「条例」ってなに?-わかるお役所用語解説13

はじめに

自治体は「条例」を定めることができます。
いったん定められた条例は、法律と同じように強制力を持ち、罰則が定められている場合に、違反者は懲役刑まで受けることがあります。
そのような「条例」について、法律とのちがい、どのような場合に制定するのか、制定に当たっての留意点などを解説するものです。

条例と法律のちがい

法律も条例も、定められた内容について、住民が従わなければならず、従わない場合には、逮捕されたり、裁判で有罪となって、刑に服することがあることは同じです。そういう意味では法律と条例のちがいはありません。

しかし、条例は自治体が定めるということから、国会で定める法律と次のようなちがいがあります。

1 条例は、法律の範囲内で定めることができる
2 条例は、自治体が行うべき事務に関して定めることができる
3 条例には、死刑や無期懲役などの罰則を定められない
以下、説明していきます。

条例は、法律の範囲内で定めることができる

法の体系の中では、憲法に違反する法律は制定できず、法律に違反する条例は制定できないというように順序が決まっています。

このように書くと、当たり前のようですが、実際に「法律の範囲内」かどうかを判断するのは難しい場合があります。

例えば、法律が定めていない事項について条例で規制しようとする場合に、その事項は規制すべきでないから定めていないのか、その法律制定時には、そこまで規制する必要がないから定めていないのかという問題があります。
前者の場合には、条例は定めることができませんし、後者の場合には自治体独自の事情により定められる余地があります。そうしたことは、法律の制定の経緯を追ったり、関係省庁や関係機関などと相談する中でわかることもあります。

また、同じ行為を規制するにも、法律の規制の目的と条例の規制の目的が違う場合があります。そのような場合にもよく検討する必要があるでしょう。

なお、市町村条例と都道府県条例が同じ事項について規制している場合には、都道府県条例が優先しますが、都道府県条例が市町村条例の優先を定める場合には市町村条例が優先します。

条例は、自治体が行うべき事務に関して定めることができる

自治体の行うべき事務は、地方自治法第2条第2項で定まっており、この事務について、条例を制定できます。自治体の事務は、自治事務と法定受託事務に分かれますが、いずれも自治体の行うべき事務ですので、条例を制定することができます。

ただし、法定受託事務については、国が条例で定めることのできる事項や内容をしぼっている場合がありますので、注意が必要です。

法定受託事務については、別のブログ『自治体の行う「法定受託事務」「自治事務」とは』を、法定受託事務に関する条例制定については、『義務付け・枠付けの見直しとは、何を見直すのだろう』をご覧ください。

また。当たり前のことですが、条例は、その自治体の権限が及ぶ範囲で有効です。
権限が及ぶ範囲は、業務の内容により異なります。
その自治体の住民のことが多いですが、税の賦課徴収については、税目により、住民でなくとも、例えば自治体の区域内に不動産などの財産を持っている者が対象となりますし、迷惑行為の防止条例などは、住所がどこにあるかを問わず、その自治体の区域内で迷惑行為を行った者が対象となります。

条例には、死刑や無期懲役などの罰則を定められない

法律には、死刑や無期懲役の刑罰を定められますが、条例においては、「2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金又は科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料」しか定められません。

条例は誰がつくるのか

条例の発案権は、長と議員の両方にあります。また、住民は、有権者の50分の1以上の署名を集め、条例の制定、改廃(改正又は廃止)の直接請求をすることができます。
いずれの場合にも、条例は議会の議決を経て成立します。

ただし、自治体の事務について、すべて、この三者(長、議員、住民)が条例の制定を求められるわけではなく、いくつかの例外があります。

長の内部組織や議会の内部組織に関する条例は、それぞれ長と議会だけが発案できます。
また、直接請求では、「地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関する」条例の制定や改廃請求はできません。

