はじめに
自治体の行政は、長と行政委員会(委員)が担っています。これらを執行機関といいます。
行政委員会には、選挙管理委員会、教育委員会、人事委員会、公安委員会、労働委員会、監査委員などがあります。行政委員会について、詳しくは、別のブログ『「行政委員会」ってなに?-わかるお役所用語解説7』をご覧ください。
執行機関は、附属機関として、審査会、審議会、調査会などの名称をもった組織を設けることができます。
本稿はその「附属機関」についての説明です。
附属機関とは
附属機関とは、執行機関の行政執行のため、又は、行政執行に伴い必要な、調停、審査、審議又は調査を行うことを職務とする機関です。
執行権を有しませんので、直接、対外的にその機関の名で活動することはできません。あくまでも、長や行政委員会の行政執行を助けるための審議や調査などを行うに留まるものです。
具体的な活動として、
「調停」とは、附属機関が間に入り、紛争当事者間の紛争の妥当な解決を図るものです。
「審査」とは、特定の対象事項について、結論を得るためによく調べることです。
「調査」とは、一定の範囲の事項について、その真実を調べることです。
「審議」とは、対象事項について、各委員間で意見を交換し、一定の意見をとりまとめることで、審議会は、長や行政委員会から「諮問」された事項について「答申」の形で意見を提出することが一般的です。
これらについては、名称より、こうした審査、調査、審議のような職務を担当する機関であるかどうかが附属機関に該当するか否かの基準となるでしょう。
設置要件や委員の身分
附属機関は、必ず、法律又は条例の定めにより設置します。
附属機関については、法律の定めによるほか、自治体が任意に設けることができますが、行政組織の一部であるので、その根拠は条例によらなければなりません。
附属機関の委員等は、非常勤の職であり、常勤とすることはできません。
附属機関の庶務は、法令に別の定めがない限り、その属する執行機関において行うこととなり、当該附属機関のための補助要員を置くことはできません。
自治体における附属機関の設置指針等
附属機関のメリットとしては、行政の職員だけでは不足しがちな、住民の意見を反映させることや、専門家による専門的な知識や意見を取り入れることができ、また、公正な行政の決定過程を示すことができます。
一方で、附属機関が積極的に役割を果たさず、執行機関側の見解にお墨付きを与えるだけの存在になるおそれは常にあり、また、乱立することにより、効率的な行政を妨げるおそれもあります。
自治体によっては、附属機関のメリットを活かし、デメリットを少なくするための指針等を作成している団体もあります。
そこには、会議の公開や、委員について、できるだけ民間から選任することとしたり、公募したり、再任の回数を限ったり、あるいは、同一の者を多くの附属機関の委員としないことなどを定めたり、定員の上限を限る、附属機関自体を時限的なものとするなどの定めをしている例があります。
要綱等による組織
条例によらず、要綱、要領などにより、関係者の意見を聴く組織など(〇〇協議会等)を立ち上げている例もあります。
これらが附属機関に該当する事務を行っている場合には、条例化が必要です。
自治体によっては、これらの名称について、附属機関に用いられる「審議会」「調査会」などの名称を用いず、「懇談会」「懇話会」「研究会」のような名称とすべきこと、所掌事務についても、「審議する」「答申する」などの文言を用いないことや、委員の「委嘱」を行わず、「就任依頼」とすることなどを定めることにより、附属機関と誤解されることのないようにしている例があります。
条例設置とすることは、議会の議決を得るため、議員の理解を得る必要がありますが、要綱や要領は執行機関限りで制定できることから、こうした方法が用いられることは多いでしょう。
簡便で機動的ではありますが、適法性についての議論があることと運用によっては前記の附属機関のデメリットが生じやすいことに留意する必要があります。
根拠法令等
本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。
地方自治法第138条の4第3項(附属機関の設置)
同法第202条の3(附属機関の職務権限・組織等)
同法第203条の2(報酬及び費用弁償)
地方公務員法第3条第3項(特別職)
地方公務員災害補償法第69条(非常勤の地方公務員等に係る補償の制度)
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