わかる「交付税」3―交付する交付税

第1回目及び第2回目の内容

今回は、交付税制度の第3回目の説明ですが、交付税の説明に当たり、大きく自治体がもらう交付税と国が交付する交付税に分けて説明しております。第1回目と第2回目は自治体がもらう交付税について、制度の概略と交付税の計算方法を説明しております。お住いの団体や勤務先の団体がもらう交付税について知りたい方は、第1回目と第2回目をご覧ください。

リンクは次の通りです。
第1回目『わかる「交付税」1―もらう交付税と交付する交付税
第2回目『わかる「交付税」2―基準財政需要額をかんたんに

第3回目は、国が交付する交付税の説明、つまり、その年度の交付税の総額が決定されるまでの説明になります。

予算折衝

年末近くになると、国の翌年度予算がだんだん固まってきます。
最終段階では、大臣折衝という、各省の大臣と財務大臣が直接話し合って、予算の重要事項として残っている案件について、具体的な予算額を決めます。

交付税は、近年16兆円~18兆円程度と国の支出としてたいへん巨額ですし、また、内閣は、翌年度の地方財政の収支の見込み(地方財政計画)を国会に提出しなければならないこととされていますので、総務大臣と財務大臣が話し合います。
そこで、翌年度交付される交付税の総額が決定されるのが、だいたい毎年のスケジュールになっています。

でも、待ってください。確か、交付税の額は所得税や法人税などの国の税金の一定の割合と決まっていたのでは? と思われ方は鋭いですね。

交付税の総額

交付税は、次の額によるとされています(2023年度)。
 所得税及び法人税の収入額の33.1パーセント
 酒税の収入額の50パーセント
 消費税の収入額の19.5パーセント
 地方法人税の収入額 

これらは国税ですから、主に財務省が各税の見積もりをすれば数字は出てきますね。

一方、もらう交付税の方は税収などと自治体の経費の差ですから、地方の収入と支出の見込みを立てなければなりません。それは主に総務省が行います。
そこから計算した交付税の額と国税から計算した交付税の額は一致すると思いますか?

例えば、景気が悪ければ地方の税収も落ち込みます。そうすると交付税は増やさないといけません(景気が悪いからといって、自治体の職員(事務職や警察官や教員など)をクビにして支出を抑えることは無理ですね)。一方で、同様に国税の収入も落ち込むはずですから、一定率をかけた数字も落ち込みます。

総務省は、見積もった地方財政収支と翌年度地方に必要な施策を示して財務省に必要額の確保を要求します。財務省はその要求を精査します。国税の額により計算した交付税の額より総務省の要求額が多い場合には、結果として、交付税の加算が行われることがあります。こうした一連の流れを、「地財折衝」「地方財政対策」などといいます。この最終段階が大臣折衝になります。

こうした折衝は、夏ごろから始まりますので、総務省の地方財政収支見通しは、個別の自治体の翌年度収支見込みを積み上げたものではありません。もらう交付税の額は、こうして決定された「交付する交付税」によって決まります。

交付税の2つの数字

今までの説明ですと、もらう交付税の額と交付する交付税の額は一致することになります。総務省が示す交付税の予算額(交付する交付税)は、基本的には各自治体がもらう交付税額(もらう交付税)の額と一致します。

しかし、政府の予算書には別の交付税額が書かれていることがあります。それは財務省の作成するものです。
具体的に見てみましょう。

財務省の政府予算書では交付税の歳出額は約16兆4千億円です。
総務省の地方財政対策の資料に記載されている交付税の額は約18兆4千億円です。

その差が2兆円あります。どうしてでしょうか?

交付税の特別会計

国や自治体の予算には、一般会計のほかに、経理を別にする特別会計があります。交付税の交付に関しても、「交付税及び譲与税配付金特別会計」という特別会計が設けられています。

国の税金の一定割合の額(前記の『交付税の総額』のはじめに記載した額)などは、いったんこの特別会計に入れられます。
そして、地方の財政の収支を考えて、必要な交付税額に足らない場合には、この会計の中で、繰越金を活用したり、借金をしたりして、交付税額を増額して、自治体に交付することになります。

財務省の予算書に記載されているのは、この特別会計に入れる金額で、「入口ベース」の数字などといいます。
一方、この特別会計の歳出に記載された数字は、自治体に交付される交付税の額で、これを「出口ベース」の数字などといいます。

このように、交付税の交付には特別会計を介したいろいろな対策が取られています。こうした対策の中には、長年にわたって影響が残るものもあり、かなり複雑になっています。
先ほど述べたように、財源対策として、この特別会計で借金をすることもありますが、地方全体の借金の中には、各自治体が借りた地方債の額にプラスして、これが含まれています。

まとめ

以上が、「交付する交付税」の説明です。
今回の説明は、個々の自治体に交付される交付税額の直接の説明ではありませんが、交付総額が減るということは、全体のパイが小さくなるということなので、そのパイを分ける方法=もらう交付税の算式に当然反映されることになります。
そうした意味では、年末の政府予算における交付税額の動向に注意を向けるのも大切なことです。

また、今回は、交付税等の特別会計の説明をしましたが、国にはたくさんの特別会計があります。国の特別会計は一般会計に比べて表に出ることが少ないので、時に、多額の繰越金などを財源不足の補填につかうなどという議論が国会等でされることがあります。

自治体の特別会計については、別のブログ『何も知らない人のための「自治体の予算」とは』をご覧ください。

根拠法令等

本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。

地方交付税法第2条(用語の定義)
同法第6条(交付税の総額)
同法第7条(歳入歳出総額の見込み額の提出及び公表の義務―地方財政計画の根拠)

特別会計に関する法律第2章第1節(第21条から第27条)(交付税及び譲与税配付特別会計)

令和5年度財務省予算のポイント(概略)・地方財政対策のポイント(概略)(財務省トップ→財務省の政策→予算・決算→毎年度の予算・決算→予算→令和5年度→令和5年度予算政府案)(2023年3月28日参照)
令和5年度地方財政計画のポイント、令和5年度地方財政計画の概要(総務省ホームページトップ→政策→地方行財政→地方財政制度(関連リンク2.「地方財政計画」))(2023年4月28日参照)
令和5年度交付税及び譲与税配付金特別会計歳入歳出予定額各目明細書(総務省ホームページトップ→予算・決算→予算)(2023年3月28日参照)

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