条例はどういう場合につくるのか

住民に義務を課す場合や住民の権利を制限する場合には、条例によらなければならないとされています。
また、法律で、条例で定めるとしている事項があります。

実際には、こうした場合以外でも条例はたくさんつくられています。
自治体や国に対して多大な功績があった者を顕彰する「名誉市民条例」や日本酒の普及を目的とする、いわゆる「日本酒乾杯条例」などはこの例です。
これらの条例に定められている事項は、条例以外の方法でも実現できるのですが、特に後者の場合は、話題性やPR効果を狙って、条例を制定しているのかもしれません。
こうしたものは、制定のハードルは低いでしょう。

本来の目的である権利制限や義務を課す条例については、制定に慎重な対応が求められます。
こうした場合には、何らかの問題が生じているのでしょうが、それを自治体が解決する手段として、条例の制定は最終的なもので、かつ、最も権力的な手段です。

まずは、呼びかけ、働きかけなど啓発的な手段からはじめ、金銭的な問題がある場合には、助成制度も併せて検討します。
不適切な行為をする側が、なぜそのようなことをするのかという原因を探ることも重要です。その原因が、別の部署の所管に属する場合、庁内で対応を協議することも必要です。

それでも改善しない場合やそうしたものに馴染まない場合には、ガイドラインや要綱の制定とそれにもとづく指導という方法も考えられます。いわゆる「行政指導」に当たるもので、昨今は行政手続の明確化の流れとともに、こうした手法には慎重な意見もあるかと思われますが、条例制定の前段階として、一定の意味合いはあるのではないでしょうか。

そのような過程で積み重なった不適切な行為事例が、「立法事実」という、条例を制定する上で最も重要な、「なぜ条例を制定するのか」という根拠となります。
この立法事実の積み重ねの上に、条例制定へ踏み出します。

条例制定事務の留意点

条例制定事務(「法制執務」といわれます)は、法律の知識を持った者が行うべき専門性の高いものです。ある程度規模の大きな組織では、法務部門があるので、法務部門との連携の下、具体的な条文をつくることになります。
また、一定の段階で、庁内の横断的組織である「法令審査会」などを開催し、関係部局の意見調整を図る団体もあります。

一般的な留意点としては、立法事実に基づく条例制定の必要性の確認、法律や県条例との関係の整理、誰のどのような行為を違法とするか、誰に何を義務づけるのかというような定義の明確化、罰則を設ける場合には、その制裁の程度というようなことでしょうか。

特に、罰則を設ける場合には、条例違反を立件する検察当局との協議が必要です。条例の実効性の確保は大切です。

こうしてでき上がった案を首長まで説明し、関係者や住民の意見を聴き(パブリックコメントといいます)、議会提案の条例案とします。
議会で議決された後は、「公布」の手続が必要です。各自治体が定めた方法で公布します。

まとめ

条例を制定することは、自治体にとって、大変重要な業務です。
それだけに、職員にとっては、やりがいのある事務といえるでしょう。
しかし、法律を学んだことのない方が、たまたま配属になった部署でこうした仕事を担当することもあります。

まったく法律の知識がない方を対象として、本ブログでは、『初歩の手前の条文の見方1―「項」「号」ってなに?』、『初歩の手前の条文の見方2―かっこ書きに気をつける』、『初歩の手前の条文の見方3―「前段」「後段」「ただし書き」』を掲載しています。法律の入門書をお読みになる前にご覧ください。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

憲法第94条(法律の範囲内での条例制定権)

地方自治法第14条(条例の制定及び罰則)
同法第2条(地方公共団体の事務)
同法第2条第16項(都道府県条例の優先)
同法第112条(議員の議案提出権)
同法第149条(長の担任事務―議案提出権)
同法第74条(条例の制定又は改廃の直接請求)
同法第109条(議会の委員会の条例設置)
同法第138条(議会の事務局の条例設置)
同法第155条(支庁等の条例設置)
同法第158条(長の内部組織の条例設置)
同法第16条(公布)

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