初歩の手前の条文の見方3―「前段」「後段」「ただし書き」

はじめに

本記事は、お役所の仕事の中で不可欠な法律や条例の読み方について、地方自治法の例を示しながら、まったく法律を読んだ経験のない方にもわかるように解説する記事です。
地方自治法の載った法令集をお持ちでない方は、「e-GOV 法令検索」で調べてください(「e-GOV法令検索」のつかい方については、この記事の第1回『初歩の手前の条文の見方1―「項」「号」ってなに?』をご覧ください。)

政令、省令

地方自治法の条文の中には「政令」ということばがよく出てきます。例えば、第142条を見てください。この規定は長の兼業禁止について定めたものですが、かっこ書き(かっこ書きがよくわからない方は『初歩の手前の条文の見方2―かっこ書きに気をつける』をご覧ください)の中に「(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く。)」とあります。

また、「政令」ほどは出てきませんが、「総務省令」ということばも見受けられます。例えば、第150条第4項「総務省令で定めるところにより」といったようにです。

政令」(せいれい)、「省令」(しょうれい)とは何でしょうか。

簡単にいうと、「政令」も「省令」も、法律に細かいことまで書くと、長くなってしまい、ただでさえ分かりにくい条文がもっとわかりにくくなってしまうので、そうした細かい内容を別に定めたものです。

「政令」は内閣が定めるもの、「省令」は各省庁の大臣が定めるものです。「総務省令」というのは総務大臣が出す省令です。比較的大事なことは政令に書いて、ほんとうに細かいことや様式は省令で書いています。
大切なのは、政省令(「政令」と「省令」を合わせて、こういいます)には、法律の委任がないと罰則を設け、国民に義務を課し、又は権利を制限する規定を定められないということです。これらは「法律」で定めます。

地方自治法で出てくる「政令」とは「地方自治法施行令」のことです。
同じく「総務省令」とはほぼ「地方自治法施行規則」と考えていいです。

市販の地方自治関係の法令集では、条文の後に関係の政令や省令が「参照条文」などとして載っています。それを見ると政令の条項がわかります。
e-GOVの場合は、法令検索で「地方自治法施行令」と入れ、検索します。そうすると、地方自治法と同じような形式のものが出てきます。
施行令と法は目次がだいたい同じ構成なので、法第142条が属している「執行機関」の施行令のところ「第4章 執行機関」をクリックします。

その第122条を見ると、「地方自治法第百四十二条に規定する当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものは、当該普通地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの二分の一以上を出資している法人とする。」とあります。

このように、政令や省令では、大もとの法律の条文を最初に示しますので、それを探していくとわかります。

法第150条第4項の総務省令がどのようなものかは、上記の方法を参考にして探してみてください。ヒントは施行規則第12条のあたりです。

前段・後段、本文・ただし書き

今まで、地方自治法をあちこち見てきました。法律に馴染むには、多くの条文を読んでみることです。
法律の文章は悪文です。まず、長文です。段落の切れ目もなく、かっこが二重三重になっていることもあります。かなり読み慣れていても、一回で読んでわかったというわけにはいきませんので、初めて触れる方は、理解できないからといって、あまり落ち込まないでください。

さて、地方自治法の第100条第3項を見てください。「第1項後段の規定により・・・」とあります。
そこで、第1項を見てみると、例によって長い条文がありますが、前回のかっこ書きの最後に書いたように、まず、かっこを抜かして読んでみましょう。

「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(抜かします)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。」という文章になります。

ここで、「後段」とはどこでしょうか? 
それは、「この場合において・・・」の文章になります。ということは、はじまりから、「この場合」の前までの文章は前段の文章です。

このように、ひとつの条文の中に、句点(マル)のついた文章が二つあるときに、前の文章の部分を「前段」(ぜんだん)、後の文章の部分を「後段」(こうだん)といいます。

同じ条の第9項を見てください。これも文章が二つに分かれています。二つ目の文は「但し、虚偽の・・・」というはじまりになっています。「但し」から始まる文は、「ただし書き」(の部分)といい、この場合は前段、後段とはいいません。ただし書きの前の部分は、「本文」といいます。

なお、この第100条はとても項数が多いですが、議会の調査権などを定めた条文です。これに基づく委員会を通称「100条委員会」といい、大変強い力を持った委員会です。たまに地方議会で設置されますが、みなさんは聞いたことがあるでしょうか?

「附則」は付録じゃない

地方自治法第299条を見てください。その少し後に「附則」(ふそく)と書かれています。附則の前までの部分を「本則」(ほんそく)といいます。
「附則」は名前からすると付録のようですが、これも立派な法律の一部です。

「附則」の次に第1条として施行期日が定められています。施行期日とは、その法律が効力を発揮する日です。

第2条として、「東京都制、道府県制・・・は、これを廃止する。但し・・・」とありますが、附則の定める内容の一つとして、以前の同様な法律をどうするかということがあります。

また、第3条では、いろいろな経過措置を定めていますが、これも附則の大切な役割です。

以上のとおり、「附則」は、その法律が効力を発揮した場合の様々なほかへ与える影響をどうするか定めるものです。

この附則は法律を改正する場合にも、その改正法の施行期日などを定めるために付されます。法律を改正するには、いろいろな事項を考慮しなければならないことから、施行期日を何段階かに分ける場合もあります。
また、一部の改正後の規定の適用を猶予したり、異なった取扱いをしたりすることを附則で定める場合もあります。

附則をきちんと読んでおかないと、思わぬ過ちを犯すこともあります。

まとめ

以上、3回にわたり、法律の条文を読むために、最低限必要な用語を説明してきました。
同時に地方自治法のいくつかの条文に触れていただき、条文を読む行為がどんなものかをお試ししていただきました。

この後は、法学の入門書やいろいろなホームページで解説されている、いわゆる法律用語について学んでいくことになります。

このブログでも、今後、そうした用語の解説をしていきたいと考えております。

根拠条文等

憲法第73条第6号ただし書き(政令への罰則規定の制限)
内閣法第11条(政令への義務を課し、権利を制限する規定の制限)
国家行政組織法第12条(省令の根拠規定)

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