わかる「交付税」2―基準財政需要額をかんたんに

第1回目の内容

今回は、交付税制度の第2回目の説明ですが、第1回目の説明の概略を以下に述べます。第1回目から続けて読まれている方は、この項を飛ばして次の項に進んでください。また、第1回目をまず読みたい方は、『わかる「交付税」1―もらう交付税と交付する交付税』をご覧ください。

交付税は、税収だけでは、法律に義務付けられた仕事ができない自治体に対し、国が交付するお金です。

交付税には、「普通交付税」と「特別交付税」がありますが、第1回も第2回も普通交付税の説明です。

普通交付税の計算の方法は、税収などの収入(基準財政収入額)を見込み、また、自治体に仕事に要する経費(基準財政需要額)を積み上げ、その差し引きをします。

算式は、 普通交付税額=基準財政需要額―基準財政収入額 です。

基準財政収入額は、自治体の徴収する税収と「地方譲与税等」の合計額ですが、税収については、75パーセントの額とします。

 基準財政収入額=税収×75% + 地方譲与税等 です。

基準財政需要額の計算方法

基準財政需要額は、自治体が行う仕事に要する経費を積み上げたものです。
その積み上げ方は、実際に要する経費ではなく、一定のルールによって計算されます。

《仕事の部門ごとに計算する》
まず、自治体の仕事を大部門に分け、その大部門をいくつかの小部門に分けて、それぞれの部門ごとに計算を行います。

市町村の部門は、「消防費」「土木費」「教育費」というような大部門の区分けになっています。これらの区分けの中に、例えば「土木費」であれば、「道路橋りょう費」「港湾費」「都市計画費」といった区分けが、「教育費」であれば「小学校費」「中学校費」のような区分けがさらにされています。

現在は、大部門は15あります。小部門は、例えば土木費の中は6つに、教育費の中は4つに、厚生費の中は「生活保護費」「社会福祉費」「保健衛生費」「高齢者保健福祉費」など5つに、それぞれ分かれています。
これだけ見ても、厄介な計算になりそうだと思いますね。
都道府県についても、費目の名前はちがいますが、同じような区分けがされています。

《独特の計算方法=単位費用×測定単位×補正係数》
基準財政需要額の算定は、
 各項目の基準財政需要額=単位費用×測定単位×補正係数 で行います。

順番に説明していきます。
交付税の需要額の計算は、その区分ごとの費用の中で中心的なものに注目して、その値に一定の金額をかけることによって算出します。
例えば、「小学校費」の中の中心的なものは、「児童数」と「学級数」です。この中心的なものを「測定単位」といいます。

そして、児童1人当たりいくら、学級1クラス当たりいくらという費用が決まっています。この単価のことを「単位費用」といいます。
単位費用(単価)は毎年変わりますが、ある年の単位費用は児童1人当たり44,500円、1学級当たり912,000円です。

測定単位に単位費用をかければ、ひとまず、その市町村の小学校の運営にかかる費用=需要額が出ることになります。

《補正係数》
今の説明には、すぐに、それでは同じ児童数と学級数なら日本全国同じ需要額になるけれど、それはおかしいだろう。寒い所は冬の暖房経費が必要だし、教員の給料だって都会と田舎はちがうだろうという声が聞こえてきそうです。

そのとおりで、それを修正するために登場するのが「補正係数」です。
寒い所の経費割り増しや都会と田舎の給与水準のちがいなどを、係数をかけることによって調整します。

補正係数はたくさんあります。
煩瑣になりますが、あえて列挙すると「種別補正」「段階補正」「密度補正」「態様補正」(この中に「普通態様補正」「経常態様補正」「投資態様補正」がある)「寒冷補正」「数値急増補正・数値急減補正」「財政力補正」「合併補正」です。

この補正係数は、一項目に一つの適用ではなく、重複して適用されるものが多くあります。
それぞれの補正係数の内容について、ここでは触れません。興味のある方は下記の根拠条文を参照してください。

各団体の実情を細かく反映させようとすればするほど、こうした補正係数自体を増やしたり、あるいは各補正係数の算定の仕方を細かくしたりする必要があります。
どうしてこのような方法をとったのかについて、総務省は、自治体の置かれた状況を反映したいろいろな単位費用を設定すると需要額の算定が複雑になるので、補正係数による補正の方法をとっていると説明しています。

市町村をとっても、人口数百人から300万人以上の団体まであり、同じ市でも権能のちがう政令指定都市、中核市もあるという状況で一つの制度を運用すれば、どのような方法をとっても、複雑にならざるを得ないということですね。

まとめ

このような計算で基準財政需要額を計算します。
そして、別途計算した基準財政収入額との差が交付税になります。

交付税は自治体の判断で、どのような使途にもつかえます。大部門や小部門ごとの需要額は算出されますが、そうした割合でつかう必要はありません。こうした使途が自由な財源を「一般財源」といいます。通常の税と交付税は一般財源の代表的なものです。
反対に、補助金や通常の地方債は使途が決まっています。これを「特定財源」といいます。

なお、こうして計算した交付税は、全額現金でもらえない場合があります。国の財政状況が厳しいために、一部を地方債に振り替える制度があるからです。詳しくは別のブログ『「建設地方債」と「赤字地方債」のちがいとは』をご覧ください。

次回は交付する側の交付税を説明します。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方交付税法第2条(用語の定義)
同法第6条の2(交付税の種類等―普通交付税と特別交付税の説明)
同法第10条(普通交付税の額の算定)
同法第11条(基準財政需要額の算定方法)
同法第12条(測定単位及び単位費用)
同法第13条(測定単位の数値の補正―補正係数の説明)

普通交付税に関する省令第2章(基準財政需要額の算定方法)

総務省ホームページ(政策→地方行財政→地方財政制度→地方交付税)

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