はじめに
「自主財源」「依存財源」は、自治体の財源を、自らの手で徴収又は収納できるのか、国や他の自治体等の意思決定に基づくものなのかという、収入に関する権限に着目した区分のしかたです。
財源の区分の方法
財源を区分する方法はいくつかあります。
「自主財源」「依存財源」は収入の権限に注目した区分ですが、そのほかに、
収入をどのような使途にも使えるのか、特定の使途にしか使えないのかによる「一般財源」「特定財源」の区分、
収入が毎年度安定的に確保されるか、そうでないかに注目した「経常的収入」「臨時的収入」の区分などです。
それぞれの区分には、自治体財政運営の特徴、強みや弱みがわかる視点があります。こうした複数の視点から当該自治体の財政を分析し、また、他自治体と比較することにより、その特質や問題点を把握することができます。
なお、「一般財源」「特定財源」の区分については、別のブログ『「一般財源」「特定財源」ってなに?-わかるお役所用語解説29』をご覧ください。
主な自主財源
自主財源に区分される収入としては、主なものとして、地方税(県税や市税)、使用料、手数料、寄附金、財産収入、繰入金、諸収入、繰越金などがあります。
地方税は、自治体の長が条例に基づき賦課徴収し、滞納に対しては、差押えや換価処分などの強制的な手続も行うことができる、自主財源のうちもっとも重要なものです。
使用料は行政財産の目的外使用や公の施設の使用に対して使用者に負担してもらうもの、手数料は特定の者のためにする事務の経費の一部として負担してもらうものですが、いずれも条例に根拠を置き自治体が徴収するものです。また、徴収を免れた場合には過料も科すことができます。
その他の収入についても、自治体自らの判断で収入できるものです。
主な依存財源
依存財源に区分される収入としては、主なものとして、地方交付税、地方譲与税、国庫支出金、都道府県支出金、地方債などがあります。
地方交付税については、国が額を決定し、自治体に交付するものですので、依存財源になります。地方交付税は、使途が自由な一般財源ですが、自主財源か依存財源かの区分では、依存財源です。
地方譲与税は、実質的には地方の財源ですが、徴税の便宜のため国税として徴収し、それを地方に配分するものです。配分が国によって行われることから、依存財源とされます。これも、使途の点からは一般財源ですが、自主財源か依存財源の区分では、依存財源です。
国庫支出金や都道府県支出金も法律や都道府県の条例、国や都道府県の定める規則や要綱などによって、国や都道府県が算定し、自治体に交付するものですので、依存財源です。
地方債は、自治体が金融機関等からお金を借りる点に着目すれば自主財源のようにも見えますが、借り入れの前段階で、国や都道府県との協議が必要であり、また、国は「地方債計画」といった形で地方全体の地方債を管理していることから依存財源とされています。
区分の意義
自主財源と依存財源は、自治体自らがその権限で収入できるか否かによる区分ですので、一般的には自主財源の割合が高い方が財政の自由度が高いのではないかと考えられます。
もう少し具体的にいうと、特に市町村において、普通交付税の交付を受けない「不交付団体」が数十団体あります。不交付団体は、総務省の定める基準財政需要額より基準財政収入額が多く、留保財源も含めた財源が多くあることになります。
こうした団体では、地方交付税の収入は特別交付税だけとなり、地方税の歳入全体に占める割合が高くなり、自主財源比率(歳入全体における自主財源の割合)も高くなります。
なお、地方交付税のしくみについては、次のブログをご参照ください。
『わかる「交付税」1―もらう交付税と交付する交付税』『わかる「交付税」2―基準財政需要額をかんたんに』『わかる「交付税」3―交付する交付税』
根拠法令等
本記事の根拠法令等は次の通りです。
解説は分かりやすくするために、主な事項だけを説明したり、法令にはない用語を用いたりしている場合があります。
正確に知りたい場合には、条文や文献等を確認してください。
地方自治法第223条(地方税の徴収根拠)
地方税法
地方自治法第225条(使用料)
同法第227条(手数料)
同法第228条(罰則)
地方公共団体の手数料の標準に関する政令
地方交付税法
地方財政法第10条から第11条(国の負担する経費に関する規定)
地方自治法第230条(地方債)
地方財政法第5条の3(地方債の協議等)
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