況については、都道府県間にさほど差がないが、高齢化の状況にはかなりの差があるといえると思います。

少子高齢化の度合いが比較的低い団体―トップは沖縄県

逆に、こども人口比率が高く、高齢者人口比率の低い団体を見てみましょう。

子ども人口比率の高い順に、
①沖縄県(16.6%)、②滋賀県(13.6%)、③佐賀県(13.5%)、④熊本県(13.2%)、⑤宮崎県(13.1%) となっています。

高齢者人口比率は低い順に、
①沖縄県(22.6%)、②東京都(22.7%)、③愛知県(25.3%)、④神奈川県(25.6%)、⑤滋賀県(26.3%) となっています。

両方ともトップは沖縄県で、同県が最も少子高齢化の度合いが低いと言えます。
沖縄県のこども人口比率16.6%ですが、第2位の滋賀県が13%台なので、図抜けて高いですね。その理由は、『自治体と「人口」3』で述べたとおり、30年以上にわたって高い合計特殊出生率を保っているからです。

こども人口比率の高い団体に九州・沖縄地域から4県入っていますが、これらの団体を含めて、九州地区の各県は、長期にわたって、合計特殊出生率が全国平均より高いです。
また、高齢者人口比率の低い団体は、愛知県を除いて、人口増加率の高い順と一致しており、愛知県も第7位です。転入者の多くは、生産年齢人口の者とその子どもが多いと考えられ、こうした結果になったものと思われます。

30年間で最も少子高齢化が進んだ団体は青森県と秋田県

次に30年間の変化の大きさについて見てみましょう。1990年と2020年を比較して、こども人口比率がどれだけ減り、高齢者人口比率がどれだけ増えたかという点に注目します。

こども人口比率の減少幅が大きい順に、
①青森県(9.0ポイント減)、②福島県(8.8ポイント減)、③秋田県(8.2ポイント減)、④岩手県(8.1ポイント減)、⑤茨城県(8,0ポイント減) となっています。

高齢者人口比率の増加幅は大きい順に、
①秋田県(21.9ポイント増)、②青森県(20.8ポイント増)、③北海道(20.2ポイント増)、④奈良県(20.1ポイント増)、⑤岩手県(19.1ポイント増) となっています。

青森県は、こども人口比率が、19.5%から10.5%へと9.0ポイント減っており、全国トップの減少幅です。高齢者人口比率は、12.9%から33.7%へと20.8ポイント増加しており、秋田県に次いで第2位です。

一方、秋田県は、こども人口比率が17.9%から9.7%へと8.2ポイント減っており、青森県、福島県に次いで第3位。高齢者人口比率は、15.6%から37.5%へと、21.9ポイント増加しており、全国トップです。
こうしたことから、青森県と秋田県がこの30年間に最も少子高齢化の進んだ県といえるでしょう。
2つのランクには、東北地方の県が目立ちます。

少子高齢化の進みの比較的遅い団体―東京都

では、反対にこの30年間で少子高齢化の進みが比較的遅い団体はどこでしょうか。

こども人口比率の減少幅は、少ない順に
①東京都(3.4ポイント減)、②神奈川県(5.5ポイント減)、③愛知県(5.5ポイント減)、④大阪府(5.5ポイント減)、⑤広島県(5.8ポイント減) となっています。

高齢者人口比率の増加幅は、少ない順に、
①東京都(12.2ポイント増)、②沖縄県(12.7ポイント増)、③滋賀県(14.3ポイント増)、④福岡県(15.5ポイント増)、⑤愛知県(15.5ポイント増) となっています。

両方とも東京都がトップとなっています。東京都は90年の時点で、こども人口比率はすでに群を抜く低さでしたので、変化率は小さいものと思われます。また、高齢者人口比率については、前に述べた通り、人口の増加がその比率の増加を緩和しているものと考えられます。

そのほかに両部門に顔を出しているのは、愛知県ですが、愛知県は人口規模が大きい県の中では、合計特殊出生率が継続的に比較的高く、人口の増加も相まってこうした結果になっていると推察します。

日本全体の世帯の状況について

人口と密接に関係する世帯数について説明します。

世帯とは、「住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、若しくは独立して生計を営む単身者をいう」とされており、大きく、一般世帯と施設等の世帯に分けられます。
一般世帯は、数多く存在するいわゆる通常の世帯であり、施設等の世帯とは、寮、病院・療養所、社会福祉施設、自衛隊営舎などの世帯をいいます。

日本の総世帯数は、90年国調では4104万世帯だったものが、20年国調では5583万世帯へと、1479万世帯増加し、そのうち一般世帯については、4037万世帯から5570万世帯へと1503万世帯増加しました。世帯数については、この10年間の人口減少期間を迎えても増加を続けています。

