「指定金融機関」ってなに?-わかるお役所用語解説28

はじめに

指定金融機関制度は、自治体が金融機関を指定して、公金の収納や支払を行わせる制度です。皆さんが税金などを銀行の窓口で支払ったり、ATMから振り込むことができるのは、この制度があるからです。

本稿は、指定金融機関制度について、どのようなものかをわかりやすく解説する記事です。

まず押さえよう

都道府県は議会の議決を経て必ず指定金融機関を一行指定しなければなりません。
市町村は任意となります。任意ですが、指定していない団体はわずかで、市町村の99パーセントは指定しています。

公金を取り扱う金融機関には、その取り扱える業務内容により、「指定金融機関」「指定代理金融機関」「収納代理金融機関」「収納事務取扱金融機関」があります。

指定金融機関等の業務内容

指定金融機関は、当該自治体の公金の収納及び支払の事務を取り扱います。
また、指定代理金融機関や収納代理金融機関の公金の収納又は支払の事務を総括します。
長は、指定代理金融機関や収納代理金融機関の指定又は取消に当たっては、指定金融機関の意見を聴くこととされています。

指定代理金融機関は、公金の収納や支払の一部を取り扱うものです。

収納代理金融機関は、公金の収納だけを行うものです。

収納事務取扱金融機関は、指定金融機関を指定していない市町村において、公金の収納事務の一部を取り扱わせるために指定するものです。

留意事項

指定金融機関は、指定代理金融機関や収納代理金融機関の行う事務も含め、公金の収納や支払の事務について、自治体に対し責任を負うものと定められ、また、長の定めるところにより担保を提供しなければなりません。

会計管理者は、指定金融機関等について、公金の収納又は支払の事務と公金の預金の状況を、定期的に、又、臨時に検査しなければなりません。その結果に基づき、必要な措置を求めることができます。
監査委員は、検査の結果について、会計管理者に対し報告を求めることができます。

指定金融機関については、半永久的に一つの金融機関である必要はなく、例えば、一年毎の交替制とすることも認められますが、半年などという短期間での交替は認められないという取り扱いです。

手数料をめぐる問題

指定金融機関制度に関して、手数料の問題があります。
指定金融機関が行う公金の収納や支払に伴う手数料について、金融機関側と自治体側で協議をしている例は多いと思われます。

かつては、こうした事務についての手数料を自治体は基本的に支払っていませんでした。当然、こうした事務についても人件費やシステムの運用に費用は掛かりますから、その部分だけとってみれば赤字です。

しかし、指定金融機関になるということは、その地域の金融機関で最も信頼がおけるというお墨付きをもらうという名誉とそれによる地域の企業や住民の信頼感や安心感が増すことのほかに、県庁本庁や主な出先機関には支店や派出所を構えることが多いので、その店員により県庁職員の口座開設や預金の獲得ができるというメリットがありました。

また、自治体は地方債(県債、市債)という形で借金をしますが、その借りる先として指定金融機関は優位な立場にありました。そこで自治体から貸付利子という形で収益も挙げられました。こうしたメリットは平成の初期頃までは、デメリットを上回っていたわけです。

ところが、平成の中期から後期にかけて、低金利に加え、自治体側は地方債の借り入れについても、利率を入札で決めるようになっていきます。その結果、金融機関側のコストが自治体からの収入を上回るようになり、金融機関側は、こうした公金取扱い関係について、自治体側に手数料を負担してもらうことを求めるようになりました。

令和3年4月1日現在の総務省調査(下記参考文献参照)によると、1776団体(都道府県及び市町村)のうち、一切の経費を支払っていない団体は、179団体で全体の約10パーセントとのことであり、約9割の団体は経費の全額または一部を支払っています。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方自治法第235条(指定金融機関等の指定)

地方自治法施行令第168条(指定金融機関の指定)
同令第168条の2(指定金融機関の責務)
同令第168条の4(指定金融機関の検査)

指定金融機関制度の概要とその運用実態について(説明案件)(令和4年度地方財政審議会(7月12日開催)における総務省説明資料)

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