はじめに
本記事は、お役所でつかわれる符丁や隠語などのいわゆる業界用語のなかから、略語をいくつか紹介する記事です。
日本人は略語が好き
外国にもその傾向はあるのかもしれませんが、我々日本人はとにかく略すのが好きです。
外国語を短くするのはよくあります。「スマートフォン」が「スマホ」に、「メール・アドレス」が「メアド」に、「オリンピック・パラリンピック」は「オリ・パラ」にといったように。
また、漢字でもカタカナでも正式名称がちょっと長い場合はすきを見て短くします。「内閣総理大臣」は「総理」、文部科学省は「文科省」、国土交通省は「国交省」(省庁の名前は軒並み略されますね)。
「リトル・グリー・モンスター」は「リト・グリ」、
「メリー・クリスマス」は「メリ・クリ」、
「滝川クリステル」は「滝クリ」。
それが高じると、長くなくても略します。
「リプ」(リプライの略)、「リ」(「了解」の略)という、SNSでの若者用語まで行きついてしまいます。
お役所の世界も例外ではありません。
レク
「レクチャー」の略。部長レク、知事レクなどというようにつかいます。
レクチャーには、講義するという意味もありますが、お役所の現場では、案件について詳しい説明をし、了解をもらうという意味でつかうことが多いです。
お役所は文書主義(最近の国の省庁では重要なものほど口頭で了解を受けたり、文書がなくなったりしているケースがあるようですが)です。
具体的には、何かを行おうとするときは、起案書(民間では稟議書などといいます)を作成して、それにものによっては十いくつも承認のハンコをもらうことになります。これを、決裁を受けるといいます。
その決裁を回す前に、重要なことは必ず上司に説明しておかなければなりません。そうしないと、何時間もかけてつくった起案書が突き返されるという事態になるおそれがあります。
そのようなケースや、大事な会議や議会答弁の打ち合わせのときに「レク」をします。
アポ
アポイントメントの略で、「予約」のこと。これはお役所だけでなく民間会社、友達同士でもよく使いますね。
部長や知事に「レク」をするための「アポ」を入れる又は「アポ」を取るといいます。
関係議員説明のための「アポ取り」は、説明の順番や日程の重複を考えて行わなければならない大切な仕事です。
サクル
「削除する」の略。
部長や知事への説明資料はあまり長くなってはいけません。知事への説明時間は、5分とか10分の場合もあります。
本文説明はA4判の用紙1枚に収めるのがいいという説があります(これを「一枚紙」といったりします)。
そのためには、推敲に推敲を重ね、過不足なく文章を整えなければなりません。担当者は、だいたい余分なことを書いているもので、「この部分全体をサクって」などと部長から指示されたりすることがあります。
午後イチ
「午後イチバン」の略。公務員の標準的な休憩時間は正午から1時間なので、午後イチバンというのは、通常は午後1時を指します。
これに似たことばでは、「朝イチ」というのがあります。
「朝イチバン」は始業開始時間からということですが、上司の勤務状況と性格によって、上司の出勤後すぐのときもあれば、午前9時ごろからということもあります。
また、「ナルハヤ」というのは、「なるべく早く」の略ですが、言われた方はあせったり、とまどったりますね。
パブコメ
「パブリック・コメント」の略。パブリック・コメントとは、行政がつくる計画や法令などについて、正式決定する前に国民(住民)に公表して、意見をもらう制度です。
その意見に従う必要はありませんが、どのような意見があって、それについて行政はどういう考えであるかということは示す必要があるとされています。
「ギ」をまるで囲む
「議員が言った。」「議員から依頼があった。」など議員が関係している案件であることをメモするときにつかう人がいます。前後関係で名前を明示する必要があるときには、このしるしの前に議員の苗字を書きます。
これと同じ意味で「G」と書く人もいます。しかし、「G」場合には、「ガバナー」つまり知事や市町村長を表すこともあるので、他の人にそのメモを見せる場合には注意が必要です。
P
「P」は「ペンディング」の略。ペンディングとは、関係者と話がついていない、上司の了解が得られていないなどの理由で、まだ決まっていないということを表します。
国からの通知文書でも一部の項目に「P」がついてくることがあります。気をつけないと、次の文書で表現が変わっていたりします。
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