初歩の手前の条文の見方1―「項」「号」ってなに?

はじめに

本記事は、お役所の仕事の中で不可欠な法律や条例の読み方について、まったく法律を読んだ経験のない方にもわかるように解説する記事です。

地方自治法を見てみる

この記事の読者は、どちらかというと、現役の自治体の職員の方より、これからなろうとしている方を対象にしています(もちろん、現役の方も大歓迎ですし、単に覗きに来た方も熱烈歓迎です)。

筆者が公務員試験を受験したのは40年余り前ですから、今、どの程度法律関係の問題が試験に出るのかよくわかりませんが、自治体職員になったら、地方自治法の知識は(控えめに言っても)持っていた方がいいです。

そこで、この「初歩の手前」では、実際に地方自治法を見ながら、お話を進めていきます。

お手元にある法令集でもいいですし、ネットで「法令検索」で探すと、「e-GOV法令検索」が示されると思います。
それをクリックして、出たページの一番上の枠「検索用語を入力してください」のところへ、地方自治法と入れ、「検索」をクリックすると、最初に「地方自治法(昭和二十二年法律六十七号)」と出てきます。
これをクリックすると、左側の狭い所と右側の広い所に分かれたページが出てきます。この左側はいわゆる目次、右側に条文が書かれています。

なお、この「e-GOV法令検索」は法律の条文を調べるのには大変便利で、筆者も愛用しています。政府が作成しているので、信頼も置けます。

(昭和二十二年法律第六十七号)

「地方自治法」の後ろのカッコ内の「昭和二十二年法律第六十七号」というのは、法律の整理番号(「法律番号」といいます)です。昭和22年にできて、公布された67番目の法律です。

今、「公布」という用語が出てきましたが、法律は国会で可決された後、国民に知らせなければなりません。その知らせることを「公布」といい、「官報」という国の発行する新聞のようなものに法律の全文が載ります。

知らせることとその法律が効力を発揮することは別です。
効力を発揮することを「施行」(正式には「しこう」と読みますが、「せこう」と読む人もいます。)といいます。
法律の最後の方に「附則」というのがあり、そこに施行日が定められます。(附則については、後で解説します)

漢数字をつかうの?

法律番号の次に「第一編 総則」とありますが、ここまですべて漢数字を使っています。法令集をご覧の方は条文が縦書きですので、違和感はあまりないと思いますが、「e-GOV法令検索」は横書きになっていますから、ちょっと変な感じがするかもしれません。日本の法律は縦書きですので、基本的には、数字は漢数字をつかいます。

自治体によっては、自治体が定める条例や規則を横書きにしているところがあります。見やすさなどの点からそのようにするのでしょうが、もともとは自治体の条例なども縦書きでしたので、そうした場合には、漢数字を算用数字(アラビア数字)に改めたり、「左記」を「下記」に改めたりする必要があります。
どのようにするかは、「横書きにする条例」とネットで検索してください。例がいくつか出てきます。

なお、これから先、この解説では、引用を効果的にするなど漢数字を用いた方が適当だと思われる場合を除いて、算用数字で表記していきます。

第一編

地方自治法は第1編から第4編までに分かれています。「編」は法律のまとまりの単位の一つで、そのほかに「章」とか「節」とかがあります。この記載の順にまとまりの単位は小さくなります。

「第一条」と見出し

「e-GOV」で法律の条文を見ている方は「第一編」の次にすぐ「第一条」がきていると思います。法令集で見ている方はその間に「(この法律の目的)」などという文言が入っているのでないでしょうか。筆者は学陽書房発行の「地方自治小六法」をつかっていますが、そのようになっています。

「e-GOV」を見ている方は、「統計法」を検索していただけますか。統計法は平成19年に全部改正になった法律ですが、第1章と第1条の間に「(目的)」というのが入っています。

このかっこ書きを「見出し」といいます。統計法の見出しは、法律の一部をなすものです。この見出しも含んで国会で可決されています。一方、法令集で書かれた地方自治法の見出しは、法令集の編纂者がつけた見出しです。
見出しがつくとわかりやすいですね。
古い法律には見出しが付けられないものもありました。この点にご注意を。

第一条の二(だいいちじょうのに)

第1条の次は、ふつうは第2条ですね。ところが、地方自治法では第1条の2、第1条の3と続き、その次が第2条になっています。
第1条の2とはなんでしょうか? 

