「地方税」ってなに?(市町村税編)-わかるお役所用語解説11

はじめに

今回のブログは、市町村税の各税目の解説です。都道府県税についての解説は、別のブログ『「地方税」ってなに?(都道府県税編)-わかるお役所用語解説10』をご覧ください。

税率の種類

これから市町村の税金について、説明していきますが、その前に、個々の項目で説明する「税率」について触れます。

地方税は、地方税法に基づき、自治体が条例で税目や税率を決めることになっています。
その際、税率については、全国一律の税率としているもののほか、一定の幅で決めることを許容しているものもあります。

全国一律のものは、「一定税率」といいます。例えば、地方消費税は一定税率の税金です。

標準的にはこれだが、それとちがう税率でもいいというものは「標準税率」といいます。ただし、標準税率の税目でも「制限税率」といって、それを超える税率で課税するのはダメですというものがあります。

法定外税は、そうした縛りがないので「任意税率」です。

市町村の税金《普通税》

市町村民税(個人分) 

いわゆる住民税のうち市町村分です。個人の住民税については、市町村が都道府県分も合わせて課税します。

特別徴収の制度や昨年所得課税については、都道府県民税(個人分)で書いた通りです。

住民税については、別のブログ『所得税とは仕組みがちがう「住民税」にご注意』で詳しく解説しておりますので、詳細はそちらをご覧ください。

市町村民税(法人分) 

法人の住民税です。
法人住民税にも個人住民税と同じように均等割と所得割(法人税割)があります。

均等割は資本金の額及び従業員の数に応じて額が異なります。

法人税割は、法人税の額に6%をかけた額です。複数の市町村に事業所がある場合には、従業員数で按分した額を各市町村に納めます。

東京23区については、市町村民税分も合わせて都税として東京都に申告納付します。

固定資産税

固定資産税は、住民税(市町村民税)とならんで、市町村の主要な(税収額の多い)税目です。
固定資産税は、土地、家屋又は償却資産を所有している者にかかる税金です。

償却資産とは、土地・家屋以外の事業の用に供することができる資産です。例えば、道路沿いの広告塔などの構築物、製造のための機械・装置、船舶・飛行機・特殊自動車等、パソコンや工具などの備品などがこれに当たります。
東京23区については、都税として都が徴収します。

〈固定資産の評価〉


固定資産税の課税に当たっては、土地・家屋については、評価を行います。償却資産については、所有者の申告による取得価格を基礎に経過年数による減価をします。

この土地・家屋の評価については、総務省の定める固定資産の「評価基準」があり、市町村はその基準に則って、土地については、一筆ごとに、家屋については一棟ごとに評価を行います。
現在の土地の評価については、宅地は地価公示価格の7割を目途に評価することとされています。そのほかの土地については、地目(田、畑、山林等)ごとに、売買実例価格などを参考に決定されています。

一方、家屋については、その家屋と同じ家屋を新築した場合にいくらかかるかという価格(再建築価格)に年数の経過による減価の率(経年減点補正率)などをかけて、算出します。

〈課税標準、税率等〉

一般に、税額の計算は、課税標準×税率で行います。税率は原則1.4%(標準税率)です。

固定資産税の場合、課税標準のもとになるのは評価額ですが、ダイレクトに評価額に税率をかけるのではなく、納税者の負担軽減等の政策的理由から、様々な方法により、課税標準を評価額に比べ、低くしています。

その代表的な例が、住宅用地の特例です。200㎡までの敷地については、課税標準が6分の1になり、それを超える分も3分の1になります。

また、住宅に対する固定資産税の軽減としては、一定の新築住宅(建物)について、3年間から7年間税額が2分の1になる制度もあります。

固定資産税は、1月1日現在の所有者に課税されますので、その日以後売却をしても、法律上は1月1日の属する年度の翌年度の税金は前の所有者が支払うこととなります。

軽自動車税

4月1日現在に軽自動車、二輪の小型自動車、原動機付自転車、小型特殊自動車を所有する者に対して、その種類と排気量に応じた税額が課される税金です。

なお、自動車については、都道府県税の税目となります。

現在は、一定の環境性能を満たした新車については、税率の引き下げ、一定年数を経過した自動車については割増税率の適用といったグリーン化特例(軽課・重課)の制度が自動車税同様設けられています。

