はじめに
本記事は、公務員試験でも出題されることのある「予算の原則」について、実務上の取扱いを含めて解説する記事です。
まず押さえよう
公務員試験で出題される予算の原則としては、①総計予算主義②単一予算主義③予算統一④予算の事前議決⑤会計年度独立(予算単年度主義)⑥予算の公開が一般に挙げられます。
これらの原則と例外は地方自治法にほとんどが規定されています。
実務的には、一連の予算編成の手続の中で、こうした原則が守られるようになっています。
総計予算主義
これから、予算原則を説明していきますが、予算についてあまりよくわからないという方は、別のブログ『何も知らない人のための「自治体の予算」とは』を併せて読んでいただくと、イメージがつかみやすいと思います。
総計予算主義とは、一会計年度における一切の収入と支出を予算に盛り込むことで、地方自治法第210条に規定されています。
ある事業の支出を予算に盛り込むと予算オーバーになってしまうので、除外するなどというのは論外ですが、収支の差し引き(相殺)については気をつける必要があります。
例えば、ある団体に事務を委託し、その団体から売り上げの一部をもらうといった場合を考えます。
委託料は事務量によって積み上げた総額を支払い、売り上げについては、一定のルールによって団体から収入するといった形であれば特段問題はありません。
それを、収支を差し引いた委託料だけを支払うという形にする場合には、委託の趣旨や売り上げとの関係などをしっかり整理をする必要があると思います。
単一予算主義
これは、予算はできるだけ一本で整理するということですが、地方自治法第209条で一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に「特別会計」を設ける旨の例外規定が定められています。
この規定と地方公営企業法に基づき、水道事業や病院事業や交通事業などについては、多くの団体で、「特別会計」をつくっています。
また、国民健康保険も特別会計とすることとされており、予算が一本だけしかない自治体は全国にほとんどないと思います。
予算統一の原則
予算統一の原則は、予算を通じて一貫した秩序が必要とされることなどと説明されます。
実務的には、歳入や歳出が地方自治法施行規則の款項目節の区分にきちんと区分けされ、特別会計を含めた各会計間の収支にちがいがない(ある会計の支出が支出先の収入となっている)ことなどを示します。
予算の調製の様式については、この施行規則により細かく定められており、実際にはほとんどの団体がこれによって予算を作成しているはずです。
予算の事前議決
これは、予算については、事前に議会の議決が必要だとするものです。
当初予算については、地方自治法第211条に、都道府県と政令指定都市については、年度開始前30日、その他の市町村については年度開始前20日までに首長が議会に提出する努力義務が定められています。
また、補正予算及び暫定予算についても、同法第218条に規定があり、予算は、議会の議決事件のひとつとして、同法第96条に定められています。
通常は2月(3月)議会において、翌年度の予算が審議され、年度開始前の3月31日までに議決されます。
会計年度独立の原則(予算単年度主義)
会計年度独立の原則とは、各会計年度の歳出はその年度の歳入をもって充てるということで、地方自治法第208条に定められています。
これを予算単年度主義ということもあります。
これにも大きな例外があります。
自治体の事業の中には、施設建設事業や土木事業など、1年では終わらない事業もたくさんあります。
そのような場合に、1年度分の予算しかなければ、業者に発注ができません。そこで、そうした1年度を超える見込みの事業に対応するため、「継続費」とか「債務負担行為」という制度が設けられています(地方自治法第212条、第214条)。
また、予算の性質上年度内に支出が終わらないか、または予算ができたときには年度内に終わる予定だったが、その後の事情の変化により終わらなくなった事業がある場合に、今年度の予算を繰り越して来年度に使う方法として「繰越明許」という制度もあります(地方自治法第213条)。
これらについては、予算の一部を構成するもので、歳入歳出予算と合わせて、議会に提出します。
予算の内容については、地方自治法第215条で定められています。
予算の公開の原則
多くの団体では、予算の概要について、ホームページで発表したり、首長や財政担当の責任者が記者会見を開いたりして、マスコミを通じ住民に知らせています。
さらに4月頃に発行される広報誌には予算の概要が掲載されます。
こうしたことによって、予算の公開の原則が守られています。
地方自治法第219条で、予算について議会の議決があったときには3日以内に議長は首長に送付し、首長は直ちにその要領を住民に公表することが定められています。
まとめ
以上、予算の原則について、法令の根拠を示しながら解説をしました。
自治体の内部では、予算の編成については、その団体なりのルールとスケジュールが確立しており、その中で、これらの原則を満たすような事務処理がされている例がほとんどだと思われます。
根拠法令等
本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。
地方自治法第208条(会計年度及びその独立の原則)
同法第209条(会計の区分)
同法第210条(総計予算主義)
同法第211条(予算の調製及び議決)
同法第96条(議決事件)
同法第212条(継続費)
同法第213条(繰越明許費)
同法第214条(債務負担行為)
同法第215条(予算の内容)
同法第216条(歳入歳出予算の区分)
地方自治法施行規則第14条及び別記(予算の調製の様式)
同規則第15条及び別記(歳入歳出予算の款項目節の区分)
地方自治法第218条(補正予算、暫定予算等)
同法第219条(予算の送付及び公表)
地方公営企業法第2条(公営企業の範囲)
同法第17条(特別会計の設置)
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