投票ができるまで―選挙の準備1

はじめに

選挙は候補者に対する有権者の投票で成り立っています。
有権者が円滑に投票できるよう市区町村の選挙管理委員会はいろいろな仕事をしています。
本記事は、その概要を紹介する記事です。

まず押さえよう

市町村の区域をいくつかの投票区に分け、そこに1か所ずつ投票所を設けます。

投票所には、最低2人の投票立会人がつねに立ち会っている必要があり、あらかじめ選任します。

投票所の設営には、有権者が円滑に投票できるよう、選挙の種類ごとに動線を考えて設営します。

投票所は1か所でいい?―投票区と投票所

選挙についていろいろなことを決めているのは、「公職選挙法」という法律ですが、その法律では、「投票区」という考え方があります。投票ができる区域の単位のことですが、これは市町村の区域によると定められています。

この「投票区」の中に実際に投票をする場所である「投票所」が設けられますが、投票所については、「市役所、町村役場又は市町村の選挙管理委員会の指定した場所」とされています。

これだけ見ると、投票所というのは、1市町村に1か所でもいいことになります。

人口が何百人の狭い町村ならそれでいいかもしれませんが、ふつうは市町村の中をいくつかの「投票区」に区切り、そこに投票所を設けます。

区切り方としては、市町村内の字の区域やそれをさらに細かくした地区を単位とすることが多いです。その区域の広さと有権者数を勘案します。
投票区を設けたときには告示をすることになっていますから、お住いの市町村のホームページで「例規」というページを探せばどのように区切られているかがわかります。

投票所についても、投票日の5日前までに告示することになっています。しかし、投票所の入場券はその前に送りますから、実際にはもっと前に決めておく必要があります。

前回の選挙の投票所をまたつかうことが多いですが、施設がなくなったとか、改修工事をしているという場合には、ほかの場所を探さなければなりません。
衆議院議員の総選挙は、解散により突然行われることが多々あるので、市町村の選挙管理委員会は、つかえるはずの投票所が使えないと代わりを探すのがたいへんです。

最近、投票所の数が減っているといわれます。選挙事務を管轄する総務省は、投票所設置の目安を投票区の面積や有権者数で示していますが、市町村合併や人口の減少の影響で減らす自治体もあるようです。
そうすると、お年寄りが投票所が遠くなって、行きにくいなどの問題も出てきています。送迎支援などの工夫をしている自治体もありますが、難しい問題です。

立会人になりませんか?―投票管理者と投票立会人

投票所に行くと、奥の全体が見渡せるような場所に何人かの人が座っていますね。あれは、「投票管理者」と「投票立会人」です。

投票管理者というのは、その投票所の責任者のようなもので、役所の職員がなることが多いです。

投票立会人というのは、その投票所の投票がきちんと行われているか確認するために立ち会う人です。

投票所ごとに最低でも2人は必要です。その投票所のある自治会の役員などにお願いすることがありますが、公募したり、新しく有権者になった人(新成人)を選んだりする例もあります。
投票立会人は、投票所が開いている時間(朝7時から夜の8時)はずっと座っていなければなりません。途中で交代する取扱いとすることはできますが、その分人数を多く確保しなければなりません。

投票所がたくさんあると、この投票立会人を選ぶのも一仕事です。

動線を考えますー投票所の設営作業

投票日の前日には、投票所の設営作業をします。
投票所がたくさんある場合には、手分けをして設営します。

1種類の投票をすればいい選挙もあれば、衆議院議員の総選挙と最高裁判所の裁判官の国民審査のように3種類の投票をする場合もあります。

投票に来てくれた人が、できるだけ、間違わずに、また、スムーズに投票できるかはこの設営作業で決まります。
場所の制約も考えながら、あらかじめ選挙管理委員会が考えた配置図などをもとに、動線を描き、机や投票記載台や投票箱を設置していきます。

投票記載台には、何度も誤字・脱字や文字の大きさなどを確認した候補者の氏名が書いてある紙をきちんと貼ります。
この「氏名掲示」は間違うと当落にも影響する大切なものです。
2つの選挙が行われる場合には、どちらの選挙の投票記載台かを確認して、それに合った氏名掲示を貼ります。

投票用紙は機械で交付する自治体も多いですが、これも2つの選挙が行われる場合には、取り違えないようしっかり確認してセットします。

また、窓から特定の候補者のポスターだけが見えるというような不公平な取り扱いにならないかなど、周りの状況にも気をつけなければなりません。

寝坊は禁物―投票日にまず気をつけること

設営が終わったら、施錠をして、責任者がカギを持って帰ります。
たまにあるのが、投票日にその責任者が寝坊をしてしまうことです。

投票所は、ふつう午前7時に開けなければなりません。当然、その少し前には関係者が集まって、投票の受付手順を確認したり、投票立会人に説明をしたりします。

時間を過ぎても責任者が表れず、何人かの有権者が外で待っていたという事例がたまに新聞に載りますが、まずいですね。目覚まし時計を必ず2つ以上かけておきたいものです。

以上、選挙が近づいてから市区町村の選挙管理委員会が行う、投票所関係の事務を紹介しました。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

公職選挙法第17条(投票区)
同法第37条(投票管理者)
同法第38条(投票立会人)
同法第39条(投票所)

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