これは、法律ができた当時にはなかった条文です。できたときには第1条のつぎに第2条がきていたのですが、その間にこれと次の条文を追加する必要ができたのです。

そうした法律の「改正」を行う方法としては、今までの第2条を第4条にして、第2条と第3条を加えるという方法も考えられます。

ですが、そうすると、全部の条文がずれることになります。地方自治法の最後の条文は第299条ですが、これが改正のたびに数字が変わっていってしまうことになります。
法律の条文はほかの法律で引用されることがたくさんあります。条文の数字が変わったら、引用している法律でもなおす必要が出てきます。それは大変な手間なので、もとの第2条はそのままにして、第1条の後ろに番号を振っていくのです。

この番号を「枝番号」といいます。

それじゃあ、枝番号の付いた条文の間にさらに条文を加える必要が出てきたらどうするのでしょう。

地方自治法の条文のずっと後ろの方、第252条の19を見てください。この条文以下が、政令指定都市に関する定めをした部分です。同条のつぎに第252条の20があり、その次の条文は「第252条の20の2」となっています。

枝番号にさらに枝番号を振るのです。

なお、枝番号つき条文は、その前の枝番号がない条文と「優劣」はありません。内容の関係がある場合もありますが、全くない場合もあります。完全に同列と考えてください。

項(こう)

もとの第1条の2に戻ってください。「e-GOV」でも法令集でも②がついた条文があります。この条文を指すときは、第1条の2「第2項」といいます。そして、その前の「第1条の2」からつながっている条文を第1条の2「第1項」といいます。

条の内容を区分けして書く必要がある場合には、「項」をつかって分けます。

なお、その前の第1条は、ひとつの項しかありません。この場合には、第1条第1項とはいいません。単に、第1条といいます。

号(ごう)

少し前に進みましょう。

第4条の2第2項を見てください。この条文は自治体の休日についての規定で、第1項で自治体の休日は条例で定めることを定め、第2項で具体的にどのような日を休日として定めるかを列挙しています。
こうした列挙する必要があるときには、漢数字の「一」「二」「三」・・・を用いて表記します。これを「」といいます。日曜日及び土曜日は、自治体の休日として、「第4条の2第2項第1号」に定められているといいます。

項を引用する場合―前項(ぜんこう)と第〇項

第90条を見てください。この条文は都道府県議会の議員の定数を定めた条文です。
第2項です。「前項」の規定による・・・とあります。すぐ前の項を引用するときには、「前項」といいます。
第5項を見てください。「前項」の規定による・・・とあります。この場合も「第4項」とは表記せず、「前項」と表記しています。(なお、すぐ後の項を引用するときには「次項」(じこう)といいます)
第7項を見てください。「第4項」の協議については・・・とあります。隣り合う項以外の項を引用する場合には、その項を表記します。

条の場合はどうなの?

条の場合も同じです。ひとつ前の条を引用するときは、「前条」(ぜんじょう)と、ひとつ後の条を引用するときは「次条」(じじょう)といい、それ以外はその条を表記します。

第102条の2第1項を見てください。「普通地方公共団体の議会は「前条」の規定にかかわらず・・・」とあります。この規定は、前条で議会を定例会と臨時会の2種類と定めている原則によらずに、通年の会期制をとることができる旨を定めたものです。

このように別の条文で例外が定められている場合もあるので、法令は一部の条文のみではなく、全体を理解することが大切です。

根拠法令等

「法律番号」については、参議院法制局のホームページを参考にしました。(ホームページ→法律の〈窓〉→法律番号、2023年2月13日参照)

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