はじめに
本記事は、国からの通知文の最後によく書かれている「技術的助言である旨の断り書き」について解説する記事です。
まず押さえよう
「技術的助言」とは、特定の事務について、国が自治体にこうした方がいいというアドバイスをするもので、国の自治体への関与の一種類です。(都道府県が市町村に助言する場合もあります)
「技術的」というのは、その助言は、法的拘束力や規範性を持たないという意味です。
とはいっても、自治体がその内容と異なった事務処理を行い、国が是正が必要だと考えたときには、勧告など是正に向けた法的手続がされる場合があります。
国の自治体への関与とは
自治体は法律に基づいていろいろな事務を処理しています。その法律には必ず所管の省庁があります。
各省庁は、法律の趣旨や事務のやり方を自治体に伝えたり、法律の趣旨に反するやり方を自治体がした場合に、それを直すように言ったり、自治体がその事務をやらない場合に代わりに国がやったりします。
そのことを、全体として「国の自治体への関与」といいます。
国の自治体への関与については、法律又は政令に根拠がある場合にのみ行え、原則として文書によって行うこととされています。
また、目的を達成するため必要最小限度の関与とし、自治体の自主性、自立性に配慮しなければならないとされています。
具体的な関与の方法については、地方自治法第245条で列挙されています。
「助言又は勧告」、「資料の提出の要求」、「是正の要求」、「同意」、「許可、認可又は承認」、「指示」、「代執行」、「自治体との協議」、「その他具体的、個別的行為」です。
大切なのは、自治体の事務として、「法定受託事務」と「自治事務」がありますが、その事務の種類によってできる関与とできない関与があるということです。
これについては、別のブログ『自治体が行う「法定受託事務」と「自治事務」とは』をご覧ください。
こうした国の自治体への関与が整理されたのは、第1次地方分権改革の成果の一つです。
地方分権改革については、別のブログ「よく聞くけれどよくわからない―地方分権とは」をご覧ください。
「技術的」と通達行政
「技術的」な助言というと、工場や研究所に向けてする機械器具の設計や実験のやり方についての助言かなと思ってしまいますね。
国の各省庁は、今も昔もいろいろな宛て先にいろいろな文書を出しています。名称は通知、通達、ガイドラインなど様々ですが、これをまとめて「通達」と呼び、それによって行政を行うことを「通達行政」といいます。
本来の「通達」は機関内で事務のやり方を示し、しばるものです。本省が地方の出先機関に通達して、事務の統一を図った場合には、各出先機関はそれに従わなければならず、その限りでは拘束力があります。
機関の外に向かって通達を出した場合に、それが、国民の権利を制限したり、義務を課したりする内容の場合には、無効です。そうした場合には法律に基づいて行わなければならないからです。
そうした内容の通知が自治体に向けてされ、それに沿って自治体が行為を行った場合、その行為は無効となるでしょう。
以前はこうした内容の通知も見受けられました。
さらに、第1次地方分権改革で、従来、通知によって、自治体に「こうしなければならない、ああしなければならない」と事実上行ってきた国の関与について、必要最小限度にすることとし、法定受託事務については、処理基準を定めることができると整理されました。
このことからも、自治体向けの「助言」について、拘束力や規範性を持たせることはできなくなったのです。そうした意味で「技術的助言」とされています。
根拠法令等
地方自治法第245条の4(技術的な助言及び勧告並びに資料の提出の要求)
同法第245条(関与の意義)
同法第245条の2(関与の法定主義)
同法第245条の3(関与の基本原則)
同法第247条(助言等の方式等)
同法第245条の9(処理基準)
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