人口を一般世帯数で割った一世帯当たり人口は、2.99人から2.21人へと0.78人減少しました。かつて典型的な世帯として想定された夫婦とこども2人の4人世帯は、1990年においても決して多数派ではありませんでしたが、今や、最も多いのは単独世帯です。

各県の世帯の状況―一世帯当たり人員の最多は山形県、最少は東京都

次に各県の世帯の状況について見ます。
世帯については、一世帯当たり人員の変化と単独世帯の状況について注目します。

まず、2020年における各県の一世帯当たり人員の状況についてですが、

一世帯当たり人員の多い順に、
①山形県(2.61人)、②福井県(2.57人)、③佐賀県(2.51人)、④富山県(2.50人)、⑤岐阜県(2.49人) となっています。

北陸の2県が入っているのが目につきます。

反対に、一世帯当たり人員が少ない順では、
①東京都(1.92人)、②北海道(2.04人)、③大阪府(2.10人)、④鹿児島県(2.11人)、⑤高知県(2.11人)です。

全国平均が2.21人なので、東京都は群を抜いて低いですが、他の県は平均とさほど差はありません。

一世帯当たり人員の減少幅―トップは山形県

この30年間での一世帯当たり人員の減少の幅については、大きい順に、
①山形県(1.04人減)、②富山県(1.02人減)、③福島県(1.02人減)、④滋賀県(1.01人減)、⑤茨城県(1.01人減) となっています。

減少数トップの山形県ですが、同県は1990年当時も全国一の一世帯当たり人員の県であり、2020年においてもその地位を守っています。

反対に、一世帯当たり人員の減少幅が小さかった団体としては、
①東京都(0.56人減)、②鹿児島県(0.56人減)、③神奈川県(0.64人減)、④高知県(0.66人減)、⑤広島県(0.68人減) となっています。

東京都は30年前も最も一世帯当たり人員が少なかったので、このような結果となりました。

高齢単独世帯の割合が最も高いのは高知県

次に単独世帯の状況です。単独世帯については、例えば、大学生などのように大学進学のために住居を移して一人暮らしをする例もあれば、夫婦二人で住んでいたが、高齢になり、そのどちらかが死亡して、結果的に一人暮らしになる例もあります。
行政として問題とすべきは後者ですので、ここでは65歳以上の単独世帯(以下、「高齢単独世帯」という)について見ます。

高齢単独世帯の一般世帯全体に対する割合が高いのは、
①高知県(17.8%)、②鹿児島県(16.4%)、③和歌山県(16.4%)、④山口県(15.8%)、⑤長崎県(15.1%)の順です。

少子高齢化の関係で見た高齢者人口の割合が高い団体と重なっているのは高知県と山口県だけであり、高齢者が多いから単独世帯も多いということではないようです。

高齢単独世帯の増加率が高い団体は大都市圏に多い

次に、30年間における高齢単独世帯の増加率について見ます。

1990年と2020年を比較してみると、その増え方の多い順に、
①埼玉県(8.3倍)、②千葉県(7.1倍)、③神奈川県(6.2倍)、④茨城県(5.7倍)、⑤愛知県(5.5倍)となっています。

東京都に隣接する埼玉県、千葉県、神奈川県については、1965(昭和40)年国調の人口が3県合計で約1千万人だったものが、1990(平成2)年国調では約2千万人になるといった急激な人口増加を経験しています。自然増に加え、他県からのたくさんの社会増がありました。こうした人々は、1990年には働き盛りでしたが、2020年までの間に高齢者の区分に入ったのが大きな要因と考えられます。
全国平均も4.1倍とかなりの伸びを見せていますが、それをはるかに超える埼玉県、千葉県や神奈川県については、高齢単独世帯問題は行政上の重要な課題となるでしょう。

反対に、増え方が小さかった団体は、
①鹿児島県(1.9倍)、高知県(2.4倍)、島根県(2.6倍)、長崎県(2.6倍)、山口県(2.8倍) と人口の中規模から小規模な団体が多いです。

まとめ

各都道府県における少子高齢化の状況についてまとめますと、以下の通りです。

2020年現在で、最も少子高齢化が進んでいる団体は、秋田県である。秋田県はこども人口比率が最も低く、高齢者人口比率が最も高い。

また、30年間に最も少子高齢化が進んだのは、青森県と秋田県であり、両県はこども人口比率の減少幅の大きさや高齢者人口比率の増加幅の大きさにおいてトップ又はそれに近い順位にある。

一方、比較的少子高齢化の進みが遅い団体としては、出生率の高い沖縄県や人口流入の激しい東京都等が挙げられる。

高齢単独世帯の比率が高いのは、高知県や鹿児島県のような中小規模県に多いが、30年間の増加幅が高い団体は、埼玉県、千葉県など首都圏の団体に多い。

参考文献

人口(3区分別人口を含む)や世帯数の値については、国勢調査(総務省統計局)によった。
自然増減の値や合計特殊出生率の値については、各年の人口動態調査(厚生労働省)によった。

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