はじめに
18歳となり、はじめて投票できる選挙を迎えた方やなんとなく面倒くさかったり、堅苦しく思えたりして、今まで投票に行かなかった方に向けて、投票のしかたを説明する記事です。
まず押さえよう
投票日に投票所入場券だけを持って指定された投票所へ行けば投票ができます。
投票所入場券をなくしても投票はできます。お住いの市町村選挙管理委員会のホームページなどで、代わりに持参するもの等を確認してください。
投票できる時間帯は、原則午前7時から午後8時までですが、特に投票所を閉める時間については繰り上げられていることも多いので、気をつけてください。
投票所に行ったら、係員の案内の通り、入場券を渡し、投票用紙を受け取り、投票を書く台でその前面に貼ってある候補者の一覧から一人の氏名を書いて、近くの投票箱に二つ折りにして入れます。
投票所を出ると、出口調査に協力を求められる場合もありますが、協力するか、しないかは自由です。
投票所入場券をもって指定された投票所へ行こう
選挙が近づくと、郵便で市町村の選挙管理委員会から「投票所入場券」が送られてきます。選挙があるんだということを、これによって知る方も多いのではないでしょうか。
そこには、選挙の種類や投票日などとともに、投票できる投票所が指定されています。必ず、そこへ行きましょう。別の場所では投票できません。
ただし、数は少ないですが、一部の市町村では、その市町村のだれもがその場所で投票できる「共通投票所」を設けている場合があります。そこでは、指定された投票所でなくても投票ができます。
「共通投票所」が設けられている場合には、投票所入場券にもそうした説明があると思いますので、ご確認ください。
持ち物は、投票所入場券だけでいいです。投票所には筆記用具が用意されていますから、持っていく必要はありません。
投票所入場券が見つからない。どうしたらいい?
投票所入場券がなくても投票はできます。
一般的には、運転免許証やマイナンバーカードなど本人だと証明ができるものをもっていくことが勧められています。
でも、市町村によって細かい取扱いは異なりますので、市町村の選挙管理委員会のホームページや電話で確認するのがよいと思います。
ネットで市役所(町村役場)のホームページを探せば、そこに選挙の特集ページなどがあることが多く、「よくある質問」に回答が載っていることがあります。
初めての選挙の方は、その際に自分の投票できる投票所も確認してください。ただし、投票所は載っている場所がすぐにはわからないこともありますので、その際には電話で尋ねることをお勧めします。
また、入場券を持たずに投票所に行くと、本人確認のためいくつか質問をされることがあります。これは、あなたが特別に怪しいというのではなく、こうした方法で、他人になりすまして投票をするという不正行為が行われることがあるので、確認をするものです。
投票所へ行ってみたら、「もうすでに投票しています」と受付で言われたなどという例が実際にあるのです。
何時から何時まで投票できるの?
多くの投票所では、午前7時から午後8時までです。
でも、市町村によっては、特に投票所が閉まる時間を繰り上げている場合があります。4時間の範囲内で繰上げができることになっています。
投票所入場券に投票できる時間についても書いてあることが多いと思いますので、入場券を確認してください。
なお、どうして繰り上げるのかというと、町村部などでは、今までの実績からそんなに夜遅くには投票に来ないということがあります(以前は午後6時まででしたが、投票しやすくするためという理由で2時間延びた経緯があります)。
また、面積の広い市町村では、各地の投票所から投票箱を一か所に集めて開票作業を行いますが、その開始も夜8時まで投票をしていると遅くなるということもあります。
投票所へ行ったらどうする?