市町村たばこ税

本項については、『「地方税」ってなに?(都道府県税編)-わかるお役所用語解説10』の「道府県たばこ税」をご覧ください。

鉱産税

鉱産税は、鉱物の掘採の事業に対し、その鉱物の価格を課税標準として、事業の作業場がある市町村が課税するものです。
都道府県税編の鉱区税と似ていますが、鉱区税は鉱区の面積に応じ、鉱産税は鉱物の価格に応じて税額が決まります。
税率は鉱物の月産に応じ、0.7%又は1.2%です。

特別土地保有税

特別土地保有税は、かつて土地が高騰したときに課された税で、平成15年度以降の新たな課税は行われていないことから、説明は省きます。

市町村民税《目的税》

入湯税

入湯税は、環境衛生施設の整備、鉱泉源の保護管理施設の整備、消防施設その他消防活動に必要な施設の整備、観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用に充てるための税金です。

温泉旅行が好きな方にはなじみの税金ですが、1日150円(標準税率)を入浴客が旅館等に支払うと、それをまとめて、旅館等が市町村に納付します。

事業所税

事業所税は、都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるため、課される税金です。
政令指定都市や人口30万人以上の一定の市などが課税するものです。東京23区については、都税として東京都が課税します。

事業所床面積を課税標準とする資産割と従業者給与総額を課税標準とする従業者割があります。
税率は、資産割は床面積1平米当たり600円、従業者割は給与総額の0.25%です。

都市計画税

都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業などを行う市町村が、都市計画区域内にある土地や家屋を対象として、その事業に必要となる費用に充てるために課する税金です。

都市計画事業とは、都市計画法の規定により都市計画区域をもつ市町村が、その区域内で行う都市施設(都市計画道路、公園、上下水道など)整備事業や開発事業(土地区画整理事業などの土地の造成事業や市街地の再開発事業など)のことをいいます。

こうした事業を行うため必要があるときには、市町村はこの税をその区域内に土地・家屋をもつ者に課すことができます。
税率は0.3%以下(制限税率)です。

評価額などは固定資産税のものをつかい、また、軽減の特例も固定資産税に似たものもあります。通常、固定資産税の徴収時期に合わせた徴税の事務処理がされます。
東京23区については、都税として、東京都が課税します。

水利地益税、共同施設税、宅地開発税

水利地益税は、水利に関する事業などを行うため、共同施設税は、共同作業場、共同倉庫などの事業を行うため、宅地開発税は、宅地開発に伴う道路や水路を整備するため、それらの受益者に課することができる税です。

水利地益税については、道府県も課することができますが、道府県の課税実績はなく、市町村も数団体にとどまっています。
また、総務省によれば、共同施設税及び宅地開発税については、現在、課税している団体はないとのことです。

国民健康保険税

これは、いわゆる国民健康保険の保険料です。
国民健康保険の制度として、市町村の選択により、保険「料」の形式を採る以外に、徴収上の便宜として保険「税」の形式を採ることが認められています。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方税法第3条(地方税の賦課徴収に関する規定の形式)
第3章第1節第292条以下(市町村民税)
第2節第341条以下(固定資産税)
第3節第442条以下(軽自動車税)
第4節第464条以下(市町村たばこ税)
第6節第519条以下(鉱産税)
第8節第585条以下(特別土地保有税)
第4章第4節第701条以下(入湯税)
第5節第701条の30以下(事業所税)
第6節第702条以下(都市計画税)
第7節第703条以下(水利地益税、共同施設税、宅地開発税及び国民健康保険税)

本ブログ記載に当たって、以下のものを参考とした。

総務省ホームページの「地方税制度」の税目解説及び「地方税制度」中の「やさしい地方税」の税目解説(総務省トップ > 政策 > 地方行財政 > 地方税制度)
一般社団法人日本たばこ協会ホームページ

※地方税は地方税法に基づいて、各自治体が条例によって賦課徴収するものですので(地方税法第3条)、具体的な税率などは自治体により地方税法の標準的な定めと異なる場合があります。

※上記記載の税目、税率等は2023年9月現在のものです。地方税法は毎年のように改正が行われます。地方税実務に携わる方や取引の参考としてこのブログをご覧の方は、必ず、最新の税制についてご確認ください。

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