「規則」ってなに?-わかるお役所用語解説22

はじめに

自治体は「規則」を定めることができます。
なお、国会や国の機関なども規則を定めることができますが、本稿においては、自治体の規則のみを説明の対象とします。

自治体における規則の特徴は、国の政令が法律を実施するため又は法律の委任に基づいて制定されるのに対して、法令や条例の委任に基づき、又は、法令や条例の執行のために定められる以外にも定めることができるという点です。

ただし、例えば、長が定める規則は、長の権限に属する事務のみが対象であり、その内容が法令や条例に反しないことなど、一定の制限があります。

規則の制定権者、条例とのちがいなどについて解説します。

自治体において、誰が規則を定められるか

自治体の長は、規則を定めることができます。

議会は、会議規則や傍聴の規則を設けなければなりません。

自治体に設けられる委員会(選挙管理委員会や教育委員会など)は、自治体の条例や規則の範囲内で、規則その他の規程を定めることができます。

条例とのちがい

条例と規則とのちがいは、まず、条例の制定や改廃については議会の議決が必要なのに対し、規則については長(委員会)限りで制定、改廃ができる点です。

また、条例には「2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する」規定を設けることができますが、長の定める規則には、「5万円以下の過料」しか設けられません。

なお、科料と過料のちがいについてですが、科料が、刑法に定める刑の一種であるのに対し、過料は、行政上の秩序維持のためのもので、刑罰ではありません。

長の定める規則

自治体の長は、広く規則の制定権を持ちます。

国の政令は、法律を実施するため又は法律の委任に基づいてのみ定められるのに対して、長の定める規則は、法令や条例の委任に基づき、又は、法令や条例の執行のため以外にも、定めることができます。

その例としては、庁舎管理規則のような施設管理のためのものや、財務規則のような事務処理手続についてのものなどが挙げられます。

規則の制定に当たっては、以下の点に留意する必要があります。

1 権限に属する事務について制定するものであること
これは、現在の自治体の事務については、地方分権改革で、機関委任事務がなくなり、法定受託事務制度となったため、長の担当する事務については、基本的にすべて対象となると考えられます。
ただし、他の執行機関(委員会)の権限に属する事項については、定めることはできません。

2 法令等に違反しないこと及び条例で定めるべき事項でないこと
条例と規則の優劣については、条例が議会の議決を要することや罰則として懲役刑まで定めることができる点で、規則に優先すると考えられます。よって、規則は、法令と条例の範囲内で定めることができるものです。

また、法律で「条例で定める」とされているものは、規則では定めることができません。義務を課したり、権利を制限したりするには、法令に特別の定めがない限り、条例によることとされていますので、そのような内容を規則に定めることはできません。

委員会の定める規則

自治体に設けられる委員会(選挙管理委員会や教育委員会など)は、自治体の条例や規則の範囲内で、規則その他の規程を定めることができます。

委員会は、この規則のうち、事務局などの組織や定数や職員の身分取扱いの事項のうち一定のものについて定めたり変更したりする場合には、長への協議が必要です。
また、予算を伴う規則については、必要な予算上の措置が的確に講じられるまでは、制定又は改正できません。

なお、自治体の委員会については、別のブログ『「行政委員会」ってなに?-わかるお役所用語解説7』をご参照ください。

規則と規程

規則と似たことばに「規程」があります。

「規程」は一般に、規則より下位に位置付けられるもので、いろいろな事務手続の決めごとを内容としているものが多いです。例えば、事務決裁規程、文書管理規程などです。ただし、自治体により規則で定めるか規程で定めるかについては、多少の判断の相違があるようです。

委員会も上記の通り規程を定めることができ、また、地方公営企業においても自治体の条例、規則やその機関の規則に違反しない限りで、業務に関し、管理規程を定めることができます。

この地方公営企業の管理規程については、長部局において規則で定められているものと規程で定められているものの両方が含まれるようです。前者の例としては、組織の細目について、部や局を定める条例の下に長部局では規則で定めるものが、地方公営企業では、公営企業の設置条例の下に管理規程で定めるような場合です。

まとめ

規則は、条例とともに自治体が定める重要な法規です。議会の議決を経るか経ないかというちがいはありますが、内容の明確性や他の法令等との関係など、制定に当たって気をつけることは条例と変わりません。
特に、全く新規に、独自の規則を制定する場合には、慎重な検討が望まれます。

なお、条例については、別のブログ『「条例」ってなに?-わかるお役所用語解説13』をご参照ください。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第15条(長の規則制定権)
同法第120条(議会会議規則)
同法第130条第3項(議会傍聴規則)
同法第138条の4第2項(委員会の規則制定権)
同法第14条(条例)
同法第96条第1項(議決事件)
同法第184条の4第2項(委員会規則の長への協議)
同法第222条第2項(予算を伴う規則)

地方公営企業法第10条(企業管理規程)

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