「任期」ってなに?-わかるお役所用語解説12

はじめに

国会議員や地方議会議員、知事や市町村長など選挙で選ばれる職をはじめ、任命や委嘱されるほとんどの職には「任期」が定められています。本記事は、そうした「任期」について解説するものです。

公職の任期

まず、公職の任期についてです。
公職とは、一般に、国会議員、地方議会議員、都道府県知事、市町村長のことをいいます。

各公職の任期は次の通りです。
衆議院議員―4年
参議院議員―6年(3年ごとの半数改選)
地方議会議員4年
都道府県知事、市町村長―4年

公職の任期の起算

各公職の任期はいつから始まるのでしょうか。
任期の起算については、公職選挙法で定められています。

衆議院議員は、総選挙の日から起算します。
具体的には、10月15日に総選挙があった場合には、その日が任期の第1日目となります。開票作業が日をまたいで、その日の内には当選が決まらなかった議員の任期も選挙の投票日から始まります。任期の終わりは4年後の10月14日です。

この期間の計算の仕方については、別のブログ『ちょっとちがいます―お役所ことばの似て非なるもの』をご覧ください。
ただし、任期満了による総選挙が衆議院議員の任期満了の日の前に行われたときは、選挙前の議員の任期満了日の翌日から起算します。

参議院議員の任期も衆議院議員の任期と同じ考え方です。任期満了前の通常選挙(半数全員を改選する選挙)であれば、選挙前の議員の任期の翌日から、任期満了後の通常選挙であれば、通常選挙の日から起算します。

地方議会議員の任期についても、同様です。地方議会議員の一般選挙(定数全員を改選する選挙)は、任期満了前に行うことになっていますので、基本的には、選挙前の議員の任期の翌日から起算します。ただし、任期満了前に前の議員がすべていなくなった場合には、その翌日から起算します。

なお、補欠選挙で当選した国会議員及び地方議会議員の任期は、前任者の期間を通算します。

都道府県知事や市町村長の任期についても、地方議会議員同様、前任者の任期中に選挙が行われた場合には、前任者の任期の翌日から起算します。前任者の死亡や退職などで空席となった場合には、選挙の日(または選挙後空席となった日)から起算します。

公職の任期前の失職等

公職者については、4年又は6年の任期が定められていますが、以下の事項が生じた場合には、任期前にその職を失います。

衆議院議員―衆議院が解散された場合、除名処分がされた場合又は比例代表選出議員が他の政党に属した場合

参議院議員―除名処分がされた場合又は比例代表選出議員が他の政党に属した場合

地方議会の議員―議会について解散請求が成立した場合、長が議会を解散した場合又は自らの議決により解散した場合、並びに議員個人について、解職請求(リコール)が成立した場合、議会において兼業禁止に該当すると決定された場合や除名処分を受けた場合

都道府県知事や市町村長―解職請求(リコール)が成立した場合、兼業禁止に該当するとされた場合、議会において不信任決議がされ、議会を解散しない場合

解職請求(リコール)の詳細については、『「リコール」は首長や議員をクビにできる制度』、不信任決議と議会の解散の詳細については、『「不信任」と「議会の解散」―首長と議会の対立の極致』のブログをご覧ください。

このほか、全公職者を通じて、被選挙権を失ったときあるいは被選挙権がないと決定されたとき、選挙の効力を争う訴訟で選挙無効が確定した場合、当選の効力を争う訴訟で当選無効が確定した場合、選挙犯罪による当選無効の関係判決が確定した場合には失職します。

都道府県知事や市町村長の任期の特例について、自らが退職したことによる選挙で再び立候補し当選した場合には、その任期は退職がなかったものとして計算します。例えば、任期を1年残して首長が退職し、選挙で再当選した場合には、任期は4年ではなく、もともとの任期の1年となります。これは、首長の都合による任期の実質的延長を防ぐためです。

