「予定価格」「札入れ」「不落」―契約のことば1

はじめに

本記事は、自治体が仕事を行う上で欠かせない、契約事務においてつかわれることばをいくつか紹介します。今回は、「予定価格」「札入れ」「不落」といった入札に関係することばの解説です。
なお、入札制度の解説については、別のブログ「自治体の契約は一般競争入札が原則」も併せてご覧ください。

入札参加資格者名簿

自治体では、自治体と取引を希望する事業者について、入札に参加する資格を定め、事業者から商業登記簿や決算書など必要な書類とともに申請をさせ、審査のうえ、資格を有すると認めた者を登録する扱いをとっています。

この名簿を「入札参加資格者名簿」などと呼んでいます。
事業者の規模や工事実績などによって、複数のランクに分けて作られることが多いです。

自治体では、事業者の指名を行うときや随意契約による場合に、この名簿に載っている事業者から選択します。一般競争入札でも、名簿登録を参加の要件としていることは多いと思われます。

笑い話のような話として、PRに来た事業者がその自治体の名簿に登録していなかったというようなことがあります。

指名

指名競争入札を行う場合に、入札してもらう事業者を決定することです。工事の入札では、工事の規模(予定価格)によって、指名する事業者のランクと数が決まっている自治体が多いと思われます。
通常は、入札参加資格者名簿を用いて、そのランクのなかで、点数の上位から、あるいは工事実績から、あるいは今までの指名回数などを考慮して決定されます。

どの自治体でも「指名業者選定委員会」などといった組織を設け、発注担当課が指名業者の選定方法や選定理由などを説明し、審議を行ったうえで決定しています。発注担当課が恣意的に指名業者を決めないようにするためです。

予定価格

自治体が契約行為を行う場合に、契約の内容(工事であれば、設計内容や資材、必要人員、工事の期間など)に応じて、契約を行う場合の限度額として決定する価格です。
工事や委託業務の発注、物品等の購入など、自治体がお金を支払う場合には、予定価格は上限の価格となります。予定価格を超える金額では契約できません。
自治体が土地や物品を売り払うなど、自治体に収入がある場合には下限の価格となります。これを下回る金額では契約できません。

予定価格は、随意契約とできるかどうか、議会の事前議決の対象となるかどうかの基準にもなる価格です。

予定価格は、かつては、すべての契約について、事前も事後も公開しないという取り扱いがなされていたこともありましたが、現在は一部の契約については、自治体により事前公開される場合があり、また、事後公表も行われるようになってきています。

公開されない予定価格を事業者が知ろうとすることは不正行為であり、職員がそれに協力すれば、収賄や官製談合の罪で罰せられることもあります。

制限付き(一般競争)入札

一般競争入札は誰でも参加できる入札の仕組みです。しかし、文字通り誰でも受け付けることとすれば、応募する業者が多数に上り、事務処理に大変な時間がかかり、また、不良な事業者あるいは能力の不十分な事業者が応募する懸念があります。

入札参加資格者名簿の登録要件として、事業者の規模や事業実績などを定め、一般競争入札参加に当たっても、これを適用することは行われていますが、更に、契約の性質又は目的によって、特定の事業へ入札するに当たっての要件を定める場合があります。これを「制限付き一般競争入札」といいます。
例えば、一定の地域に本支店を置いていること(地域要件)や同じ程度の規模の工事を行った実績があること(実績要件)などを条件として付します。

一般競争入札は、入札の公告(工事の内容や入札日程を広く知らせること。ホームページなどに掲載することが多い)を行いますが、この要件も必ず公告することになっています。

ただし、あまり条件を厳しくすると、応札(入札に応募すること)する見込み業者数が少なくなります。それでは「競争性の確保」が図られないということで、入札資格審査委員会で議論となることがあります。

札入れ

入札の価格を書いた紙を提出することです。「入札箱」に封筒に入れた指定の用紙を入れるのが一般的です。しかし、最近では電子入札といって、システムやソフトをダウンロードし、電子の方法で提出することも多く取り入れられています。
効率性のほかに、電子の方法による方が応札業者が顔を合わせないので、談合の機会が減るという考え方もあるようです。

入札中止

一般競争入札では、入札のやりかたや条件やその工事などの細かい説明(仕様)を示してから(これを入札の公告といいます)、入札参加資格を確認し、一定期間を置いて入札することになります。
この一定期間のことを見積期間といいます。指名競争入札でも指名してから入札するまで見積期間をとることがルールとしてあります。

この期間に入札が中止されることがあります。その原因としては、談合情報が寄せられた場合、設計や予定価格の見積りにおける誤りを発見した場合、そのほかもろもろの事情によります。

不落

「ふらく」と読みます。入札を行ったが、応札された価格がすべて予定価格を上回るものであったような場合。あるいはすべての価格が最低制限価格を下回った場合などで、落札業者が決まらなかったことをいいます。「不調」ともいいます。

不落になると、担当者はがっかりします。もう一度、設計を変更して、指名競争入札の場合には指名業者選定委員会を経、一般競争入札では、公告してという手続を繰り返すことになるからです。
予算執行の時期も迫ってくるし、場合によって繰越の手続きも考えなければならないなど頭が痛いのが不落です。

くじ引き

応札価格の額が全く同じ額ということがあります。これは示し合わせたわけではなく、事業者側も積算基準を持っているので、その積算基準に従って算出すると同じ額が出てしまうことがあります。

その場合には、くじ引きで発注業者を決めることになります。

くじ引きの方法はいろいろです。紙入札の場合は、簡略化したあみだくじで行う場合もあれば、入札資格者番号などをもとに加減乗除する方法もあります。電子入札の場合にはあらかじめ番号を入力してもらっておいて、それを用いてくじを引く方法もあります。

辞退

指名を受けても、手いっぱいだとか、能力的に無理だという場合には指名業者は辞退ができます。こういう辞退は問題ありません。

しかし、落札してからの辞退はちがいます。自らの意思で入札したということは契約を結んで、仕事をやるということです。落札者が決定したら入札は終わりですから、そこで辞退が生じたらもう一度手続はやり直しです。そのような場合には、指名停止などのペナルティがあります。

指名停止

指名停止とは、先ほどの入札や契約に絡んだ不手際、談合、受注工事で事故を起こしたなど、契約の相手方としてふさわしくない行為をした事業者を一定期間、契約の相手方としないことです。
指名停止とありますが、一般競争入札でも、通常指名停止措置を受けていないことという要件が付されます。

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