予算の中身を知りたい人のための「目的別分類と性質別分類」

はじめに

本記事は、自治体の予算(一般会計予算)に関して、教育費、民生費、土木費などの予算の目的別の分類の仕方と、人件費、普通建設事業費といった予算の性質別の分類の仕方について解説する記事です。

まず押さえよう

自治体の予算は、歳入の部と歳出の部に大きく分かれています。

歳出予算は、行政の分野ごとにまとまっています。これに従って分類する方法「目的別分類」といいます。

もっとも大きいまとまりは「款」といい、その中に「項」があります。「項」の中のまとまりを「目」といいます。

「性質別分類」とは経費の性質によって分類する方法で、人件費、物件費、普通建設事業費などといった分類があります。

予算書の「目」の内訳として「節」がありますが、これにより分類する方法です。

「性質別分類」はその自治体の財政の状態(健全であるか、弾力的であるかなど)を見る場合に用います。

一般会計予算の目的別分類について

1 予算の区分の仕方

私たちがいろいろなものを分類するとき、まず、大きく分けて、その分けたものをさらにいくつかに分けることがよくあります。

予算もそのように、大項目、中項目、小項目といった形で分類されています。大項目を「」(かん)、中項目を「」(こう)、小項目を「」(もく)といいます。

この区分の仕方は、歳入(収入のこと)予算も歳出予算も同じですが、以下の説明は、歳出予算についてしています。

2 目的別経費の具体的な内容

お住いの市町村や勤務している、あるいは志望する自治体の予算書をホームページなどでご覧になるとわかりますが、大項目(款)は、第1款議会費、第2款総務費、第3款民生費・・・と並べられています。

最後の方は、自治体によって該当のない経費は項目ごと削るので、多少ちがいますが、定めでは、第12款公債費、第13款諸支出金、第14款予備費となっています。
※自治体の予算の項目の区分は、地方自治法施行規則第15条及び別記で定まっています。

生活に関係の深い経費が、どの款に入っているかというと、ワクチン接種費は「衛生費」、ごみ処理費用も「衛生費」、住民票の関係は「総務費」、救急車や消防の費用は「消防費」に計上されています。
小中学校の費用は「教育費」。道路、橋、川などの修繕は「土木費」です。港のように漁港か普通の港かで費目が分かれるものもあります。

そして、例えば、第3款民生費を見ると、第1項社会福祉費、第2項児童福祉費、第3項生活保護費、第4項災害救助費という順になっています。
第2項の児童福祉費の中には第1目児童福祉総務費、第2目児童措置費、第3目母子福祉費、第4目児童福祉施設費といったものが記載されています。

これを前年度の予算と比較すると、どの分野が増えたのかがわかります。
ホームページには、自治体ごとに工夫を凝らして、前年度との対比表や重点事業の具体的な名称と予算が記載された一覧表などが載っていますので、ご覧ください。

目的別分類と自治体の組織

最近は自治体によって組織のつくり方はいろいろですが、おおまかにはこの「款」の単位を組織の「部」の単位とし、「項」を「課」の単位として構成している自治体は多いと思われます。
例えば、第2款は総務費ですが、この費目を所管する総務部を設け、その中に第2項徴税費を所管する税務課、第3項戸籍住民基本台帳費を所管する住民課を置くというような形です。

そして、この「款」は各省庁の所管に対応するものも多いです。
例えば、第3款民生費と第4款衛生費は厚生労働省の旧厚生省所管、第5款労働費は厚生労働省の旧労働省所管、第8款土木費は、国土交通省の旧建設省所管というようにです。
日本の自治体は国が定めた法律により、各省庁の定めの下、行政を行う部分が非常に大きいですが、予算の構成からもそれが読み取れますね。

一般会計予算の性質別分類について

1 性質別分類の具体的な項目

性質別分類の具体的な項目としては、人件費、物件費、扶助費、補助費、普通建設事業費、公債費などがあります。

聞きなれない経費が多いと思います。

人件費は職員の給料などです。
物件費というのは、コピー用紙、筆記用具、出張経費など仕事をするのに必要な費用というイメージです。
扶助費というのは、児童手当や生活保護費のような支給金です。
補助費は、例えば、保育所や高齢者施設などに補助する費用です。
普通建設事業費は、施設の建設や道路など構造物の新設・改修などの工事費です。
公債費は、自治体が借金をした場合にその返済に充てる費用です。

これらの費目は、予算の各「目」の内訳として記載されている「」によって区分されています。

2 どうして性質別の分類をするのか

性質別経費を見ると、例えば、人件費や公債費というのは、歳入が少なくなったからといってすぐに削れない経費です。
職員を収入が少なくなったからといって、クビにするのは難しいですし、返す約束のお金を返さないことにしたら、自治体でなくても信用をなくします。
一方で、物件費は節約できますし、普通建設事業費は発注量の調整をすることができます。

普通建設事業費の割合が高ければ、「弾力性が高い」といったり、反対に人件費や公債費の割合が高ければ「硬直的」だといったりします。

例えば、職員を採用すると、初任給は安くてもだんだん昇給していけば給料は高くなります。
それをその年度に退職する数以上に毎年採用していくと、10年後や20年後の人件費はたいへん大きな額になります。

立派な施設を建設するため借りた借金も、長期の分割払いで返済すれば、一年度の返済額はわずかなものになります。しかし、そうした借金を毎年重ねていけば、しだいに公債費の金額が膨れてきて、税収が落ち込んだときには、予算が組めないといったことになります。

そのようなことのないよう、一定の長期的な見通しを持って財政運営をするため、こうした性質的分析を行います。
具体的には、自治体の中で、過去からの人件費や公債費や法律に基づいて負担する経費の推移を見、将来の見通しを立てたり、規模や状況が似たほかの団体と数字を比較したりします。

財政分析

性質別経費による比較については、予算よりも決算に基づいて一般には行われます。
これを財政分析といいます。

地方自治を所管する総務省は、全国共通の基準に基づき、毎年の決算の統計を作成しています。

総務省のホームページの「政策」の中の「地方行財政」の「地方財政の分析」の「地方財政状況調査関係資料」のリンクをクリックすると自治体ごとの財政状況を見ることができます。(2023年1月現在のホームページによる)

そこには財政分析に使ういろいろな財政指標も示されていますが、財政の経験がないと、少し理解するのが難しいものもあります。
代表的な指標については、項を改めて、本ブログでも紹介したいと考えています。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。

解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第216条(歳入歳出予算の区分)
地方自治法施行規則第15条及び別記(歳入歳出予算の款項の区分及び目の区分)(歳出予算に係る節の区分)

総務省ホームページ(地方行財政関係)

【参考図書・文献】
六訂 地方財政小辞典
 石原信雄、島津昭 監修、地方財務研究会 著
 ぎょうせい

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