任期延長や任期満了後の職務執行

このように、現在の公職の任期については、様々な理由で任期を全うできないケースや長の退職再立候補のように短くなるケースは定められていますが、任期自体が延長される規定はありません。地方議会や長については、大災害時の特例立法が行われたことはありますが、国会議員については、そのようなことはありません。

また、任期が終了した後に後任者が就任するまで職務を行うこともありません。
例えば、首長の任期が満了したが、何らかの理由により次期首長が決まらなかった場合には、首長は空席となり、副知事や副市町村長などの職務代理者が首長の職務を代理します。

行政委員会の委員の任期と特例

自治体には、執行機関としていくつか行政委員会が設けられています。制度の詳細については、『「行政委員会」ってなに?-わかるお役所用語解説7』をご覧ください。

ここでは、行政委員会の委員の任期について述べます。
都道府県と市町村に設ける行政委員会とその委員の任期は次の通りです。

《都道府県に設ける委員会》

教育委員会―教育長3年、教育委員4年
選挙管理委員会―4年
人事委員会―4年
監査委員―識見委員4年、議員選出委員は議員の任期による
公安委員会―3年
労働委員会―2年
収用委員会―3年
海区漁業調整委員会―4年
内水面漁場管理委員会―4年

《市町村に設ける委員会》

教育委員会、選挙管理委員会、監査委員―都道府県に設ける委員会参照
人事委員会又は公平委員会―4人
農業委員会―3年
固定資産評価審査委員会―3年

これらの委員には欠格条項が定められており、それに該当した場合には罷免されることがあります。
また、教育委員、選挙管理委員、公安委員などには一定数以上の委員が同一政党に属してはならないきまりがあり、それに該当するに至った場合にも職を失うことがあります。

一方、監査委員や農業委員などには、任期満了後も後任者が就任するまではその職務を行う定めがあります。

監査委員と監査については、別のブログ『「監査委員」ってなに?-わかるお役所用語解説9』も併せてご覧ください。

根拠法令等

公職選挙法第3条(公職の定義)

憲法第45条(衆議院議員の任期)
憲法第46条(参議院議員の任期)

地方自治法第93条(地方議会議員の任期)
同法第140条(知事、市町村長の任期)

公職選挙法第256条(衆議院議員の任期の起算)
同法第257条(参議院議員の任期の起算)
同法第258条(地方議会議員の任期の起算)
同法第259条及び第259条の2(知事、市町村長の任期の起算)
同法第260条(補欠議員の任期)

国会法第142条(除名)
同法第109条(被選挙権を有しない場合の退職)
同法第109条の2(比例代表選出議員の他政党所属による退職)

地方自治法第78条(議会の解散請求による解散)
同法第83条(議員又は長の解職投票による失職)
同法第127条(被選挙権を有しない場合や兼業禁止による失職)
同法第135条(除名)
同法第143条(被選挙権の有しない場合や兼業禁止による失職)
同法第178条(不信任議決と長の処置)
同法第177条(収入又は支出に関する議決に対する長の処置)

地方公共団体の議会の解散に関する特例法

公職選挙法第202条~第209条の2(選挙無効争訟、当選無効争訟)
同法第251条~第251条の4(選挙犯罪に係る当選無効)

平成二十三年東北地方太平洋沖地震に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律

地方自治法第183条(選挙管理委員の任期)
同法第197条(監査委員の任期)

地方教育行政の組織及び運営に関する法律第5条(教育委員等の任期)

地方公務員法第9条の2(人事委員会委員等の任期)

警察法第40条(公安委員の任期)

労働組合法第19条の12及び第19条の5(労働委員会委員の任期)

土地収用法第53条(収用委員会委員の任期)

漁業法第143条(海区漁業調整委員の任期)

同法第173条及び第143条(内水面漁業管理委員会委員の任期)

農業委員会等に関する法律第10条(農業委員の任期)

地方税法第423条(固定資産評価委委員の任期)

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