指定された投票所に行くと、最初に受付があります。受付には担当者(多くが市町村の職員です)がいて、軽いあいさつの後、入場券を持っているかどうかを訊かれます。
入場券を渡すと、番号などを読み上げ、隣の人が台帳に記入したり、パソコンで操作したりします。
これは、入場券の整理番号から選挙人名簿の該当部分を探し、入場券を持ってきた人が名簿に載っているか確認し、投票に来たチェックをしているのです。
前に書いたように、そこにすでにチェックがされていると、なりすましという不正が行われたことになるのです。
次に進むと、投票用紙を手渡されます。この際、選挙が二つある場合には、選挙の種類(市長選挙と議員選挙、選挙区選出選挙と比例代表選挙など)をいわれます。
その投票用紙を持って、記載台に向かい、記載台に投票用紙を置いて、記入します。記載台の前面には候補者の氏名などが書かれた「氏名掲示」がありますので、うろ覚えの氏名ではなく、その記載に沿って書いた方が無効投票にならなくて済みます。
記載台には、鉛筆などの筆記用具が置いてあります。もし、ない場合には、係員に言えば、持ってきてくれます。
書き終わったら、近くに置いてある投票箱に入れます。入れる際は、書いた側を内側にして二つ折りにして、差し込むように入れてください。投票箱の入口は手などを入れられないようにそれほど大きくは開いていませんが、投票用紙は十分に入るサイズです。
選挙が二つある場合には、これを繰り返すことになります。
すべての投票が終わったら、そのまま外へ出ます。特に手続きはありません。
選挙が一つだけで、混んでいなければ、2,3分もあれば投票は終わりです。
投票所を出たあとで
投票所を出ると、呼び止められることがあります。これは多くの場合、マスコミ(テレビ局や新聞)の出口調査といわれるものです。
選挙の報道番組を見ると、午後8時と同時に当確が出たりしますが、その当落をマスコミが決める資料として、投票所の出口で記者や頼まれた人がだれに投票したかを尋ねるものです。
これに答えるかどうかは自由です。断っても不利益を受けたり、罰則があるわけではありません。
なお、仕事の関係などで特定の候補者への投票を頼まれることがあるかもしれませんが、だれに投票したかについては、「投票の秘密の保持」を憲法と公職選挙法で保障していますので、答える必要はありません。
さらに、選挙人(あなた)は「選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない」と定められています。
答えないと都合が悪いのであれば、うそでも「入れた」と言ってよいでしょう。こうしたうそは、あなたの人格を何ら傷つけるものではありません。それを訊く方が悪いのです。
投票済証明書
「投票済証明書」とは、文字通り、選挙で投票したことを選挙管理委員会が証明するものです。
これが欲しい場合には、投票所で申し出る必要があります。全員に交付しているとは限りませんので。
市町村の選挙管理委員会のなかには、任意に「投票済証明書」を発行するところがあります(法制度として設けられているものではありません)。
その証明書を持っていくと商品が割引になるなどの特典制度を地元商店街やチェーン店などが設け、投票率の向上のため一役買っているということも報道されます。加えて、若干の地元の振興対策にもなり、いい試みであるとの意見があります。
一方で、否定的な立場もあります。それは次のような理由からです。
勤務先において、これを投票に行った証拠として持参させるような例があるとも聞きます。投票に行った、行かないを言うことは、投票の秘密の範囲に属するかどうか議論はあると思いますが、状況によっては、従業員は圧力を感じるでしょう。
証明書を求めるのが雇主の場合、そもそも雇主は公民権の行使に必要な機会を与えなければなりません。権利の行使のための機会の付与ですから、それを行使したかしないかを雇主が確認する必要はありませんし、その権利もありません。
証明書を発行したがために、そうしたことに利用されるのはよいことではありません。
また、投票に行くというのは、それによって経済的な利益を得るためではありません。投票すること自体が大切な権利なので、これが経済的な利益と結びつくことに、疑問を投げかける意見があります。
さらに、商店街などが支持・支援している候補者や政党がある場合には、選挙の啓発団体としての中立性や買収行為等の関連でも問題が出てきます。
期日前投票制度
投票日に投票に行けない方のために、期日前投票の制度があります。
これについては、別のブログ『投票日に都合が悪ければ期日前投票―投票するチャンスはある』をご覧ください。
根拠法令等
本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。
憲法第14条第4項(投票の秘密保持)
公職選挙法第52条(投票の秘密保持)
同法第17条(投票区)
同法第35条(選挙の方法)
同法第39条(投票所)
公職選挙法施行令第31条(投票所入場券の交付)
労働基準法第7条(公民権行使の保障)
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