「使用料」ってなに?-わかるお役所用語解説20

はじめに

自治体の歳入項目に「使用料」というものがあります。住民等が何かを使った対価として自治体へ支払うものだろうと想像はつきますが、使用料の対象は意外に幅が広いものです。
本稿は、「使用料」について、自治体がどういう場合に徴収することができ、また、徴収に当たってのルールはどのようなものかなどを解説する記事です。

まず押さえよう

「使用料」とは、「行政財産」の使用を許可した場合、「公の施設」を利用させた場合又は「旧来の慣行」による「公有財産」の使用をさせる場合に、自治体が徴収することができる金銭です。

使用料に関する事項は必ず条例で定めます。その条例には、5万円以下の過料や不正に徴収を免れた者に対する不正額の5倍以下の過料の規定を定めることができます。

法律で定める使用料の滞納については、地方税の滞納処分と同じ方法により強制的に徴収することができます。

使用料を徴収できる場合

行政財産の使用許可をする場合の使用料

前項で使用料を徴収できる場合として3つ挙げましたが、そのうちの1番目の「行政財産」の使用許可をする場合です。

「行政財産」について説明します。

自治体の財産のうち、土地や建物などの不動産、船舶、航空機や地上権、地役権、特許権、株式などの各種権利は「公有財産」に区分されます。
その「公有財産」のうち、行政目的(公用又は公共用)に使うもの、例えば、役所庁舎や学校、市民会館などを「行政財産」といい、特にそうした目的のない土地等を「普通財産」と区分けします。

「行政財産」は行政目的に使うものですから、他者がそれを使う場合には、一時的な「使用の許可」をするというのが一般的です。
これに対して、「普通財産」は、「貸付け」という形式をとることが多いです。

「行政財産の使用許可」の例としては、庁舎内に銀行のATМや飲料の自動販売機を置くことを許可する例などがあります。
そのような場合に一定の使用料を徴収します。

なお、「公有財産」の詳細については、別のブログ『「公有財産」ってなに?-わかるお役所用語解説8』をご参照ください。

公の施設の利用をさせる場合の使用料

「公の施設」とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するため自治体が設ける施設です。

「公の施設」の設置や管理に関する事項は、法令の定めがある場合以外は条例で定めます。
住民が「公の施設」を利用することを正当な理由がない限り拒んではならず、また、不当な差別的取り扱いをしてはならないと定められています。

「公の施設」の例としては、思い浮かべやすいものとして、市民会館・公民館、学校、公立病院や保健所、公営住宅などがありますが、水道、下水道、市営バス・地下鉄なども、これに含まれます。
一方で、試験研究所等の建物など住民の利用が想定されない施設は「公の施設」ではありません。

したがって、この区分の使用料としては、市民会館等のホール・会議室使用料、学校の授業料、診療や検診の料金、上下水道料金、市営バス等の運賃などがあります。

旧来の慣行に基づき公有財産を使用させる場合の使用料

この区分の使用料は上記2つに比べ特殊なものです。

現在の市町村制度の大もとは、明治時代の「市制町村制」というものです。それ以前に市町村がもっている公有財産につき、特別の使用権を持っていた住民については、「旧来の慣行に基づき」使用権を認め、それにつき、使用料を徴収するものです。
例えば、従来は集落で所有していた山林を市町村有に切り替える際、その山林の利用を認めるような場合です。

使用料に関する条例制定等

使用料に関する事項については、条例で定めることとされています。具体的には、納入義務者、金額、徴収の時期や方法についてです。もっとも、これらの細かい事項すべてを条例に規定する必要はなく、規則で定めることはできます。

この条例には、5万円以下の「過料」と、詐欺その他不正行為により徴収を免れた者に対する免れた額の5倍の額(それが5万円未満のときは、一律5万円)の「過料」を科する規定を設けることができます。

なお、この「過料」は刑事罰の「科料」とは異なるものです。
また、この条例制定の規定は、分担金や手数料にも共通して適用されます。

滞納使用料の徴収方法

使用料については、法律で定めるものにつき、地方税の滞納処分の例により処分ができます。

地方税の滞納処分については、裁判所の関与なく、自治体の判断で、差押えや換価ができるということです。
滞納処分については、別のブログ『怖いのは税務署だけではありませんー徴収のことば』をご参照ください。

地方税の例により滞納処分ができる使用料としては、国民健康保険料、介護保険料、下水道料金などがありますが、水道料金や病院の診療費などはこの対象ではありません。
したがって、他の民事債権と同様に裁判で争うこととなります。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第225条及び第226条(使用料徴収の根拠)
同法第228条(使用料に関する条例等)
同法第238条の6(旧慣による公有財産の使用)
同法第237条(財産の管理及び区分)
同法第238条(公有財産の範囲及び分類)
同法第238条の4(行政財産の管理及び処分)
同法第244条(公の施設)
同法附則第6条(強制徴収できる使用料等)

地方公営企業法第21条(料金)
国民健康保険法第79条の2(滞納処分)
介護保険法第144条(滞納処分)

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