「公有財産」ってなに?-わかるお役所用語解説8

はじめに

どの仕事にも専門用語がありますが、お役所の専門用語は、職員だけでなく、住民の方々に向けてもつかわれることがあります。最近では、こうした専門用語には、短い解説がついていることが多いですが、本記事では、わかりやすく、すこし詳しく説明します。

今回は、自治体の「公有財産」についての説明です。

自治体も、個人や会社(法人)と同じように「財産」を持っています。その財産にはいくつか種類があり、「公有財産」はそのなかの一つです。
「公有財産」とは、どのようなもので、管理や処分はどのように行うのでしょうか。
是非ともご一読ください。

まず押さえよう

「公有財産」は、自治体の財産区分のひとつで、主なものは、不動産(土地、建物)です。

「公有財産」は「行政財産」と「普通財産」に分かれ、どちらに分類されるかで、管理や処分のしかたが異なります。

「行政財産」は特定の行政目的のための財産、「普通財産」はそれ以外の財産です。

自治体の財産の種類

自治体の財産について定めているのは、地方自治法です。その財務の章に節を設けて規定されています(第9章第9節)。

自治体の財産は、「公有財産」「物品」「債券」「基金」の4つに分かれます。

このうち、「物品」は事務機器、ロッカーなど、いわゆる「動産」といわれるものです。
「債券」は金銭の給付を目的とする権利で、税金、使用料、物件の売払い代金、貸付金などがひろく含まれます。
「基金」は自治体の貯金ですが、詳細は別のブログ『「基金」ってなに?-わかるお役所用語解説4』をご覧ください。

公有財産の範囲と分類

公有財産は、大きく不動産と各種の権利に分かれます。

不動産は、土地・建物のことをいいますが、他の法令で不動産と同じような扱いを受ける船舶や航空機なども含まれます。
各種の権利としては、地上権、地役権、特許権、著作権、株式、出資による権利などが定められています。

公有財産は、「行政財産」と「普通財産」に分類されます。
「行政財産」とは、自治体が「公用」又は「公共用」のためにつかっているか、又は、つかうと決めた財産です。
「普通財産」とは、「行政財産」以外の財産です。

どうして「行政財産」と「普通財産」に分けるのか

「行政財産」は「公用」又は「公共用」のための財産です。

この「公用」「公共用」は、似たようなことばですが、「公用」とは、自治体が事務・事業を行うためという意味で、「公用財産」とは、例えば、県庁・市町村役場とその敷地などのことをいいます。
「公共用」とは、住民の利用のためという意味で、「公共用財産」とは、例えば、公民館・市民会館、学校の校舎・保育所とその敷地などのことをいいます。

「行政財産」はこうした行政目的を持った財産のため、そのままでは処分できませんし、管理についても、行政目的を邪魔しない管理をすることが求められます。
一方で「普通財産」にはこうした行政目的がありませんから、処分したり、貸し付けたりすることが「行政財産」に比べ、柔軟にできます。

「行政財産」は処分不可、貸付けも原則不可で使用を許可

行政財産は、特定の行政目的のための財産ですので、処分できないのは当然です。行政目的につかわなくなって処分をする場合には、行政財産から普通財産へと種別を変更して処分することになります。
また、貸し付けたり、権利を設定することも原則としてできません。

しかし、庁舎内に銀行のATMや飲料の自動販売機などが置かれているのを目にします。これらは、自治体が自ら設置しているのではなく、銀行や自動販売機業者に対し、行政財産の使用許可をし、設置させているものです。
この使用許可は行政財産の用途又は目的を妨げない限度において、行うことができます。

その場所を公用又は公共用のため必要となった場合には許可を取り消すことがあるなど、条件を付けて使用を許可するもので、場所を借りる代わりに賃料を支払うというような契約に基づくものではありません。

では、行政財産は常に使用許可でしか使用できないのかというと、そうでもありません。
例外がいくつか定められています。

例えば、自治体の所有する土地の上に自治体が適当と認める者がその土地の行政目的を効果的に達成できるような建物を建築する場合や、一定の者が自治体と区分所有の建物を建てる場合、庁舎等に確実に使用される見込みのない空きスペースがあるような場合などには土地や庁舎等の貸付けができます。

普通財産の処分や貸し付けは行える

普通財産については、処分や貸し付けを行うことができます。

普通財産については、自治体が財政難のときには、積極的に財産を処分し、歳入を増やす努力が求められることがあります。

また、貸し付ける場合には、契約を締結しますが、自治体が公用又は公共用に使用するため貸付契約を解除した場合には、借受人は生じた損失につきその補償を求めることができます。

公有財産の処分等について気をつける点

行政財産の処分について、気をつけるべき点を何点か挙げます。

まず、公有財産の事務を行う自治体職員は、その自治体の公有財産を買い受けたり、自分の財産と交換したりすることはできません。しても、無効です。

条例で定める場合以外に、財産を交換したり、出資の目的としたり、支払い手段として使用したり、適正な対価なく譲渡又は貸し付けるとき、不動産を信託するとき、一定の不動産を一定の価格以上で処分するときには議会の議決が必要です。

処分する場合には、競争入札によることが原則です。隣地所有者等に随意契約で譲渡する場合には、どのような場合に行うことができるかなどのルールをあらかじめ定めておくのがよいでしょう。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第9章第9節のうち第237条及び第1款公有財産(第238条から第238条の8まで)
同法第96条(議決事件)
地方自治法施行令第121条の2及び別表第4(財産処分の議決の基準)

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