「予備費」ってなに?-わかるお役所用語解説21

はじめに

最近、国の予算における「予備費」が多額に上ることが議論されていますが、自治体の予算にも「予備費」はあります。

本稿は、自治体予算の「予備費」について、他の歳出科目とのちがいや計上・使用に当たっての留意点などを解説する記事です。

まず押さえよう

「予備費」は、一般会計予算においては、必ず計上しなければなりません。

予備費を使う場合には、議会の議決などは不要ですが、議会の否決した経費に充てることはできません。

「予備費」とは

予備費とは、「予算外の支出」又は「予算超過の支出」に充てるため、歳出予算に計上するものです。

「予算外の支出」とは、予算に計上されておらず、予見できないものであったが、支出せざるを得ないものです。
「予算超過の支出」とは、予算計上の額では不足する支出です。

国の予算では、近年、100兆円程度の歳出予算で数兆円から10兆円を超える予備費が組まれることに関し、使途の明確化や国会軽視などの点から議論がされています(もっとも、使途のまったく定めのない予備費ではなく、例えばコロナ対策や物価高騰対策などというしばりはあるようですが)。

自治体予算における予備費は、最も予算規模の大きい東京都の令和6年度一般会計当初予算でも、歳出総額8兆5千億円弱のうち50億円となっています(この額は同予算の歳出予算第18款第1項記載の額です)。

自治体が支出を行う場合に、予算がなければ、補正予算を議会に提案すべきであり、災害対応などで議会を招集する時間的余裕のない場合には、予算の専決処分も認められています。
また、予算の流用という手段もありますが、流用の範囲には一定の制限があります。

そのような中で、この規定は、議会を招集して予算の補正をするまでもないような軽微な予算の不足やそのような性質の予算の不足に充てるという趣旨であるとされています。

なお、補正予算については、別のブログ『何も知らない人のための「自治体の予算」とは』を、専決処分については、『「専決処分」ってなに?-わかるお役所用語解説15』をご覧ください。

一般会計予算においては、予備費は必ず計上しなければなりません。特別会計においては計上しないことができるとされています。
計上額について、実務的には前年度同額とすることが多いでしょう。そもそも想定できない経費に充てるものですから、積算するとしても、過去の実績を勘案するくらいでしょうか。

予備費の使用に当たっての留意点

予備費は、議会の否決した経費に充てることはできません。
議会の否決した案件について、長は専決処分をすることができないとされており、予備費を使ったこれを逸脱する行為を明文をもって禁止しています。

予備費を執行する場合には、議会の関与は必要なく、長のみの処理で行えますし、財源の手当ても不要です。

予備費を使用するに当たって、支出の科目がない場合には、支出科目を設けて、そこに予備費を振り替えて使用します。直接予備費を執行するものではありません。
また、執行の残額が出た場合には、当該支出科目の残額とし、予備費に戻すことはできません。

決算では、当該支出の内容について、監査委員や議会により審査されることは、他の予算計上経費と同じです。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第217条(予備費)
同法第218条(補正予算)
同法第179条(長の専決処分)
同法第220条第2項(予算の流用)

東京都令和6年度一般会計当初予算(「令和6年第1回東京都議会定例会議案(1)令和6年2月東京都」東京都ホームページ2024年4月7日閲覧

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