「一般会計・普通会計」「公共(的)団体」―お役所ことばの似て非なるもの2

はじめに

「一般会計」と「普通会計」のちがい、わかりますか?
「公共団体」に「的」がついて「公共的団体」になると、意味がどのように変わるのでしょうか?

わかりにくいといわれるお役所ことば。その一つの原因は、似ていて紛らわしいことばがあることです。本記事は、そのようなことばを説明するものです。

「一般会計」と「普通会計」

自治体の会計は一般会計と特別会計に分けられる

「一般」を辞書で引くと、中には「普通」という意味もあり、「普通」を辞書で引くと、「ひろく一般的であること」と書いてあるように、通常は、この二つのことばをだいたい同じ意味で使っています。
しかし、それに「会計」がついた「一般会計」と「普通会計」では、自治体の財務用語として意味が異なります。

「一般会計」は、福祉や教育、道路や橋等の改修などの土木事業や各分野の産業の振興など、自治体が行うほとんどの仕事を一本の会計にまとめたものです。

これに対するのは「特別会計」という用語で、これは、収支を一般会計と切り離して、独立採算的に行う事業などに設けられる会計です。例えば、水道事業、鉄道・バス等の交通事業や病院事業などです。ほかに国民健康保険事業会計や介護保険事業の会計もこの特別会計で整理されます。

自治体の会計は、すべて「一般会計」か「特別会計」のどちらかの会計に区分されます。

「普通会計」は存在しない?

それでは、「普通会計」は存在しない会計なのでしょうか?

そうです。実際の自治体の予算には「普通会計」の予算はありません。

「普通会計」とは、「一般会計」に「特別会計」のうち、一定のものについて合算した会計のことをいいます。普通会計の方が、範囲や規模が一般会計より大きくなります。

どうしてこのようなことをするのかというと、「特別会計」は、収支を一般会計と別にした方がいいと考えた場合には自治体の判断でつくれますので、同じ内容の事業でも、ある団体は一般会計内で行い、ある団体は別に特別会計をつくって行っているということが生じます。

これですと、他の自治体との比較ができにくいので、法令の規定等で特別会計とすべきと定められたもの以外の、つまり、自治体が独自の判断で特別会計を設置しているものについては、総務省の行う自治体の決算をまとめる調査(「地方財政状況調査」通称、「決算統計」といいます)などでは、この「普通会計」の概念により数値を整理しています。

「普通会計」に属する「特別会計」の例としては、福祉や産業振興のための貸付金事業を行う会計などがあります。こうしたもので、貸付金の返還金を原資としてさらに貸し付けを行っているタイプのものは、特別会計をつくることが多いですが、このようなものは「普通会計」に区分されます。

※普通会計の範囲について、正確に知りたい方は、「地方財政状況調査表作成要領」(総務省自治財政局財務調査課)をご覧ください。

「公共団体」と「公共的団体」

一般的な意味のちがい

「公共団体」と「公共的団体」ということばがあります。この二つのことばも似ていますね。
こうした用語は、使われている文章の意味合いや前後関係、対比されていることばなどによって、意味するところが違いますので、文脈に即した解釈をする必要があります。

そうした前提のもと、この二つの言葉のちがいをあえて説明しますと、「公共団体」は法人格を持ち、公権力を有し、国の監督に服する等の要件を満たした、地方公共団体、公共の組合(土地改良区、土地区画整理組合等)、独立行政法人や公社、公団(営造物法人)が該当するというのが一般的な解釈です。

対して、「公共的団体」というのは、この範囲より広く、「公共的な活動」を行っているものは法人格の有無にかかわらずすべて含まれるという解釈です。
具体的には、農協・漁協等の組合、生協や商工会議所などの経済関係団体、社会福祉協議会や赤十字社等の社会福祉団体、学校、青年団、婦人会などの教育・文化・スポーツ団体などです。

地方自治法上の「公共団体」

自治体の組織や制度を定めている地方自治法においては、「公共団体」という用語は、普通財産の貸付けを定めた第238条の5第4項と地縁団体関係条文の第260条の2第6項で用いられています。

第238条の5第4項は、普通財産の貸付期間中に、国、地方公共団体その他「公共団体」において、公用又は公共用に供するために必要を生じたときには、契約を解除できることを定めたもので、この「公共団体」の範囲は、概ね前記の説明の範囲と同一であると解してよいと思われます。

第260条の2第6項は、市町村長は申請に基づき地縁団体を認可することができますが、この認可につき、地縁団体を「公共団体」その他の行政組織の一部とすることを意味するものと解釈してはならないと定めたものです。

この「公共団体」は、「行政組織」の例示と考えられ、認可によって、そのような公的団体となるのではなく、地縁団体の性格は変わらないことをいっています。ですので、この条文においては、「公共団体」が何かを検討することはあまり意味がありません。

なお、地縁団体の制度については、別のブログ『「地縁団体」ってなに?-わかるお役所用語解説16』をご覧ください。

地方自治法上の「公共的団体」

一方で、「公共的団体」については、長のそれらの団体への監督権限を定めた地方自治法第157条等に見られます。その範囲は前記の説明の通りです。

この「公共的団体」等に対して、長は、その「活動の総合調整を図るため、これを指揮監督することができる」と定められています(第157条第1項)。
なお、この総合調整には、議会の議決が必要です(第96条第1項第14号)。

必要があれば、事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ、事務の視察もできます(第157条第2項)。
そして、監督上必要な処分をし、又は監督官庁に措置をすることを申請することができます(同条第3項)。
ただし、監督官庁は、長の処分を取り消すことができるとされています(同条第4項)。

長の権限は幅広いですが、あくまでもこれらの団体の公共的活動に対してであり、また、内部組織における人事などには及ばないと解すべきであるとされています。

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