できないと言うのも仕事ですー断り方いろいろ

はじめに

本記事は、各方面からのさまざまな依頼や要望等に対して、いろいろな事情からそれらを断らなければならない場合の表現のしかたを解説する記事です。

まず押さえよう

議会の質問などで、何らかの行為をすべきと思うがどうかという質問は多く見受けられます。

それに回答するに当たり、自らの自治体が行うべきか、国や他の自治体が行うべきか、行う必要性や緊急性はあるのかという点に留意する必要があります。

取材や勉強会

通常、自治体においては、年に4回議会が開催されます。議会では、執行部側(首長と都道府県庁や市町村役場の職員側)から提案された議案や行政上の諸般の事項について議員から質問がされます。

何の事項について質問されるかわからないと十分な回答ができないことから、通常は執行部側と議会側の取り決めで、質問事項について、いついつまでにどういう事項を質問すると通告するというルールになっています。

それに基づいて、回答を用意するのですが、通告だけではよくわからない場合には、議員に質問の趣旨を訊くこともあり(取材)、また、議員の方から質問をしたい事項についてあらかじめ尋ねられる場合(勉強会などといいます)があります。

議会での質問は2回又は3回答えれば終わりですが(質問回数の制限を定めている議会は多いと思われます。)、勉強会はざっくばらんな打ち合わせですので、議員の時間の許す範囲で、ある程度の時間対応しなければなりません。
議員は質問の材料探しですので、打ち解けた雰囲気の中でも、執行部側としても、どのような質問がされるか探り、回答しやすい質問にもっていく努力が必要です。

そうしたときに、議員が勉強したり、他の自治体に視察に行ったりして得た知識をもとに、新しい事業を提案することはままあります。
簡単にできるなら、その旨答えればいいのですが、自治体は国や県、市町村の役割分担もあり、また、マンパワーと予算にも限りがあります。
こうした点に留意して対応することが必要です。

断り方にもいろいろありますが、相手方にある程度仕方ないかと思われせる断り方が望ましいですね。
いくつか例をお示しします。参考になれば幸いです。
なお、この回答例は都道府県が回答する場合を想定しております。

「本件については、国(市町村)において対応すべきもの」

法律などにおいて、事務の実施主体が決まっているものは多いです。そうしたことについては、まず、このように答えます。国政の問題や市町村行政の問題はそれぞれの担当機関が行うことを示し、その判断や対応を待つのが基本的なスタンスです。

議員の投げかけている事項が、関係する法律などのどの条項に該当し、その規定の義務付けている者が誰なのかは冷静に判断する必要があります。
また、対象事業が明確に法律等に定められていなくとも、類似事業を行っている主体がその事業も行うべきです。

「県としては、国において適正に措置されるよう要望してまいりたい」

役割分担論で収まればよいのですが、実際に問題となるのは、所掌部署(国や市町村)において、十分な対応ができておらず、一定の不利益や不都合が県民に生じている状態であろうと思います。そうした場合に、県民を代表する立場で、「お願い」=「要望」するのが県の役割と理解される場合があります。
このタイトルの表現は、国がなすべきことについて、十分な対応がとられていない場合に用いるものです。

なお、「要望」については、お願いの程度によりいくつかの別の言い方があります。それについては、『「要望」「要請」いろいろありますーお願いのことば』も併せてご覧ください。

「ご要望の趣旨を市へ伝えたい」「市に助言してまいりたい」

市町村の対応に不満で県に言ってくる場合があります。
この場合は、大きく二つに分かれます。市が全く自主的に行っている事務や窓口対応などについての不満であれば、県はどうすることもできません。
その旨説明してもいいですが、市民(県議会議員も市民です)が不満を抱いているという事実を知ったので、それをその自治体に伝えるという趣旨で答える場合もあります。それがタイトルの前者の内容になります。

不満の対象の事務が県の事務の一部を処理しているとか、県がお願いしてやってもらっているような場合には、一定の範囲で助言(アドバイス)や指示ができることがあります。そうした場合には、後者のように答えます。
なお、助言について詳しく知りたい方は、別のブログ『国からの通知でよく目にする「技術的助言」とは』をご覧ください。

県で行うべき事項について断る場合

それでは、県(自分)の行うべきことについて、断る場合はどう言ったらいいでしょうか。

まず断る理由を整理することです。①やる必要がないと考えるのか②やる必要はあるが、種々の理由からできないのか ということです。

やる必要がないと考えるには、理由があるはずです。需要がないからか、ほかの施策で代替ができるからか。あるいは対象のサービスが通常行っているサービスの程度を著しく超えるのか などです。

種々の理由からできないのは、ノウハウがないからか、財政的な問題か人員的な問題なのか です。

やる必要がないと考える場合には、整理した理由を含め、その旨答えます。

問題なのは、一定の必要性はあるものの(つまり、議員の提案も一定程度もっともであるものの)、種々の理由でできない場合です。
できない理由はマンパワーと財源の問題になることが多いでしょうが、これはほとんどの場合、県(自治体)内部の問題であり、そのまま対外的に理由とするには弱いことが多いです。

そのような場合には、そうした事務や事業を他の都道府県が行っているかがポイントとなります。予算や人員の配分は、やるべき事業の必要性や緊急性などの度合いによって決められるべきですが、明確な算式があるわけではありません。
ある程度各都道府県に普遍的な問題については、他の都道府県がそれをどの程度行っているかという状況を把握することは実務上重要です。

「近隣の県の動向を注視したい」

これは、提案の事業について、どこかの県が、一、二県ぐらいやっているが、近隣の県が実施していない場合につかえます。
また、事業の内容によっては、「立地条件の類似している県の動向を注視したい」や「産業構造の類似している県の動向を注視したい」など、問の趣旨に合った表現とすることもできます。

「他県の状況を調査したい」

この表現は質問者に対して、執行部側として一定の行為をすることを約束している点で少し前向きです。時間稼ぎともとれますが、調査自体は先ほど述べたように必要なことです。

そのほかの表現としては、別のブログ『「検討」はその前後でニュアンスのちがいを出す』に書いてあります「研究する」「勉強する」が使えます。

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