怖いのは税務署だけではありませんー徴収のことば

はじめに

本記事は、税金(主に地方税)を定められた期日までに納付しない場合、自治体がとる手続について解説する記事です。

まず押さえよう

みなさんの納める税金については、納める時期(納期)が決まっています。

その期日を過ぎますと、しばらくしてから納めるよう督促がされ、応じないと差押えを受けるおそれがあります。

自治体(税務署もですが)は、滞納者については、給料を差し押さえたり、財産調査をして預貯金や不動産を差し押さえたりすることもあります。

その後にも納付がなければ、差し押さえたものをお金に換えて、税金に充てます。

怖いのは税務署だけじゃない

税務署の職員がやってきて、仏壇や骨壺のなかから銀行印や金塊などを見つけ出すといった番組がテレビで流れることがあります。マルサ(国税局査察部)と呼ばれる部署に抜擢された女性が、きびしい隠し財産調査をする過程を描いた映画もあります。
そのように国税当局(税務署や国税局)は、滞納者のあらゆる財産を隠す方法を熟知し、巨額の脱税をしようとする者に対しては、どこまでも追及の手を緩めないという評判? があります。

一方で、自治体の税金を支払っていただけない方々(以下「滞納者」といいます。)に対する対応については、特に小さい規模の団体においては、せいぜい督促状を送るくらいで、ほとんど何もしていない団体もありました。

しかし、最近では、国税のOBを採用したり、積極的に研修を行ったりして、財産調査やその後の手続をしっかり行う団体が相当増えてきています。本記事では、滞納者に対する自治体のアプローチとそれに関連することばについて紹介します。

納税通知書

学生や勤め人のみなさんのなかには、納税通知書を見たことのない方もかなりいるのではないでしょうか。

所得がある人は、所得税と住民税を納める必要がありますが、この二つについては、会社の事務担当者が毎月の給料から天引きをして、まとめて税務署とお住まいの自治体へ払っているので、個人個人で対応する必要はありません。

自動車や軽自動車をお持ちの方は、自動車については都道府県又はその県税事務所などから、軽自動車についてはお住いの市町村から自動車税又は軽自動車税の納税通知書が来ているはずです。
マイホームを持つようになると、固定資産税の納税通知書が送られてきます。

督促

その納税通知書に書かれている納期限までに税金を払わないと、「督促状」というのが届きます。文字通り、税金を払ってくださいと催促をする文書です。自治体によって送付時期はまちまちかもしれませんが、ルール上は、納期限を20日過ぎると送ることになっています。

それでも払わないとどうなるか。ここから先は自治体の規模や税務職員の充実度によってだいぶ違ってきますが、最近では滞納者に対して厳しく接する自治体は多くなってきています。

臨戸徴収、納税相談

督促状を出した後に、電話で納税を促したり、滞納者の自宅を訪問して、徴収したり(臨戸徴収といいます)、役所に来てもらって納税の相談をすることがあります。

納税者から見れば、税務署や役所の税務課が来るのは嫌なものであるのは当然ですが、訪問する方も気が重いものです。

納税者の中には、政治や行政の不満を口にする人もいます。税務行政への不満ならともかく、政治家の不正や他の省庁や他の部局の不手際や職員の犯罪といったものを理由にして払わないといわれるのはつらいものがあります。

筆者が県の出先機関の税務課にいたときに、先輩の職員から、滞納者の自宅を訪問したら刃物を持って追いかけられというような話も聞きました。筆者自身も、二、三日前に別荘から出てきたと、すこし違った空気を漂わせて、自慢げに話す方の自宅に調査に伺ったことがあります。幸いそのときは何も起こらず、事務所に帰れましたが。

差押え

督促しても支払っていただけないと、「差押え予告」「催告書」などという文書を出します。

並行して、財産調査として、銀行の預金を調べたり、不動産を調べたりします。勤務先に給与の調査をすることもあります。

そして、いよいよ差押えをします。税務署や自治体の税務部局は、法に基づいて、これらの行為をすることができます。
例えば、不動産を差し押さえたい場合には、差押えの登記をします。

自動車税や軽自動車税の滞納については、自動車の持ち主が納税義務者です。最近はそうした車への差押えの方法として、「タイヤロック」「ミラーズロック」というのがあります。

「タイヤロック」は器具でタイヤを固定して動かせなくするもの。「ミラーズロック」はドアミラーの部分やそこからドアにかけてマグネットやビニールテープを用いて運行禁止の表示をするものです。
勝手にこうしたものを取り外すと、差押えの封印を破ったことになり、罰せられることがあります。それに「ミラーズロック」はかなり目立つので、恥ずかしいということで納税に応じる例があるようです。

公売、換価

もちろんその間にも納税交渉は続けられます。一括払いができない方に対しては分割で払うという方法もあります(「分納誓約」(ぶんのうせいやく)をするといいます)。納税者の状況は様々ですので、事情をお聞きしたうえで、対応します。

そうした交渉に全く応じなかったり、分納誓約が守られなかったりすると、差し押さえた物件を売ります。通常は、物件の情報を公開して、入札方式で行います。これを「公売」といい、公売などによって物件をお金に換えることを「換価」といいます。
その売れた代金が滞納している税金と延滞した期間に応じてかかる延滞金に充てられます。自治体の中にはインターネットを利用して公売を行う例も増えています。

こうした滞納者に対する督促や差し押えや公売・換価手続全体を「滞納処分」といいます。

よく、裁判所が競売をしますが、あれは民事裁判の結果、債権者の申し立てによって行われるもので、この「公売」手続きには裁判所は関与しません。自治体自ら差押え、自治体自らが売ることができるからです。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方税の滞納処分については、多くが国税徴収法の規定によっています。
国税徴収法第5章(滞納処分)

コメント

タイトルとURLをコピーしました